《異世界で、英雄譚をはじめましょう。》第二百七十四話 虹の見えた日④
オリジナルフォーズを封印する。
その言葉を聞いて、僕はあることを思い出していた。
偉大なる戦い、それは歴史上ではガラムドが魔法を使って封印したことによって終結したと言われている。
ということは、一花――ガラムドがこれから魔法を使ってオリジナルフォーズを封印する――それによって戦爭は終結する、ということになるのだろうか。だとすれば、それは協力せねばならないし功せねばならない選択だ。
「封印、とは言ったものの、実際にそれが出來る話なのかしら? 出來ないとは言わせませんよ」
水を差したのはストライガーだった。
確かに、ストライガーが気になることも分かる。実際、ストライガーはもう諦めモードではあるが、出來ることと出來ないことの分別くらいは出來ていることだろう。
しかしながら、僕は一花のことを信じたいと思った。もしこのまま巧くいけば、歴史書に沿った世界線に繋がっていく。となると、二千年後に僕が召喚され、勇者として旅立つということだ。
それは即ち、ガラムドの言った『試練』の功に繋がるのでは無いだろうか。
「いちかばちか……やってみる価値はあるんじゃないか?」
そう言ったのは僕では無く、ストライガーだった。
ストライガーはあくまで一花の意見を尊重したいだけのように見える。それに、そう考えるのは何ら間違っちゃいなかった。
無策のようにも思えるがしっかりと筋が通っているわけだし、結局のところ僕も一花がそう言いだすんじゃないかと何と無く思っていた。
「もちろん、これはあなただけで決めることのできる問題ではない。正確に言えば、あなただけの考えで行えることではないということ。その意味が、理解出來るかしら?」
「……分かっています。私だけじゃ、これを実踐出來ないことくらい」
一花は、僕が思っている以上に大人だった。
そしてそれはもっと早く分かってあげるべきだった問題だったのかもしれない。
とはいっても、それを風間修一ではない僕に押し付けるのは非常に酷なことだとは、きっと誰も考えやしないだろう。
結局はただ外面でしか人間を理解出來ていない、ということ。
それは誰だって例外なく言えることだし、指摘されたら誰も言い返せない問題だった。
「でも、あなたとそれを決めることが出來るのは、私ではありません」
深い溜息を吐いた後、ストライガーは僕を見つめる。
「……そうでしょう? 風間修一」
「そこで僕に割り振るか」
「當たり前でしょう。あなたは、彼の父親ですよ? だのに、何も知らぬ存ぜぬとは言わせませんよ。いずれにせよ、あなたはこのままだとどうしようもないってことは、あなただって理解しているのでしょう?」
「それは、ストライガーだって理解しているはずだろうが……」
「それはそうです。けれど、決斷をするのはあなたと一花でしょう」
言い切られてしまった。
そうなると、あとは僕と一花の間で決めるしか無くなってしまう。何というか、ほんとうに巧いやり方だと思う。
それはそれとして。
一花の提案を僕は無礙にすることなど出來るはずが無かった。だって當然だろう? 実際の所、子供がそうやって自らの意思でやりたい、と言っていることについて親が否定することは忍びない。僕の親も、自由奔放にやれば良いと言っていた。子供は、まだ責任を取るべき位置に立っていないから、好き勝手やっても責任を取る必要は無い――のだと。
今思えばその発言は常識とは若干かけ離れたものだったのかもしれないけれど、でも、今ならその話もしだけ分かるような気がした。
「……一花。やりたいようにやりなさい」
僕はしの間どう彼に話をするか考えて――やがてその言葉を絞り出した。
そしてその言葉を聞いた一花は大きく頷くと、右手の甲を僕に見せる。
手の甲にはうっすらと文様が浮かんでいるように見える。よく見るとそれは詠唱の魔方陣か何かだろうか。
「これは……?」
「たぶん、これでオリジナルフォーズを封印出來るんだと思う。その効力がどれくらいのものなのか、はっきりとしていないけれど……。でも、私の本心がそう告げるの。これを使って、オリジナルフォーズを封印すれば功する、って」
その功も、二千年しか持たない。
でも今の彼たちは永遠にそれが続くものだと思い込んでいる。まあ、確かに使ったこと無いものだからそう思うのも致し方ないのかもしれないし、僕としてもそれを別に言いふらすつもりは無い。水を差す、ということになるから。
「……さあ、はじめましょう。お父さん」
そうして、僕を見つめた後、視線をオリジナルフォーズへと移した。
オリジナルフォーズはゆっくりと近づいてきている。
その侵攻を見つめて、一花はゆっくりと目を瞑った。
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