《2度目の人生を、楽しく生きる》27話 「個人競技」
「火球ファイアー・ボール!」
俺の火球がグレンの方に飛んでいく。
………そして、突然ソーマが火球の線上にってくる。
「お、おいソーマ! そこじゃ火球が當たるぞ!」
「っ! ちっ‼︎」
ソーマは舌打ちをして火球を避ける。
グレンも當然のように火球を避ける。
「おい半端野郎、さっきから邪魔ばっかしてんじゃねぇ」
「お前がきまくるからいけないんだろ! 狙いが定まらないんだよ!」
「そのくらい何とかしやがれ、それが後方支援の役目だろ」
さっきからこんな事が続いている。
ソーマの戦い方は「とにかくきまくる」という戦法で、持ち前の足の速さを活かせている。
だがそのせいで俺は魔を使う事が出來ないのだ。
魔がグレンの元に屆くまでに、必ずと言っていいほどソーマが線上にでてくる。
やりにくい事この上ない。
「おいおいお前らさぁ……、しは協力ってもんが出來ないのかねぇ…」
「足手まといと協力なんて出來るかよ」
グレンの言葉にソーマは舌打ちをしてから答える。
足手まといだの半端野郎だの……好き勝手言いやがって……
「あーあー分かった! もういい、後方支援なんて辭めだ! 俺も接近する!」
俺は剣を抜いて、言った。
ソーマは呆れた顔をして、グレンは溜息をついた。
「魔もろくに使えねぇお前が、剣で役に立てると思ってんのか?」
「なくとも何もしない時間はなくなるだろ」
「……ちっ…好きにしろ」
「言われなくてもそうするよ」
俺とソーマは剣を構える。
グレンは「はぁ…面倒くさい事になったなぁ…」と溜息をつきながら言った。
「行くぜっ!」
俺は風加速を使って高速でグレンの元へ向かう。
「……俺は右から行く、てめぇは左から行け」
ソーマが橫からそう言ってくる。
……あれ? なんでこいつ俺の橫に居るんだ? まさか風加速の速さについて來れてんのか⁉︎
「……あ、あぁ…分かった」
俺がそう言った瞬間、ソーマが右に逸れていった。
俺は左に逸れ……両方から一気に斬りかかる。
「おらぁっ!」
「はぁっ!」
俺とソーマの同時の斬りかかりにグレンは……
「……分かりやすすぎんだよ」
グレンは俺の手を摑んで、右側に居るソーマにぶつけた。
「うわっ!」
「くそっ! 邪魔だ!」
2人して地面を転がり、グレンから引き離される。
「いててて…」
俺が土埃を払いながら立ち上がると、既にソーマはグレンに向かって突進していた。
「地衝斬ちしょうざんっ‼︎」
ソーマが剣を引きずりながら突進し、そのままグレンに剣を振り上げる。
……ってか剣を引きずった場所、地面が割れてるんだけど……なにあれ、どんな力だよ。
「うぉっ…と、危ねぇ危ねぇ」
「くそが!」
だがグレンは驚きながらも後ろに飛んで避ける。
そしてそのタイミングで俺は剣を構え……
「炎斬えんざん‼︎」
グレンに向かって炎斬を撃つ。
「ソーマ! 右に飛べ!」
「っ!」
ソーマが言われた通りに右に飛ぶ。
ソーマがグレンの前にいるおかげでグレンからは俺の炎斬が見えていない。
そこでソーマが右に避けると……
「うおぉっ⁉︎」
グレンからしたら突然目の前に斬撃が飛んでくる事になる。
當然避けられるはずがなく……炎斬はグレンに當たり、発する。
「よっしゃ! 當たった!」
「まだ気を抜くな! 畳み掛けるぞ!」
俺がガッツポーズをして喜んでいる中、ソーマはグレンの元へ走っていく。
そうだ、まだ倒した訳じゃないんだ。
俺は風加速を使い、高速でグレンの元へ走る。
グレンは発の煙で見えないが、まだやられてはいないだろう。
「地衝斬っ‼︎」
「炎斬‼︎」
ソーマは右側から、俺は左側からお互いに全力の技を煙の中にいるはずのグレンに打ち込む。
ガキンッ!
そんな金屬音がした。
そして、そのタイミングで煙がなくなり……前が見えるようになると……
「なっ…」
「なんでてめぇがっ…」
俺とソーマの剣がぶつかっていた。
え…なんでソーマが? グレンは? グレンはどこ行った?
「逃げられたみてぇだな」
「でも、確かに炎斬は當たったはずだぞ?」
「んなもん知るかよ、ここにあいつがいないんだから、逃げた以外に考えらんねぇ」
……そうだろうか、確かに逃げるのもありだろう。
だが……今は試験中、教師が學者を選別する場だ。
なのに、実力を測るために居る教師が逃げるだろうか?
「いや…グレン先生はまだ近くにいるはずだ」
「あぁ? よく周り見てから言えよ」
確かに、周りには先程と同じようになにもない草原が広がっている。
そしてそこにポツンと1つだけ椅子があって…………
「……あれ?」
……椅子が……無い?
「なんだよ」
「いや、さっき、そこに椅子あったよな?」
「椅子…?」
ソーマが俺が指を指した方向を見る、そして目を見開き……
「……なるほどな」
「え? なんだ? 」
「おい、そこにいるんだろ? 子供相手に逃げてんじゃねぇよ」
ソーマが何もない場所に話しかける。
……なんだ? 何してんだこいつは…
半分呆れながら見てると、突然、俺達が見ていた場所が歪み出した。
そして……
「よく見つけたな、ソーマと……えぇっと…名前分かんねぇや。 とにかくよく見つけたな、黒い奴」
くっ、黒い奴…? 
黒いのは髪と目のだけだろ……
いや、たしか黒髪は珍しいんだっけか。
グレンが現れると同時に、消えていた椅子も現れる。
「えっと……どういう事…?」
訳が分からない。 
あったと人が消え、そして突然またそれが現れる。
マジックショーでも見てる気分だ。
「まさかアンタが”空間魔”の使い手だったとはな」
「ま、空間魔っていっても自分本人と、何か小を消すだけだがな。 
流石に椅子も一緒に消すのは大ヒント過ぎたか?」
ソーマとグレンが會話をするが、はっきり言って、理解が出來ない。
なんだ空間魔って。
「これでお前らが俺に気づかずに先に進もうとしてくれてたら、後ろから襲いかかる事も出來たんだがなぁ…」
なんだこの卑怯な大人は…! 
「はっ! だが殘念ながら見つかっちまった訳だ、ざまぁねぇな」
「いや…威張ってるけど先に気づいたの俺だからな? 」
何をさも「自分の手柄だー」みたいに威張ってんだこいつは。
「まぁとにかくだ……さっきそこの黒い奴のよく分かんねぇ斬撃くらっちまった。 約束どおり、この勝負はお前らの勝ちだ」
「本當ですか⁉︎」
「ちっ…まぁいいか」
なぜかソーマは納得いってないようだが、勝ったんならそれでいい。
今はとにかく急がなければいけないんだ。
「じゃあ、通っていいんですね?」
「あぁ、いいぞ。 今度は學園でお前らと會うのを楽しみにしている」
「はい!」
グレンと會話をしている間に、ソーマが歩き出す。
俺は慌ててソーマの橫へ行く。
「ちっ…著いてくんなよ」
「目的地は一緒なんだからいいだろ。 それに2人の方が戦闘は楽だろ?」
「………足手纏いはいらねぇ」
「なんだと⁉︎ これでも俺結構強いと思うんだけど!」
「きが素人すぎんだよ。 魔はいいとして、剣がダメダメだ」
そんな會話をしながら、急ぎ足で歩く。
……やっぱり、1人で行した方が良かったかもな……
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ーーグレン視點ーー
「いやぁ…まさか攻撃當てられるとはなぁ…」
俺は先程戦った2人の年を思い出す。
1人は黒髪の、禮儀正しい年。
もう1人は白髪の、言葉遣いが荒い年。
髪のも、格も正反対の2人だ。
俺は、「ただ面白そうだから」と言う理由だけで2人で協力して挑んで來るように言った。
そして、案の定2人はバラバラにき、互いに合わせようとはしなかった。
言うなら個人競技だな。 協力して來いって言ったのに、お互いに自分の攻撃を當てようとする。
「……ま、それでも厄介だったんだがな…」
そう、あの2人の戦闘能力は思ったより……いや、異常な程高かったのだ。
黒髪の年は、魔が凄腕だった。 度、速度、全てが子供とは思えないほどだ。
そして白髪の年は、剣が凄腕だった。 技のキレ、腕力がケタ違いだ。 
2人とも、才能がある。
だから、その2人が協力するのを見れなかった事が悔しい。
「もし……あいつらが本気で協力する事があったら…」
それはもう、とんでもない事になるだろう。
……いつになるかは分からないが、ゆっくり、見守っていこう。
生徒を見守るのが、教師の役目だからな。
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