《【書籍化】マジックイーター 〜ゴブリンデッキから始まる異世界冒険〜》32 -「ゴブリンの王」

カード一覧を確認したところ、火傷蜂ヤケドバチのカードを手していたことが分かった。

それも2枚ほど。

火傷蜂ヤケドバチを倒してる最中に、カードドロップのシステムメッセージを見た気がしたので、ずっと気になっていたのだ。

MEでは、稀に倒したモンスターのカードがドロップされることがある。

運が良ければ、対戦中に敵が召喚したモンスターを、こちらの駒として召喚することもできる。

これでカードが枯渇してもなんとかなりそうだ。

[C] ガルドラの火傷蜂ヤケドバチ 1/1 (赤)(1)

[飛行]

[火傷付與Lv1]

試しに召喚してみる。

「ガルドラの火傷蜂ヤケドバチ、召喚」

紅いの粒子が空気中に現れ、目の前に集束する。

の発散と同時に、長30cm程の火傷蜂ヤケドバチが出現した。

(で、でかい!)

討伐した火傷蜂ヤケドバチは大きい奴でも10cmだったのに、こいつはその3倍はある……

さっそく、こいつにレイア捜索をお願いしたいんたけど、さすがにこいつ見たらレイア逃げそうだな……

やっぱり素直にゴブリンを召喚しよう。

召喚した火傷蜂ヤケドバチには、ひとまず周囲の偵察をお願いしておく。

候補はこの3枚。

[SR] 王シュビラの結婚指 (3)

[ゴブリン召喚コスト軽減:(1)]

[生贄時:ゴブリン3/3召喚1]

[耐久Lv1]

[UR] ゴブリンの王シュビラ 2/4 (赤)(5)

[毎ターン:ゴブリン2/2召喚1]

破壊クラッシュLv3]

[解呪ディスペルLv3]

[R] ゴブリン呼びの指 (X)

[生贄時:ゴブリン1/1召喚X ※Xは赤マナのみ]

[耐久Lv1]

今後のゴブリン召喚コストを軽減してくれる指に、毎ターンし強いゴブリンを1増やしてくれる王ゴブリン。

王ゴブリンは破壊クラッシュや、解呪ディスペル等のサポートも使える頼れる奧さん。

ゴブリンだけど。

そして、マナ分ゴブリンを召喚できる使い捨ての指

取り敢えず結婚指から召喚する。

王シュビラの結婚指、召喚」

薄い桜をしたシンプルな指が出現した。

これは指に嵌めておかないと効果ないとかあるのだろうか?

取り敢えず左手の中指に嵌めてみる。

すると指が勝手に指のサイズまでんだ。

「あ…… あれ? 外れないっ!?」

まぁいいか。

薄い桜っていうのが俺には似合わない気がするけど……

いざとなったら生贄に捧げてゴブリン召喚できるしね。

よし、初の6マナ召喚!

初のUR!

もし既に召喚されていたら召喚失敗するだろうけど、そのときはそのときだ。

「ゴブリンの王シュビラ、召喚!」

召喚直後。

を中心に旋風つむじかぜが発生し、その風に乗って大量のり輝く赤い粒子が舞い踴った。

その放流の一部が、目の前に人型を形取る。

日のり始めた森の中で起きるの放流は、背の高い木々を越えて空まで高く舞い上がり、周囲をそので淡く照らしている。

自分でも見惚れてしまうほどの幻想的な景に、終始言葉を失う。

やがての粒子は目の前の人型へと集束。

粒子が消えると、そこにはゴブリンのように尖った耳が特徴的なが立っていた。

「なぜ……」

そのは、高そうな白い絹を巻いている。

髪型はショートボブ風だが、左右に1束ずつ元までびている三つ編みがある。

はミルクココア

は白い。

耳以外は普通の人間と変わりないように見える。

は垂れ目気味にし下がっていて、尖った耳もよく見れば先がし垂れている。

的に可らしいという第一印象。

はゆっくりと目を開け、自己紹介を始めた。

「われの名はシュビラ。ゴブリンを統べる王シュビラである。そなたがわれの……」

シュビラは自己紹介の途中で急に言葉を止めた。

視線は俺の左手に。

釘付けだ。

(なんだ? あぁ…… 指か……)

次の瞬間、シュビラから途轍もないほど大きなの波が伝わってきた。

―――― 歓喜 ――――

それは長年待ち続けた人に出會えたような、切ない心にも似ただった。

マサトにそのような経験はなかったが、シュビラから流れてくるにより想いも正確に伝わったのだろう。

シュビラは目に涙を溢れさせながら、満面の笑み浮かべてこちらに抱き付いてきた。

「われはずっとそなたを待っておった…… ずっと待っておったのだ……」

「お、おう…… よしよし、いい子いい子、どうどう」

ぎこちない手付きで頭をでつつ、反対の手で背中をポンポンと叩いて落ち著かせようとする。

髪はさらさらでふわふわ。

しいい匂いがする。

って、これ本當にゴブリン?

聲も聲優さんみたいに凄く可いらしい聲だけど……

「すまぬ…… あまりの嬉しさについ取りしてしまった…… はぅっ」

俺から離れようとして失敗したのか、悩ましい聲を出して再び抱き著かれた。

もうこのまま次の召喚をしてしまおう。

俺は右手を前に出し、殘りの(赤×37)を全て使うイメージで召喚を行使した。

「ゴブリン呼びの指、召喚」

右手から赤白く発するの稲妻が発生し、手の平に出現した指へと吸い込まれていく。

右手を強く引っ張られる力をじたため、左手でシュビラを強く抱えながら全に力をれて踏ん張った。

シュビラから悶えそうな聲がれた気がしたが、今はそれどころじゃない。

右手から発生するいくつもの白い稲妻。

その稲妻が発生する度に、痺れるような痛みが右手に走る。

(これ…… まずいんじゃね……?)

シュビラの召喚は6マナ。

6マナであれだけ大きなマナの放流があったのだ。

その6倍となるとどうなってしまうのか、代償を考えておくべきだった。

白い稲妻が手から腕に広がり、ついには右腕の皮に裂傷が発生し始めた。

それでも白い稲妻と化したマナの放流は止まらない。

異変に気付いたシュビラが俺の右手を見ると、慌てて何かを訴えかけた。

「……するのだ! 早く! 手を閉じて……を集束……のだ!」

右手を中心に発生する暴風と稲妻の暴音により、上手く聲が聞き取れないが……

(手を閉じて、集束させる?)

俺はすかさず手を閉じようと必死に力を込めた。

手の平から噴き出す風により、中々手を閉じられない。

「うぉおおおお!!」

なんとか手を閉じることに功すると、マナの放流も止まった。

右腕には、裂傷やら火傷やら、とにかく酷いことになっている。

紋章Lv6

ライフ 35/40

攻撃力 30

力 4

マナ : なし

加護:マナ喰らいの紋章「心臓」の加護

裝備:心繋きずなの寶剣 +26/+0

補正:自の初期ライフ2倍

+1/+1の修整

召喚マナ限界突破7

*火傷Lv1

ライフが更に3も減っていた……

(な、何これ、ちょー痛いんですけど。いやいやマジで痛ぇ!? うおぉお!? 段々痛みが増してくるやばいヤバイやばい!?)

俺が痛みに耐え兼ねて慌ててレッドポーションを1本腕に振りかけると、みるみる腕の傷が塞がっていき、痛みも完全にひいた。

紋章Lv6

ライフ 36/40

攻撃力 30

力 4

マナ : なし

加護:マナ喰らいの紋章「心臓」の加護

裝備:心繋きずなの寶剣 +26/+0

補正:自の初期ライフ2倍

+1/+1の修整

召喚マナ限界突破7

しかし、ライフ回復は1だけだった。

いや、火傷Lv1も消えてる。

どういうことだろうか……

は何度も癒せても、魂は別とかそういうのだろうか……

手の平には緑の指がしっかりと現化されている。

召喚自功したようだ。

「そなた、あまり無茶をするな。出會ってすぐお別れは嫌だぞ?」

下を向くと、が頬を上気させながら上目遣いでこちらを見ていた。

正直凄く可い。

ロリコン趣味はないんだが凄く可い。

(これがURユニークレアの力なのか…… 恐るべし……)

俺はレイア捜索のため、ゴブリン呼びの指を生贄に捧げてゴブリン召喚を行った。

を強く握り、念じる。

すると指が手の平で弾け、手からの粒子が溢れ出した。

の粒子は周囲に散らばり、37のゴブリンへと姿を変える。

ゴブリン 2/2(ゴブリン持続強化+1/+1)×37

「おお! さすがはわれの旦那さまだ!」

「旦那さま……? まぁいいか」

ゴブリン達にはレイアの捜索を命じた。

シュビラは相変わらず俺に抱き付いている。

「レイアが見つかったらシュビラにはゴブリン達と共にネスの里へ行ってもらうぞ」

「嫌だ」

「……え?」

シュビラの思わぬ返答に思考が止まる。

(召喚者の命令って絶対じゃ……ないの?

それともシュビラがURユニークレアだからとか?)

「われはそなたから離れとうない」

シュビラら俺の腰に細くて小さな腕を一杯回しながら、俯き加減に呟いた。

シュビラを一緒に連れていく?

いやいや、街の中で毎日ゴブリンを召喚されたらまずいでしょ。

レイアの話を聞く限りだとゴブリンと人間の共存はありえないみたいだし…

街の狀況が分からないのに、悪目立ちするのは危険過ぎる。

「シュビラには、俺の帰る場所を守っていてほしいんだけど、本當に嫌?」

「そなたの帰る場所……? そうか!わかったぞ! われとそなたとのの巣だな!? そういうことは早く申せ! うむ! われに全て任すのだ! 立派なの王國を作ってみせよう!」

なんだかちょいちょい解釈が間違ってる気がするんだが……

今まで召喚したゴブリンとは阿吽の呼吸で意思疎通できたんだけど、シュビラとは意思疎通できてない?

できてるよね?

「ネスの里の場所は分かる?」

「わかるぞ! そなたの能力の影響か、他のゴブリンとも繋がりをじておる。安心してわれに任せよ!」

「わ、わかった。任せるよ」

程なくして、レイアがゴブリンに擔がれてきた。

腕や足、出した腹部に酷い火傷や重度の水ぶくれが見える。

「レイア!?」

ゴブリンが、そっとレイアを地面に寢かせる。

急いで駆け寄ると、レイアは朦朧とした表でぼそっと何かを呟いた。

「……無事、か……良かった」

レイアは俺を追って、火傷蜂ヤケドバチのいる場所へ踏み込んでしまったのだろう。

失敗した。

(もうしレイアのこと、気にかけておけばよかった……)

いや、今さら悔やんでも仕方がない。

すかさずレッドポーションを1本取り出し、レイアに中を全て振りかけた。

すると見る見るうちに火傷や水ぶくれが引いていき、綺麗なに戻る。

元通りになったことにホッとしていると、シュビラが近付いてきた。

「この者へのそなたの想いがし流れてきたぞ? 妾にしては隨分とれ込んでいるようではないか」

「えっ!? そんな勝手に心の中覗けるの!?」

「覗いたのではない。流れ込んできたのだ。われとそなたは契約に基づいて繋がっているからなっ! 切っても切れない関係という奴だ!」

シュビラは、何かを自慢するように腰に手を當ててを反らしている。

アニメ聲とその可らしい様子が妙にハマっていて、なんとも気恥ずかしい。

「シュビラからは俺にが流れてこないけど?」

「見たいと思えば、わらわの気持ちもそなたには覗けよう。やり方はしらないがな!」

最後にえっへん!とでも言いそうなじで言い切られた。

結局は命令を念じるのと同じで、伝えたい、知りたいという気持ちがトリガーとなっているのだろうか。

レイアが目を覚ますまでの間、ゴブリン達には巖熊ロックベアと火傷蜂ヤケドバチで運びきれなかった分の剝ぎ取りや解をやらせた。

捨て置くよりかは、ネスの里へ持ち帰ってもらった方が役に立つだろう。

火葬の火種を拾ってきた薪へと移し、野営の準備を始める。

今回はゴブリン含め総勢40人となるため、木の上で仮眠ができない代わりに、見張りを絶えず立てることで野宿ができる。

巖熊ロックベアのの焼ける臭いが周囲を漂い、夜空には星が見える。

やっと一息吐ける。

レイアが目を覚まし、俺たちもこんがり焼けた熊を食べ始める。

俺にべったりのシュビラ。

それを見て言葉を失うレイア。

暫くレイアとシュビラの押し問答が繰り広げられ、結局一息吐けるようになったのは、それからまた數時間後だった。

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