《魔法陣を描いたら転生~龍の森出の規格外魔師~》エピローグ 約束
「ユーリっ!」
「母さん……ただいま」
俺は中央広場で待機していた母さんに向かって手を振る。母さんたちも、討伐が完了したらしい。
集落は暴竜の襲撃という危機が過ぎ、安堵あんどのムードとなっていた。武龍団の家族、親族は無事に帰ってきてくれたことを喜び合っている。
***
俺は北の森で起きたことを、ありのままに母さんに話した。
「そうか……そんなことが。よく帰ってきてくれた、ユーリ」
母さんはし、目をうるうるとさせて俺に抱きついてきた。突然の出來事でちょっとばかし揺してしまうが、母さんの優しさをじ、俺はされるがままでいることにする。
「あっ、悪い……ユーリ」
「ううん。ありがとう、母さん」
俺は幸福の中、まだ話していないことを思い出す。
「あ、そうだ! 母さん。俺、結婚する」
『……』
「母さん? おぉーい、かぁーさーん」
まずい、母さんが固まった。何でだ?
俺は固まった母さんを揺らし、意識を戻そうと試みる。そして、しばらく経ったあと、母さんは悪夢を見て飛び起きたときのように意識が戻る。
「あ、あ、相手は、誰なんだ? ……もしかして、そこにいる娘か?」
母さんは人化した姿を知らない。つまり、初対面みたいなことになってしまうわけだ。
「うんっ、紹介するね。俺の婚約者の……」
「セレーナですっ! アーテルさんおかあさん」
俺の後ろから、ヒョコッと出てきたセレーナは、母さんに元気よく挨拶する。
「せ、セレぇ……ナ? え、でも……確かセレーナは……」
母さんの口調が、驚きのせいで若干くなっている気がする。こんなこと前にもあったような……まぁいいか。
「わたし、人化できるようになったんです!」
「そ、そうだったのか」
母さんは渋々といった様子で納得する。
「わたし。ユーリくんのお嫁さんとして頑張ります! アーテルさん、いえ――お義母さん。ユーリくんとの結婚を認めて下さいっ」
うぅ……ちょっと恥ずかしい。俺のお嫁さん……にやけが止まらない。
母さんは唸りながら、悩んでいるようだ。
年月や、歳のことを考えているのだろう。龍人の結婚は長い年月をかけ、互いの全てを知ったとき行う文化のようなものがある。それにまだまだ、母さんから見れば、俺たちはいとじるのだろう。
ただ、龍人の結婚に年齢の決まりはない。大抵は長い年月をかけて――いわゆる際だ――結婚に至ることを考えると、やはり數十年、數百年は過ぎる。
だからこそ、龍人の夫婦は仲睦まじく、離婚などありえないらしい。龍人族はの深い種族だと言える。
「アーテルよ、認めてやったらどうじゃ」
「長っ」
母さんの後方から「ほっほっほっ」っと笑う、じっ様が歩いてくる。
「しかし、ユーリとセレーナはまだ子供です」
「確かにそうじゃ。じゃが……ユーリに『龍の儀』をける資格を與えると言ったらどうじゃ?」
『龍の儀!?』
母さんや俺、近くにいる人たちの驚く聲が重なる。
「うむ。聞くところによると、ユーリはあの狂暴竜バーサークドラゴンを単獨で撃破したそうじゃな?」
「う、うん。そうだよ、じっ様」
俺は揺を隠しきれず、うわずった聲で返事をする。
『ユーリ。龍の儀をける覚悟はあるか?』
――龍の儀。それは俺が目標としてきた道。母さんも通ってきた道。
俺は母さんを超えたい。それはつまり、この集落を守れるくらいの強さをもつということだ。決して甘くはないし、誰かが教えてくれるわけじゃない。
強さとは不確かで、確かでないといけない。
龍の儀は、これまで以上に過酷だろう。簡単にはゴールへと、通らせてはくれないだろう。それでも……
――「挑戦したい」
「うむ。よく言った! 龍の儀は半月後に行う。それまで、準備を整えるのじゃ」
「はいっ」
俺は自分の中にある、闘爭心というものが沸々とたぎっていくのをじる。
「ユーリが龍の儀を……あれ、何で涙が……ここは喜ぶところだというのに……」
「母さん……」
母さんは腕で、頬に流れる雫を拭う。悲しいわけではない……それがわかるから、なおさら俺は嬉しく思う。
「今日は祝杯だ。ユーリ!」
「うん! 母さんっ」
俺は満面の笑みで応えた。
***
その後、夜になって俺の家では長、ラルージュさんと旦那の武龍団団長のシュタルクさん、フリージアお姉ちゃん、アニモが集まってくれた。もちろんセレーナもいる。
母さんは腕によりをかけて、豪勢な食事を作ってくれた。みんな、祝いの言葉をくれ、セレーナとの結婚も認めてもらった。
めっちゃ張したが、シュタルクさんとラルージュさん……いや、お義父さんとお義母さんは溫かく迎えれてくれた。
今日一日、々あったが嫌なことだけでなく、今は幸福で満たされている。どうか、この幸せがずっと続くようにと俺は願う。そして、俺が守ると心に刻んで……。
***
「ユーリくん。今日は々あったけど私、すごく幸せだよ」
今、俺とセレーナは家の外へ出て、夜風にあたっている。
「ふふ、そうだね。大変だったけど、今日の出來事はきっと忘れない」
「うん」
俺の垂れ下がった左手をセレーナは摑み、指と指の間に自分の指を絡めていく。いわゆる人繋ぎというやつだ。
「うふふ」
「どうしたの?」
「だって、夢見たいなんだもん。私が人化できるようになって、それにユーリくんと結婚することになって……」
セレーナは空を見上げ、想いを馳せるようなし哀愁もじてしまう顔をしている。
「セレーナ……」
「ユーリくん……」
月明かりの下、俺とセレーナの影が重なる。ゆっくりと進む時の中で、俺の好きという気持ちが加速する。しかし、俺には伝えなければならないことがある。
「セレーナ。結婚はし待っててしいんだ」
「どうして?」
セレーナは気丈に振る舞うようにしているが、そこには不安という気持ちが隠しきれていない。
「結婚が嫌になったわけじゃないんだ……自分の我が儘なんだ。俺は『龍の儀』を超えて、セレーナにより相応しい男になって帰ってきたい」
「うん……」
「約束する。絶対帰ってきて、結婚しよう」
龍の儀は早い者で1ヶ月はかかる。待たせてしまうことに申し訳なく思うが、やはり試練を超えた自分で迎えたいという想いは俺の中でかすことができない。
「約束……だよ? 破ったら、口も利いてあげないんだから」
セレーナはとても優しい聲で言い放つと、ニコッと笑みを浮かべ俺のの中に顔を埋める。俺はそっと包み込むように、セレーナの背中に手をまわして抱きしめる。
「……ありがとう、セレーナ」
俺のことを理解してくれる、大切な人のためにも俺は決意を固め、全力を盡くすことを誓うのであった。
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