市長の聲かけでソファーに座る。

俺を真ん中に左側にセレーナ、右側にリリーが座っている。反対側には王様、一人用ソファーに市長が座った。

先ほどから王様の後ろに立っている執事風の男……いや、もう執事で確定として、その執事が俺のことをじっと見ている。

わかりやすいくらい見ているので、これは聲をかけた方がいいのか？

そんなことを考えていると、王様がそのことに気がつき「スチュワード」とし低めの聲で呼ぶ。

スチュワードと呼ばれた執事は「失禮いたしました」と頭を下げて、俺から視線を外した。

謝罪一つにも一挙一に無駄がなく、洗練されているなと思う。これがプロの執事。

「家臣が失禮いたしました。この者は私の側付をしているスチュワードと申します。先日のユーリ様のお使いになった魔法に服したようでして、お會いできるのを楽しみにしていたのです」

「失禮ながら殿下、楽しみにされていたのは殿下であったと思いますが……」

「靜かにしていなさい、スチュワード」

王様がそう言うと、スチュワードさんは口を閉じて無表になる。王様は「失禮しました」と言ってニコッと笑う。

「もちろん、私もユーリ様にお會いしたと思っておりました。ユーリ様はとても優秀な魔師とお聞きしました」

「いえ、魔研究が趣味みたいなものなので、自分よりすごい人は他にもいると思いますよ」

（ユーリ様、いないと思います）

ん？　リリーの視線が俺に向いてる。何か呆れに近いような表をしているんだけども……。

リリーとは反対にいるセレーナはどうやら俺が褒められて嬉しいのか、上機嫌になっていた。ずっと笑顔だ。

それからしばらく他無い會話が続く。

王様は思っていたよりもずっと気さくな方だった。時折見せるらしい顔がより好を持てる。

勝手なイメージで、王族という人たちはもっと偉そうな人なのかと思っていたけど、実際は違うのかもしれない。

なくともエプレ王様は民に慕われる素敵な人だ。

「ユーリ様」

王様が真剣な表になる。

「今日、お呼びしたもう一つの目的をお話ししてもよろしいでしょうか？」

和気あいあいとした空気から一転、王様は張を持って俺に問いかける。

「はい」

短く、はっきりと応える。

「まず始めに、ユーリ様に助けて頂いたご恩を何もお返しできていないまま、お話しさせて頂くことをお許しください」

俺は王様の謝罪を真っ直ぐにけ止める。

正直に言えば、そんなに謝る必要はないし気を遣わられるようなこともしてない。

だけど、王様の気持ちも何となくわかるから、しっかり聞こうと思った。

俺は、俺が思っているよりも王様の、この人の力になってあげたいと思っているのかもしれない。

「私たちを襲った賊の裏に、ある組織が関わっていることがわかりました。その名を「魔皇教団まおうきょうだん」と言います」

魔皇教団……聞いたことがない。

「魔皇教団については？」

俺は首を橫に振る。

ご説明します、と王様は話を続けた。

魔皇教団とは「魔皇」という存在を信仰する宗教団である。

その教団によると、魔皇とは圧倒的な魔力とあらゆる魔法を使いこなす存在であり、魔皇がこの世に現れたとき世界は生まれ変わるのだと言う。

魔皇教団はその魔皇とやらを迎えるために活しているというのが表向きの活だ。

その本質は魔師至上主義に基づく、選民思想の集団である。

魔皇教団に屬する全員が魔師であり、今回の賊もその魔皇教団の手のものであった。

今までは目立ったきがなかった組織だったのだが、近年活が活発化し始めている。

今回の騒に関して、その意図はまだはかりかねているが、よくないきなのは確からしい。

「この都市に出りしていた冒険者のテーレ・・・という男も魔皇教団に関係していたのではないかと睨んでいる」

苦蟲を潰したような表で市長が言う。

テーレか。確かにあり得そうな話ではある。

「ユーリ様にはこの魔皇教団の調査をお願いしたいのです」

魔皇教団。

この組織については直接的には俺に関係ないかもしれない。

龍帝國の調査がある中、魔皇教団の調査は寄り道になってしまうと思う。

だけど、俺は力になりたいと思っている……。

俺は迷っていた。

王様の依頼をけるべきか、否か。

そんな時だった。

〈そのの力になりたいのではないのか？〉

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