《異世界で、英雄譚をはじめましょう。》第二百六十話 偉大なる戦い・決戦編㉕
「……フェリックス。あなたは私を裏切らないとは思いますが。大丈夫でしょうね?」
オール・アイは唐突にそんな質問をしてきた。
「大丈夫ですよ。何も問題ありません」
言い淀むことなく、フェリックスは答えた。
そうあるべきだと、彼は思っていたからだ。
しかし、フェリックスのはその剎那――巨大な剣に貫かれていた。
「……え?」
フェリックスはそのまま倒れ込む。
オール・アイはゆっくりとそのに近づいて、ゆっくりとを落とした。
「あなたは私を信じているかもしれませんが、私はあなたを信じていないのですよ。それくらい理解していることかと思っていましたが……、案外理解していないものですね。歴史の傍観者として、私の使命なのかもしれませんが」
「使命……? 傍観者……? いったい、あなたは何を……」
「だから、簡単な話ですよ」
その聲は、聞いたことの無い聲だった。
どこか大人びた年の聲にも聞こえた、その聲はオール・アイの目の前に立っていた。
「誰だ……! こんなところにってこれるのは、僅かな人間しかいないはずだ」
何とかやっとの思いで顔だけ上げて、その存在を見ようとする。
しかし、月の明かりだけで源を取っているこの部屋では、その顔を見ることは葉わない。
「僕の名前は、そうだね。しる必要も無いと思うよ。だって、それをしったところでどうするというのかな? もう、あなたの命は無いと言っても過言では無いし、それはあなた自が理解している話だろう?」
語りかけるような口調だったが、確かに彼の命はあと僅かだった。
それはフェリックス自がよく理解していたことであったし、それを理解したくなかったのも紛れもない事実だろう。
でも、そうであっても。
フェリックスはその事実を曲げたかった。なぜ自分がこんなところで倒れなければならないのか、理解できなかったからだ。
「ま。仕方ないのかな。人間はどうしても高みを目指したくなるよね。それが自分の力量にあっていようが、あってなかろうが。それは関係ない。ただ自分が上に行ければそれでいい。そう思っているのだから、はっきり言って愚問だよね。疑問にもなりゃしない」
「アイン。それは私から告げましょう」
「アイン……?」
フェリックスは遠のく意識の中で、何とかその名前だけを言うことが出來た。
しかし。
その年はただ笑うだけで、オール・アイの言葉には答えない。
「……アイン」
溜息を吐いて、オール・アイは言った。
「ほんとうは話をしてから……と思いましたが、あなたがそうなら仕方ありません。もうしプログラムを修正しないとなりませんね」
「……?」
フェリックスはオール・アイの言葉に首を傾げる。
しかし、同時にこれはチャンスだと思った。この機會を逃してはならない。いかにしてこの絶好の機會を有効活用しようか……フェリックスはそんなことを考えていた。
しかしながら、実際には彼のそんな行は間違っていて、そんなことを考える暇があるのならば態勢を整えるべきだったが、それはもう後の祭り。
剎那、アインの強烈な蹴りがフェリックスのに突き刺さった。
「……な……!」
そして、それを皮切りに彼は何度も何度も何度も何度も何度も蹴り続ける。
初めは辛うじて反応していたフェリックスだったが、徐々にその反応も薄れ、やがて何も反応を示さなくなった。
「よしなさい、アイン。もう彼は死んでいます」
それを聞いて、アインはようやくきを止めた。
にやり、と笑みを浮かべて。
「ああ、そうだったね。申し訳なかった、とでも言えば良いのかな? いずれにせよ、彼は殺す予定だっただろうから、別にタイミングが変わっただけの話だろうし」
「それはそうですが……」
オール・アイはそう言って、ゆっくりとフェリックスのかなくなったを見つめた。
「……それにしても、人間ってほんとうに脆いですよね? 何というか、普通それで死ぬか? って話ですけれど。それでほんとうに、世界を踏破出來ましたね?」
「人間は非力ですが、その分知識があるのですよ。だからこの世界で一番神に近い存在だと言われている。でも、そんな人間でもあるものは未だ手にれていない。それが……」
「知恵の実、ですか」
「そう。知恵の実。それさえあれば人間は完璧な存在に……そう、神と同じ地位になることすら容易だと言われています。まあ、それを阻止するために私のような存在が居るわけですけれど」
「でも、どうしてそれをしようとしているんだ?」
アインの言葉にオール・アイは首を傾げる。
「なぜ、とは?」
「だって、別にそれをさせようとしたところで、害は無いはずだろ? 一応神の直屬とは言ったところで、上司が替わったら施策が変わるのか? 待遇が変わるのか?」
「いいえ、自然の摂理……それに沿った形です。人間という存在が神へと昇華するのは間違っている。だから、我々は我々に沿った神というパッケージをアップデートし続けなければならない。それが私たち『シリーズ』の使命なのですよ。おわかりいただけますか、アイン」
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