《2度目の人生を、楽しく生きる》19話 「VS奴隷商人のボス」
「とりあえず、この娘は拘束させてもらうよ。 勝手にかれちゃ厄介だからねぇ」
そう言ってボスは捕まえていたクレアを離す。
「! お兄ちゃん!」
クレアは離された瞬間にこちらに走り出した。
だが……
「だからさ…勝手にかれちゃ厄介なんだよねぇ……。 ーーー拘束バインド」
「むぐっ⁉︎」
ボスが魔を使うと、クレアの口と手足に縄が現れ、クレアを拘束した。
「クレアっ! おい! クレアを離せ!」
いつの間にか俺の橫に來ていたクリスがぶ。
「君達がおとなしくすればこの娘の拘束は解くんだけどねぇ…」
「それは斷る、お前を倒して、俺達は逃げるんだ」
「逃げる…ねぇ……」
ボスは腰から剣を抜き、構える。
ボスが持っている剣は片手剣だ。
「確かに君達は普通の子供よりは強いんだろうね、だけど僕はもっと強いよ」
剣を構えたボスは、悔しいが様になっていた。
きっと冗談じゃなく本當に強いのだろう。
「ルージュさん」
「作戦はさっきと同じだ、俺は剣で接近戦、アリスは剣と魔で攻撃、クリスは俺達の援護だ。 俺の魔力が戻ったら一気にたたみかけるぞ」
「はい!」
「了解だ!」
「じゃあ行くぞ‼︎」
俺とアリスは一斉に走り出す。
「風切ウインド・カッター!」
「石弾ロック・シュート!」
アリスとクリスが魔を使う。
「早速魔かい……でも、まだまだ遅いよ」
ボスはそれを當然の様に右に飛んでかわした。
「おらぁっ!」
そこに俺が突っ込み、剣を振り下ろす。
だがボスはそれを自分の剣でガードする。
「なかなか威力が高いね。 だけど、分かりやすすぎる」
ボスの蹴りが俺の腹にる。
「ぐっ……」
蹴られた俺はそのまま地面を転がる。
「まじかよ…」
強い、手下達とは比べものにならない強さだ。
剣も魔も通用しない。
俺の魔なら通用するかもしれないが、まだ魔力が戻っていない、あともうし…もうしなんだ。
早く…
「次は私が! はぁっ!」
「君は速いし、きもいいが……力が弱い」
「きゃあっ!」
アリスが俺と同じ様に蹴り飛ばされる。
早く……早く戻れ……
「くっそぉ! 石連弾ロック・マシンガン‼︎」
クリスが土魔法を撃つ。
あれは石弾を複數撃つ石連弾だ、消費魔力が多い代わりに威力が高い。
たが…
「遅いな」
ボスはそれすらも避ける。
「な…僕の1番の魔まで…」
「どんなに威力が高くても、當たらなきゃ意味がないよ、君達の魔には、圧倒的にスピードが足りない」
確かに、俺から見てもアリスとクリスの魔は遅い。
同じ石弾でも、俺とクリスの石弾のスピードが全然ちがうのだ。
俺が魔を使えれば……
「あああああっ!!」
俺はがむしゃらに突進する。
さっききが分かりやすいと言われたばかりなのに、そんな事はもう忘れていた。
「所詮君達はまだ子供、本當の魔を見せてあげよう。 石連弾は、こうやるんだ」
そういってボスは石連弾を放つ、クリスよりも、俺よりも早い。
俺は気付けば後ろの木まで飛ばされていた。
「ぐ……」
さっきまで俺はボスの近くにいたはず、だが今は數十メートルも離れた木に激突している。
なんて威力だ…威力もスピードもあるなんて……
そこで俺はアリスとクリスが見えない事に気付いた。
「あ、アリス! クリス! どこだ⁉︎」
「よく周りを見てごらんよ」
言われた通り周りを見る。
……………居た。
2人とも俺よりも遠くに飛ばされていた。
アリスは木の下に、クリスは巖の近くに倒れていた。
「2人とも気を失っているみたいだねぇ、君も気を失えば楽だったんだけどなぁ」
今でも石連弾が當たった腹はすごく痛い。
次また石連弾を食らったら……俺も気絶してしまうかもしれない。
絶的な狀況だ、これから俺は1人で戦わなくちゃいけない、アリスとクリスは気絶しているため、俺の援護は出來ない。
そしてこのタイミングで、俺の魔力が回復した。
「まぁ、すぐに君も気絶させっ…⁉︎」
「うらぁっ!」
俺は足に風を纏い、一気にボスの元へ飛ぶ。
そしてそのまま剣を振り下ろした。
「危ないなぁ、急にスピードが上がったね。 驚いたよ」
「驚いたんなら、やられてくれると嬉しかったんだけどな!」
「それは出來ないなぁ」
何度剣を振っても弾かれるか避けられる。
「水球ウォーター・ボール!」
「おぉっ⁉︎」
俺は至近距離で水球をぶつける。
ボスは水浸しになり、俺はボスから距離をとる。
「あーあ…ビチャビチャじゃないか」
「よく警戒しないからだよ」
「ふっ、まさか子供に注意されるとはねぇ…」
「風ウインド!」
俺は風を起こし、上に飛ぶ、そして大量の火の球を作る。
魔力を込め、どんどん火を大きくする。
間違いなく今俺が出來る最大の攻撃だ。
「隕石雨メテオ・レイン‼︎」
「中級魔法か、威力も高い。 でもダメだね。
ーーーー水壁ウォーター・ウォール」
だがボスは水の壁を作り、その水に當たった火の球は消火して無くなった。
「ウソだろ…コレもダメなのかよ…」
「ほらほら、もう終わりかい?」
「くそっ…まだまだ! 水連弾アクア・マシンガン!」
俺は大量の水弾をボスの足を狙って撃つ。
「へぇ、水魔法も出來るのか」
そう言いながらも全部避けられる。
「雷球サンダー・ボール!」
雷球をボスの足元めがけて撃つ。
「くると思ったよ」
だがボスはそれを高く飛んで回避する、ボスは木の枝に立つと俺を見て言った。
「さっきやった技が通用するわけがないだろう、君は何も出來ない、大人しく降參すればいい」
「……嫌だね」
「君は馬鹿だねぇ…お互いの実力差も分からないとは…」
「お前こそ馬鹿だな、人質の元から離れるなんてさ。ーーーー黒霧ダーク・ミスト」
俺は闇魔法でここら辺一帯に黒い霧を発生させる。
闇魔法には認識阻害系の魔が多い。
「なっ…闇魔法まで!」
その隙に俺はクレアを回収する。
クレアの縄を風切で切ると、クレアが抱きついてきた。
「ルージュお兄ちゃん‼︎」
「よしよし、怖かったな。 アリスとクリスを起こしてここから逃げるぞ」
「うん!」
黒霧は魔力を多く込めたので數分は消えないはずだ。
チャンスは今しかない、今の俺じゃあいつには敵わない。
「見つけた!」
黒霧は使った俺でも方向が分からなくなる。
だから完全に勘でアリス達を見つけた。
「クレア! 俺の背中に乗れ!」
「うん!」
クレアをおんぶし、アリスを右腕、クリスを左腕で抱える。
よし、後は逃げるだけだ。
「そうはいかないよ」
俺の頭上から聞こえたその聲は、俺を一瞬で絶に陥れた。
なんで……この黒霧の中じゃ俺の位置は分からないはずだ。
なんで…
「君なら、この2人も助けようとして絶対にここに來ると思ってたよ」
「な、なんでアリス達場所が分かった‼︎ この黒霧の中じゃ方向なんか分からないはずだぞ!」
「確かにこの黒霧じゃ方向は分からないだろうねぇ…だけど、木の形は1つ1つ違うんだよ」
「木の形…?」
「そう、僕達みたいにずっと森の中にいるとね、どの木がどこにあるかとかが分かっちゃうんだよ」
ありえない、ここに木が何本あると思ってる。
それを……この男は見分けてここに先回りしていたのだ。
「……マジかよ…」
化けだ、敵うわけがない。
俺はその場に座り込んだ。
「る、ルージュお兄ちゃん…?」
霧がはれていき、完全に無くなると、ボスが木から降りて俺の前に立った。
「これが、 僕と君の差だよ。 安心してくれ、君は強い、君のその強さが活かせる人に売ってあげよう」
ダメだ、終わった。
この男には勝てない、俺は……俺達は…奴隷にされてしまうんだ。
「ーーー人の子供を売るだのなんだのと、好き勝手言ってんじゃねぇよ」
突然、目の前にいたボスが消えた。
否、橫に飛ばされたのだ。
いきなり現れた”何者”かによって。
「っ! 誰ですかねアナタは。 いきなり毆るなんて酷いじゃないですか」
「ハッ、散々ルージュを傷つけておいてよく言うぜ。 ……覚悟しろよ」
俺をルージュと呼ぶこの男、そして聞いた事のある聲。
もう既に誰かは分かっていたが、俺は信じる事が出來なかった。
俺の前の男は振り返り、俺をまっすぐ見る。
そして確信した、この男は……
「と…父さん……」
「ようルージュ、隨分ボロボロだな。 見たじ、その子達を護ろうとしたんだろ? よく頑張ったな。 もう、大丈夫だ」
俺の父、ディノス・アルカディアだった。
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