《異世界で、英雄譚をはじめましょう。》第三百八話 聖戦、東京⑱
発によって巻き上げられた土や砂等の埃が煙となって立ち上がっていく。
その中は、誰にだって分からない。ヤルダハオトが倒れているか、消えているか。バルト・イルファは無事なのか、否か――。
し遅れてメアリーとロマも砂煙の中に巻き込まれる。目を瞑って、何とか煙が消えるのを待った。
そして目を開けると――そこに広がっていた景は、彼たちの想像に近い景だった。
――しかし、それは、悪い方の想像、だったが。
「水素を使った弾並の発。しかも剣を使わせない至近距離の攻撃。……確かに効いたよ、をもって実したとも。メタモルフォーズ。そして人間よ」
ヤルダハオトはその場に無傷で君臨していた。
そしてバルト・イルファは倒れ込んでいる。力を使い果たしてしまったのか、ヤルダハオトの反撃をけてしまったのかは、彼たちの場所からは分からない。
「ヤルダハオト……!」
「お兄様……!」
メアリーとロマはそれぞれの名前を口に出してぶ。
先に反応したのはヤルダハオトだった。
「……だが、それでも神と人間の差がまることは……無い!」
ヤルダハオトはバルト・イルファの掌を無殘にも踏みにじる。
バルト・イルファは苦悶にも似た表を浮かべ、き聲を上げる。
「貴様らにとっては必殺技のつもりだったかもしれないが……笑止。そんなもので神を倒せると思うな」
さらに力を強くしていく。
「ぐああ……!」
バルト・イルファは思わず聲を上げた。
「貴様……お兄様を!」
「奢るな、メタモルフォーズよ」
一息。それと同時にヤルダハオトは剣を構える。
「そして、力が無いことを悲しまなくても良い。どうせ、神と人の差は超えられない差。否、超えることなど出來ない差。メタモルフォーズが絶大な力を保持しているとて、それは人間の悪により作り出された世界の膿に過ぎぬ。そして、膿はいずれ世界に悪影響を與えるだろう。ならば、その膿は排除せねばならない」
「……膿、ですって。私たちは必要の無い存在だと言いたいの!」
「違うか。人間。それともあの星は人間のものだと思っていたか?」
それは、言い返すことが出來ない。
今人間はこの世界の殆どを制圧している。そうしてそれは、つまり人間がこの世界で一番の存在であると過信しているのではないか?
神ヤルダハオトはそう言っていた。そうして、メアリーたちはそれを聞いて――膿として自覚しなければならないのか、ということに至る。
「いいや、そんなことは思っていないけれど……」
「それは、確信できるか? ほんとうにそう思っているか? 人間は全員そうだとは思っていないはずだ。誰かが、世界は自分たちのものだと思っているはずだ」
「でもそれは別に人間には限らないはず……! かつては爬蟲類が世界を席巻した時代だってあった。その消滅を経て哺類が発達し……今の私たちが出來ている!」
「ああ。それはそうかもしれないね。確かにそうだ。そう思うのは當然の認識だろう。けれど、でも、それは人間が勝手に考えている理想に過ぎない。何故なら神に一番近い存在、それが人間なのだから」
「……でも、不完全な存在を作った神にも、原因があるのではなくて?」
そう。
仮にほんとうにこの世界の膿が人間であるというならば。
それを作り出した神にもその責任があってもおかしくない。
メアリーはそう考えたわけだ。
「……原因。そうねえ、確かに神にもそういう『責任』があるとじてしまうよねえ。何千萬年も放置していたのだから。結果的に人間は叡智の結晶を生み出し、この先どうなってしまうか、という話だよ。人間には人間を作り出すことが出來る。それは渉による結果だ。クローン技も発達し始めた。しかし自ら課した制約に縛られることでその一線を越えずに済んでいる。が……それももう終わりだ。あっという間に終わりが來てしまう」
「何故……?」
「代替品が存在するようになるからだよ。別に人間のクローンを作らずとも良い。人間の種を拡大させていくのではなく、よりよい形で保存すべき方向へと変えていくための救世主がね」
「程。それが機械生命ロボット、というわけですね」
ロマの言葉に、メアリーは目を丸くする。
「機械……生命?」
「ええ。歴史の教科書に載っているから、ご存知かと思いますけれど。舊文明はその発達した科學力で機械に命を與えた。しかし心までは與えることは無かった。なぜだか分かりますか?」
「ええと……叛逆する恐れがあるから?」
「その通り」
答えたのはヤルダハオトだった。
ヤルダハオトは魔剣フランベルジェを一旦仕舞い、さらに話を続ける。
「人間も昔はそうだった。神の意志のままに生き、自らの意志など必要無い。絡繰り人形と同じだ。だが、それを人間は殘されていた『興味』によって『知恵』を得てしまった。これが人間の創伝説にも語られる『斷の果実』の話だ」
「ええ。それは知っているけれど……それと機械生命との、どの関係が?」
「人間は機械生命に心を與えることを許さなかった。いや、正確に言えばそうプログラミングしなかった。そしてそのヒントすら與えることを許さなかった。それは人間が神の二の舞になることを恐れたからだ。機械生命は人間の意志のままに生き、そのことについて疑問を持つ必要など無い。そう考えていたわけだ。……今となっては、稽な話だがな」
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