《【書籍化】マジックイーター 〜ゴブリンデッキから始まる異世界冒険〜》39 -「熊と蟲と再會と」

無事に登録を済ませた俺とベルは、クエストボードにて依頼容を確認していた。

ワイバーン、剣牙獣、巖陸亀の素材を要求してる依頼、依頼……

「マサトさん、見つかりませんね……」

「んだねぇ……」

レイアからは、恐らくないと思うが念のためということだったので、期待はしてなかった。

ガルドラの森深くまでらないと出現しないモンスターの素材回収依頼は、どうやら出しても誰もけないため、依頼にすらあがらないという話は本當だったようだ。

依頼を探していると、ギルドへってきた男に聲を掛けられた。

「良かった! まだいた! これでいなかったら姐さんに絞め落とされるところだったぜ……」

フェイスは走ってきたのか、息を荒くしている。

その後ろから頬を赤く染めたボブカットのの子が、杖を付近で強く握りながらこちらへ駆け寄ってきた。

「マサトさんっ!! お、お久しぶりぶりです! またお會いできて、その、う、嬉しいです!」

パンの様子に、ギャラリーが再び騒ぎ始める。

「なんだあいつ…… 新人ルーキーのくせにパンちゃんにも手を出してたのか?」

「おいおい、どうやったら2人のとあんな関係になれんだよ! 誰か教えてくれよ!」

「世の中不公平だ……」

「あれは明らかにする乙の目だろ…… マジかよ……」

「……殺す」

悪目立ちし過ぎる!

そしてさっきから嫉妬の殺意を向けてくる奴が怖い。

「パンちゃんお久しぶり。あっと、フェイスさん、ここだと目立つからどっか個室とかで話さないですかね?」

「おっと、そうだな。確かにこれだと目立つか。じゃあ、ちょいと付行ってくるから待っててな〜」

フェイスさんが付に向かった後も、パンちゃんは常にこちらを見続けていた。

その景に見兼ねたベルが口を挾む。

「マサトさん?」

「ああ、こちらパンちゃん。熊の狩人ベアハンターのメンバーだよ」

ベルは笑顔でパンへと向いた。

「ベルです。マサトさんとは一緒に旅をしています。宜しくお願いしますね」

「え! た、旅!? あ、そ、その、こちらこそよろしくお願いします……」

終始にこやかなベルに対し、パンはベルの挨拶をけて俯いてしまった。

心なしか落ち込んでいるように見える。

そういえばベル、俺と一緒に旅してるって言ってなかった?

もしかしてフェイスへ紹介したときの設定をそのまま話したのか。

自分で言うのと他人に言われるのだとけ取り方が変わるね……

するとフェイスが丁度良いタイミングで付から戻ってきた。

「2階の個室借りたぜ〜。おっと、姐さん達も著いたようだな」

2mを超える巨のワーグさんやマーレさんの登場に、再びギャラリーが騒ぎ始める。

そしてその後から三葉蟲トリロバイトのメンバーが姿を現した。

「あれ、黒熊とじゃじゃ熊じゃねぇか? 噂通りデケェな……」

「茶熊がいないってことは、死んだ噂は本當だったのか?」

「なんでも巖熊ロックベアの希種とやり合ったんだろ? B+の希種だからAランクか…… いやいやAランク相手に全滅しなかっただけ奇跡だろ」

「俺は火傷蜂ヤケドバチの群れとも同時にやり合って勝ったって聞いたぜ?」

「おいおい、そりゃいくらなんでも噓だろ…… でも三葉蟲トリロバイトが一緒ってことは事実なのか?」

「おい見ろよ! 三葉蟲トリロバイトの人になったっていう噂は本當だぞ!」

「ばか、くそっお前の頭邪魔だ!俺にも見せろ!」

「ちっ、下向いてて見えねぇな」

するとギャラリーに向けてマーレさんが吠えた。

「ぎゃあぎゃあうるさいねっ! 噂すんならあたいらに聞こえないように小聲でしなっ! それと、あたいをじゃじゃ熊って呼んだ奴は後で絞め殺すから覚えておきな!!」

マーレさんの一喝に肩を竦めて靜かになるギャラリー達。

マーレさんは相変わらず元気なようでし安心した。

◇◇◇

ギルドの2階は、冒険者へ有料で貸し出している個室と臨時で集會を行うための大部屋があり、ギルドの3階がギルド職員用の部屋が並ぶ間取りになっている。

俺たちは2階にある個室へ向かった。

部屋には中央に大きなテーブルがあり、壁際にはソファーが置いてあるだけの質素なレイアウトになっている。

それぞれが席に著くと、ワーグさんが話し始めた。

「うむ。では、改めて儂からマサト殿に禮を言おう。助けてくれたことには本當に謝しとる。お主の助けがなければ儂らは全員あの場で死んでいた」

「いえいえ、お気になさらずに」

ワーグさんが頭を下げると、それに倣ってベル以外の全員が頭を下げた。

「三葉蟲トリロバイトを代表して、オレからも禮を言う。本當に助かった!! いや、本當にまじで!! ジディとか本気で死んだと思ったんだ! でも助かった! それだけじゃなくて生前よりも綺麗にしてもらって、本當になんてお禮を言っていいのやら……」

「ちょっとセファロ! 余計なこと言わないで!」

「最初はしっかりとリーダーっぽい雰囲気で話し始めたのに、最後の一言で臺無しでござる」

三葉蟲トリロバイトの面々も元気そうで何よりだ。

セファロ達が話し終わると、ワーグさんは脇から麻布の袋を取り出し、テーブルの上へドンと置いた。

袋の中でガチャッと金屬のぶつかる音が聞こえる。

「うむ。これは、お主に討伐してもらった巖熊ロックベアと火傷蜂ヤケドバチの依頼報酬と素材売卻額だ。全額で約300萬Gはある。け取ってくれ。ただ、依頼達ポイントだけは譲渡できないのでな、すまんがこれだけは儂らが貰ったぞ」

300萬G!

一気に所持金がインフレした!

でも命を賭けて300萬Gか……

円に見立てると3000萬円くらい?

それを人數で割ると數百萬円……

素材を全て持ち帰れたら、きっとその倍以上はいったんだろうけど、あの危険度でこの報酬はないなぁ。

安全に狩れるならかなりの儲けになるけど。

まぁ、だから冒険者は無理をしないのか……

でもこの金を貰ってもいいんだろうか。

うーん、金は多いことに越したことはないけどなぁ。

「ありがとうございます。じゃあそれは約束通り全額いただきますね」

俺の言葉にワーグさんが頷く。

ただ、俺はこのまま素直にけ取るつもりはなかった。

「後はレッドポーション分の返済をどうするかですかね」

俺の一言で、ベル以外の面々の顔が凍り付いた。

瞬時に直から復帰したワーグさんが答える。

「う、うむ。その話じゃが、お主が提供してくれたレッドポーションはのぅ…… 値段がつけられん程高価なもので、想定でも1本5000萬Gはいくだろうと見ておる」

ワーグさんはそこで一旦話を區切り、他のメンバーの顔を窺った上で再び話し始めた。

他の面々はワーグさんのアイコンタクトをけて頷いてたから、きっと事前に相談していた容だろう。

「儂らにその全てを払うのは不可能なんじゃ。だから儂ら全員、お主の奴隷となり終雇用契約とすることで代わりとしてくれんかの?」

えっ!?

まさかの奴隷!?

それも全員!?

確かにリアルで5億円返せと言われたら自己破産するしかないけど……

そうか、この世界の自己破産は奴隷としてを売ることに繋がるのか……

俺が驚きのあまり返答に困っていると、マーレさんが口を開いた。

「あたいら全員で決めたことだ。あんたが気にすることじゃないよ。いいじゃないか! 奴隷ってことはあたいやパンのを好きに扱っていいんだよ? これほど幸運なことはそうそうないだろ?」

なんて自信だ!

さすがマーレさん。

自分を好きに扱えること以上の幸運はそうそう訪れないと自分を売り込み始めた。

パンちゃんも顔を真っ赤にしながらこちらを見て頷いている。

パンちゃんは、いいのかそれで……

本格的にこの世界のの思考が分からなくなってきた……

「分かりました。でも奴隷として契約はできません」

「どうしてだい!?」

奴隷提案を拒否すると、マーレさんが機を叩いて切り返してきた。

この人はそんなに奴隷になりたいのか……

「悪目立ちするからです。ペーペーの冒険者がBランクとCランクのパーティ全員を奴隷にするとか、どんな悪黨ですか……」

「そ、そんなの言わせたい奴に言わせておけばいいじゃないのさ」

「そういう訳にもいかないのでお斷りします」

きっぱりと斷った。

その返答に驚く男陣と、なぜか落ち込んでいるパンちゃん。

マーレさんは納得がいってないようだ。

ジティさんは口をポカンと開けている。

「じゃあ死ぬ気で働いて返済しろっていうのかい?」

「返済もしなくていいですよ」

これには流石に驚きを大きくする一同。

「お金も…… いらないって言うのかい?」

「ええ、いりません。ただし……」

「ただし?」

「俺やここにいるベル、それに俺の仲間が困っていたとき、どんな狀況でも無條件で手を貸してください」

この発言には、隣にいたベルもびっくりしている。

「そ、そんなことでいいのかい?」

「そんなことも何も重要ですよ? お金では買えないですから。因みにその仲間には皆さん自も含めてくださいね」

「あんたって奴は…… どこまでお人好しなんだい……」

流石のマーレさんも呆れたみたいだ。

パンちゃんは目を潤ませている。

ジティさんも心なしか頬がほんのり赤い。

ワーグさんは髭を弄りながら苦笑いを浮かべ、フェイスさんは帽子のつばを下げながら口元に笑みを浮かべている。

因みにセファロさんとラックスさんは泣きながら抱き合ってる。

「と、言うことでこちらの報酬は100萬Gだけ貰うので、後は失った裝備の補填とか修理にあててください。配分はワーグさんにお任せします」

「うむ。お主がそう決めたのであれば儂らは従おう。じゃが、本當に良いのか?」

「男に二言はありません」

これで丸く収まったかと思った。

が、次のフェイスの一言で狀況が変わった。

「おれっちから提案があるんだが、それならいっそのこと、マサトっちのクラン作ったらいいんじゃないか?」

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