《シスコンと姉妹と異世界と。》【第30話】おつかいのあと
學校へ戻った俺たちは、任務完了の報告のために付所へ足を向けた。獲の換金もそこで行うらしかったので早速済ませることになった。
コブシシが10頭で30萬円。ローズが採ったらしい謎のキノコがかなり値がついて、他の山菜やウサギなどと合わせて15萬円くらいになった。
そこから學園に幾らかって、ひとりジャスト10萬円の稼ぎになった。なんと高収だろうか。第一の任務でこんなに稼げるなんて思いもしなかった。
卒業しないで狩りにを投じ続けるのも悪くないような気がする……なんて考えが頭をよぎってしまう。それは2人のためにも絶対にしないのだけれど。
「こんな簡単にこれだけのお金が貰えちゃうんだね!」
付を後にして4人で俺たちの部屋に戻ってすぐ、ベッドに座ったローズが言い放った。
「普通の生徒で組まれた小隊なら1頭狩れれば上出來なほうなんだぞ? それも大は損傷が激しくなりがちものなんだ」
「姉さんたちが最初に狩りに行った時はどうだったの?」
「2日間使って6頭だったっけ、エリーゼ?」
「あぁ、確かそうだ。初日は森そのものの探索を山菜を採りながらしつつ、罠を仕掛けて」
「んで2日目は罠にかかったコブシシをじっくり……」
「ストップストップ!! グロくなりそうだしそこまでで大丈夫です……」
姉さんとアリスさんが椅子に、俺がローズの隣に腰掛けながら話を続ける。
「罠なんて考えもしなかったね、お兄ちゃん……」
「俺も思いつかなかったなぁ……。あんまし魔法に頼りきるのもどうかと思ってたはずなんだけど」
(ナビ子と話すのも楽しかったからな)
(そう仰って頂けると幸いです)
(あれ? 実化しないんだ)
(あれはマナの富な自然の中だからこそ出來たのであって、今この場では……。それに実化ではありません。何かにったり干渉したり出來るわけではありませんので)
(それもそうか。……まぁ、今日はありがとうな。お疲れ様)
(お疲れ様です、ショー様)
「まぁわたしたちが地形を知っていた上に、ショーは探査魔法が使えるんだろう? 初日から狩りにくのも當然と言えるんじゃないか?」
「それもそうかもね! 使えるものはじゃんじゃん使わないと勿ないよ〜?」
「まぁ、2人にそう言ってもらえると嬉しいです」
「お兄ちゃん探査魔法使えるの??」
「うん、使えるんだよこれが。何が何処にあるかっていうのは解る。それが誰かまではわからないんだけどね」
(やろうと思えばできますけどね)
(マジ?)
(本気と書いてマジです)
(どうやって?)
(対象の脳にショー様のマナを楔のように撃ち込んで頂ければ、それを発信機代わりに辿ることができます)
(すげーな……)
(埋め込んだマナの楔を介して対象の脳に働きかけ、をることも理論上は可能です。まだまだ練度が足りないのでショー様には難しいかと存じますが)
(そこまではいいよ……。なんか闇墮ちしそうじゃん、それ使いだしちゃったら)
(それは殘念です)
「すごいねお兄ちゃん!」
「ぶわっ!」
ローズにベッドへ押し倒される。ほぼラリアットみたいな威力だったけど。
だが抵抗はしません。苦しいけど、らかな幸せに包まれているから。……ああ、目の前が白んできた……。
「ローズちゃん! なんか々と極まってるから離れてあげて! ショーくん逝っちゃいそうだから!!」
アリスさんがくっ付いているローズを引き剝がそうとする。
「2人とも落ち著けっ、てっ」
「あっ」
アリスさんがなにかに気付いた。姉さんがこっちに倒れ込んでくる。
「……ぐぅ」
俺は5分ほど失神した。
______。
「ん……」
「よかった、生きてたね〜」
「そんな簡単に死ぬか! ほらローズ、謝れ」
「ごめんなさい……」
「ショーくん、怒らないであげてね? トドメを刺したのはエリーゼだからね〜」
「その、済まない。まさかつまづくなんて思いもしなかったんだ……」
いや、死んでもいいくらい幸せな逝き方だったしなぁ。無事に還っては來たんだけど。
「いいってこんくらい……」
「こんくらいって、ショーくん失神したんだからね?」
ツッコミのアリスさん珍しいですはい。
「そろそろ飯の時間だし行きましょう?」
「まぁショーがそう言うならそうしよう」
「わたしお腹ペコペコ……」
「僕も〜。あっ、ちょっとサラシ巻くから待って」
「「「はーい」」」
「『はーい』じゃないだろ。ショーは外で待ってろ」
「はーい」
「……お待たせ!」
「それじゃ、行こうか皆」
食堂に著くと、そこにはコブシシが沢山いた。もちろん調理済みの狀態でだが。どうやらこの日は他の生徒もコブシシ狩りに參戦していたらしかった。
薄切りにされシンプルに焼だったり、湯通しして野菜と一緒に食べたり、ステーキにしたりとんな食べ方をされていた。
「でも、アレがないな……」
「ん、ショーくんどしたの?」
「ちょっと廚房にお邪魔してきます。ローズ、味いもん作ってやるから、ちょっと食べないで待っててくれ」
「ええ!? そんなぁ……。でも、待ってる」
「わたしのも作ってくれ。せっかくならショーが作ったのを食べてみたいしな」
「じゃ、僕もお願いしよっかな〜。料理のできる男はモテるよ〜」
「おばちゃん、ちょっと料理していい?」
「ちゃんと手を洗うんだよ?」
「わかってるって」
まずを……
(1センチ程の厚さに切ります)
(ナビ子!?)
(口ではなく手をかしましょう。さぁ)
厳しい……。
(……はい、切りました)
(まず小麥を付けましょう。しっかりと付けつつ、余分なものは落としてしまいましょう)
(できました)
(それでは、切ったおに卵を付けます。この時、卵は白と黃の境い目がなくなるくらいになっているのが理想です)
(はい、できました先生)
(最後にパンを付けましょう。パンが冷凍庫にっているので、それを削って生パンといきましょう)
お、ほんとに冷凍庫にパンあるわ。大丈夫なのか、これ?
(できた!)
(では火球でも作って、パンの水分を一旦飛ばして下さい。それが済んだら卵を通したにパンを付けましょう)
(はいOKです)
(それではしパンを馴染ませた後、油で揚げましょう。2分位で一旦ひっくり返します)
急に始めた料理ショーに、ローズたちだけでなくほかの生徒達まで食いついてしまっている。廚房のおばちゃんたちまで手を止めて見てるし……。
(あと1分半で上げてください)
ジューっという音が靜まった食堂中に響き渡る。
(よし、上げるぞ)
(はい、気をつけてくださいね)
各所から歓聲や驚きの聲が上がる。どうやらトンカツを見るのは皆初めてのことの様であった
「あとは切るだけ……」
(馬鹿な真似はよしなさい!)
ピシャリと言い放たれたお叱りのお言葉。
(余熱で火を通すのを忘れてはいけません! そのまま5分ほど置いてください)
……5分経過。
「うわ……味そう」
我ながらいい出來である。ナビ子の完璧なアシストで初めて作ったが大功だ。
「お待たせいたしました。コブシシのカツでございます」
3人のもとへカツをのせた皿を運ぶ。その様子を周りが固唾を飲んで見つめている。
「「「いただきます」」」
サクっという音が響く。ソースがないので塩で食べてもらう。お好みでレモンみたいな果(名前を忘れた)を搾ってくれれば。
「「「おいしー!!!」」」
そう3人から聲が上がると、皆が一斉に廚房に詰め寄り、おばちゃん達にアレを作ってくれと言いだした。
「ちょっとそこのお兄ちゃん、この料理はなんていうんだい?」 
「トンカツ、ですよ」
「トンカツね、わかった。これ今度からウチのメニューにするからね、いいかい?」
「勿論ですとも! 売上の一部をくれれば……」
「金を取るんじゃない!」
姉さんからのチョップが飛んできた。
「冗談です皆に振舞ってあげてください」
渋々、観念しておばちゃんに伝える。
「あいよ。作り方はさっきの見てたから大丈夫だと思うけど、わかんなかったら呼ぶかもしんないからそん時は頼むね!」
「はい!」
今夜は寮に住む生徒全員がトンカツにかぶりつく不思議な日となった。ショーの思いつきから始まったトンカツパーティーは大盛況に終わった。
この日をきっかけに、世間に広くトンカツが浸し、この國では『トンカツ記念日』なる國民の休日が誕生するまでに至った。
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