キャロット西門。第二居住區を抜けた先にあるその門に早朝、俺たちは來ていた。

まだ夜が明けたばかりで空はやや暗い。

北の居住區とほぼ同規模の第二居住區だが、早朝ではまだ人気はない。中央區に向かって眠そうに歩く人がちらほら見える。

「まだ朝は寒いね」

「魔法を使おうか？」

「ううん、大丈夫」

セレーナが寒いと言って俺の腕に抱きつく。

今は水の月の初旬。確かに朝はまだし寒い。

そう言えば、今月の末がセレーナの誕生日だ。

魔皇教団今回の件はそれまでに片付けて、セレーナの誕生日は盛大に祝いたいな。

俺は中央區に目を向けて、カタカタと音を立てながらこちらへ近づいて馬車を見る。

その豪華な馬車の周りには兵士が１０名ほど護衛している。馬車の中にいる人を考えれば、それでもないのではと思ってしまう。

馬車が俺たちの前に止まる。扉が開き、馬車から一人の男と一人のが降りてきた。

「おはようございます。ユーリ様」

「おはようございます。王様」

先日の服裝ドレスとは違って、きやすいピッタリとしたパンツスタイルだ。上も革鎧のようなものを著ていて、軽裝と言ったじ。

それでも華やかで、凜とした雰囲気をじさせるのは王様のオーラのようなものがそうさせるのかもしれない。

執事のスチュワードさんはいつもの燕尾服を著ている。目が合ったので會釈をすると、スチュワードさんは丁寧にお辭儀を返してくれた。

「ユーリ様、あの……失禮ではございますが、そちらのの子はどちら様ですか？」

「あ、紹介が遅れましたが――」

「――相棒パートナーのアカネ」

アカネに気がついた王様が俺に尋ねる。

ずっと影に隠れていたためアカネの紹介する機會を逃していた。そのため、紹介しようと思ってアカネに影から出てもらっていたことを思い出す。

しかし、紹介しようとしたところでアカネに言葉を遮られた。

「……伴パートナーですか？」

「ん、パートナー」

アカネの言葉に、やや困した様子の王様はアカネと俺を忙しなく互に見ている。

それに対して、なぜか堂々と肯定するアカネ。

ん？　王様の俺を見る目が心なしか不審なものに……パートナー……伴と勘違いしてる？　それは誤解です！　王様！

俺は慌てて弁解する。

「な、仲間って意味ですよ！？」

「っ！？　そ、そういうことですね」

「相棒パートナーは相棒パートナー」

アカネは相変わらず想がない顔で王様をじっと見ている。

視線をじて、アカネを見返す王様。その表は微笑ましいものに変わっていた。

「殿下、そろそろ出発いたしましょう」

「ええ、そうね」

後ろに控えていたスチュワードさんが王様に近づいて出発を催促する。

それに王様は頷く。

「ユーリ様、出発したいと思いますがご準備のほどはよろしいですか？」

「はい。いつでも」

俺が答えると、王様は改まった顔つきになる。

「ユーリ様、重ね重ねの確認になってしまいますが、本當に馬車には……」

「はい、乗りません。護衛も兼ねていますし、俺たちは徒歩で行きます」

「そうですか……わかりました」

やや殘念そうな表を見せる王様。先日の打ち合わせで伝えたときも同じような表をしていた。

護衛をするなら外にいた方が報をたくさん得られるし、それに馬車の中で何を話したらいいかわからないしな。王様には悪いけど、俺たちは徒歩で行かせてもらおう。

王様、スチュワードさんと進路の最終確認をして、二人はそのまま馬車に戻る。

護衛の兵士が整列し直し、いつでも出発できる狀態となった。

馬車の窓から王様が顔を出す。

「それでは參りましょう」

「はい」

者が馬に指示を出し、馬車がカタカタと進み始める。それに合わせて兵士たちも歩き出す。

馬車の速度は人が歩く速さよりやや遅いくらいで、決して速くはない。

正直、魔法を使えばもっと速くすることは可能なのだが、この國の魔師が使える魔法を軽く超えてしまう。

々な追及をされてしまうと面倒だ。何かあったときには使うかもしれないが、極力目立ちそうな魔法は控えよう。

馬車が門を抜ける。俺たちも歩き始めよう。

「よし、俺たちも行こう」

「うん」

「はい！」

「ん」

門を抜け、振り返ると朝日が建の隙間から微かに見える。朝日に照らされたキャロットはとても綺麗だと思った。

キャロットでも々あったけど、楽しかったな。やるべきことが終わったらまた來よう。

こうして、俺たちは王様と共に西の大都市リーキに向けて都市キャロットから旅立った。

読んでいただきありがとうございます！

あけましておめでとうございます！

年明けの更新となってしまい、ごめんなさい。大変お待たせいたしました……。

今年も描い転にお付き合いいただければ幸いです！