《異世界で、英雄譚をはじめましょう。》第二百九十一話 聖戦、東京①
オリジナルフォーズが落下していく。
飛び立っていたはずのそれは既に力を失い、地面へと落下していく。
地面――正確にはそれはただの天樓。高層ビルが連なっている場所だった。
たくさんの悲鳴が聞こえてくるが、それを遮るは無い。
そうしてオリジナルフォーズは、無數の高層ビルを崩していき――そのまま橫たわった。
フルたちが東京にやってきたのは、ちょうどその時だった。
「ここは……東京……」
「東京、って? フルはこの場所を知っているの?」
「知っている……。ここは、元々僕が暮らしていた世界。だけれど、どこか様子が違う……」
「きっと、オリジナルフォーズが來たことでし変わってしまったのかもしれないね。いずれにせよ、ここが予言の勇者が居た世界か……。何というか、僕たちの居た世界とはまったく違う構造の世界になっているようだね」
バルト・イルファは冷靜に今の狀況を分析する。
そしてその言葉は、フルも想像している通りのことだった。
フルが……正確には古屋拓見が暮らしていた世界は、もうし未來だからだ。彼が辺りを見渡してみても、日本一高い電波塔は見つからないし、高層ビルもどこかないようにじられる。
そこから彼が導き出した結論は、至極簡単なものだった。
「……たぶんここは、僕が居た世界で間違いは無い。けれど、正確には時間軸が違う。たぶんここは、僕が居た時間軸よりも過去の時間軸……」
「となると、非常にまずいことになるな」
そう言い放ったのはバルト・イルファだった。
「なぜだ?」
「考えてみれば単純なことだが、この時間軸は君が僕たちの世界へ旅立った時よりも過去の時間軸だったな? ということは、今よりも若い君がいるということだ」
「……それがどうした。それくらいわかっているぞ」
「話は最後まで聞いてから理解するんだな。……ええと、つまりだな。もしここでこの時代に住む君が死んだら今の君はどうなる?」
「消えるだろうね。だって命は連続的だから。斷続的ならまだしもここと向こうは連続した時間軸のはずだ」
フルの言葉にバルト・イルファは頷いて、
「さすがにわかっているか。まあ、そこでわかっていなければ論外だったから何も言わないでおこうと思ったが」
「何が言いたいんだ、バルト・イルファ。……多分だが、その考えは正しいぞ」
「君もわかっているんじゃないか。だったら話は早い。……つまりだ、この世界のオリジナルフォーズが仮にこの世界の古屋拓見を『不注意で』殺してしまったとしたら、僕たちの世界にフル・ヤタクミは現れない。しかしそうなるとオリジナルフォーズは復活しないから……ここでタイムパラドックスが生まれてしまう」
タイムパラドックス。
とどのつまりは、時間軸における矛盾のことだ。いや、この場合は堂々巡りといっても言葉の意味が通るだろう。バルト・イルファはそれを危懼している。そもそもこの世界に古屋拓見が二人いること自タイムパラドックスになりかねないのだが、敢えてバルト・イルファはそこにれなかった。
なぜそれを危懼しているのか。答えは単純明快だ。それが発生して、何がもたらされるかは、誰も想像ができないからである。
「タイムパラドックスは引き起こしてはならない。もちろん、オリジナルフォーズを倒すことこそが僕たちの使命とも言えるけれどね。……いや。そもそも、オリジナルフォーズがこの世界にやってきてしまった時點で、時間軸は改変されてしまったということになるのだろうけれど……」
「最初からそんなクヨクヨいってられないわ。……私たちは何としてもあれを倒さないといけない。私たちの世界からやってきたあの憎悪の権化を、これ以上この世界で蔓延らせてはならない!」
メアリーが全てを持っていってしまったような発言をしてしまったが……、なくとも今のフルたちにそんなツッコミをれられるほどの余裕は無かった。或いはそんなことをする必要が無いと思ったのかもしれない。
そして、フルたちを乗せたホバークラフトは地上へと落下していく。
♢♢♢
東京、永田町。
首相邸。
「……あの異形についての報告は上がったか?」
年老いたスーツ姿の男が、側にいる男……彼の書に問いかける。
書の男は弱々しくもしっかりとした口調で、彼の言葉に答えた。
「殘念ながら、未だ。被害もはっきりとしていない狀況ですから……」
「それはわかっている。だが、あれが何であるかわからない限り……『駆除』は不可能だ」
「承知しております」
書は頭を下げる。
「……しかし、このままでは埒があかないな」
男は背もたれに重を預け、呟いた。
男の言葉に答えるように、書はタブレットを取り出した。
「総理。一応このタブレットに、現在の狀況をまとめました。宜しければ一度ご確認ください」
総理と呼ばれた男はタブレットをけ取ると、その畫面を見つめ始める。
そして総理はその畫面を見て、目を丸くした。
「……これはどういうことだね」
「殘念ながら、それが真実です。勿論、『X』が落下してからまだ一時間も経過していませんので、憶測の域を出ない報もありますが」
「當然だ。こんなもの……誰が信じろというのだ」
そこに映されていたのは、研究の報告書だった。
未だ『X』が突如上空から落下してきて一時間も経過していない。しかしながら、Xが落下したことにより様々なものが変化したとその報告書には書かれている。
その中で、一番総理に響いたのは、
「放能の空気中の濃度が増大傾向にある……。こんなものを國民に発表出來るわけがなかろう」
この國は、被曝國だ。
約七十年前、この國に核の炎が落とされた。それにより多くの死者が出て、放能に汚染された人間も多く出た。それにより、未だに健康被害に悩まされる人間がいるくらいだ。
だからこの國は世界の中でも放能に関する不安と危険視が強い。無論、放能は使い所を間違えれば七十年前の悲劇のようになってしまうのだから、危険視するのは當然なのだが。
「……それだけではありません。あのXには、自でエネルギーを作り出すことが出來るそうなのです。全てにおいて自己完結した存在、とでも呼べば良いでしょうか」
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