《【書籍化】マジックイーター 〜ゴブリンデッキから始まる異世界冒険〜》40 -「クラン結」
ギルドには、パーティ同様、同じ目的を持つ者を一つの集団として登録するクラン制度というものがある。
ギルドに登録してあるパーティ2つ以上で結でき、個人やパーティ同様、クランにもランクが存在している。
ランクはFから始まり、依頼達等での貢獻度でランクアップすることができる。
そしてランクの高いクランはギルドから様々な特典をけれるだけでなく、地域によっては國からも優遇されるようになるため、高ランクのクラン目指して切磋琢磨する冒険者も多い。
「フェイス、あんた稀にだけど本當にいい事言うじゃないか」
マーレさんが賛同する。
(まぁクランならいっか……)
結局、俺のクランを作ると言うことで全員納得してくれた。
どうやらギルドの個室(有料)を借りると、個室で手続きができるオプションがあるらしい。
さっそくギルド職員を呼び、クラン登録手続きを進めることになった。
個室で手続きできるならギャラリーの目に曬されなくて済むから助かる。
暫くして個室にやってきたギルド職員は、先ほどのジト目の子だった。
この時は、「この子に縁があるのかな?」なんて勘違いもしたりしたのだが、実はフェイスさんが気を利かせてジト目の子を呼んでくれていたと、後から知って複雑な気持ちになったりしたが、こういう面では頼りになるなぁとフェイスさんへの認識を改めたりもした。
「失禮します。クラン登録の手続きをご希で宜しかったですか?」
「うむ。頼む」
ワーグさんが代表して答える。
ジト目の子は相変わらず表を変えずに淡々と話し始めた。
「はい、承知しました。ではクランリーダーはワーグ様で宜しいですか?」
「うむ? いや、リーダーはマサトで頼む」
「?」
ワーグさんが俺を指すも、ジト目の子は理解できなかったようだ。
反応がない。
「さっき冒険者登録したばかりの新人ルーキーですが、訳あって俺がクランリーダーになることになりました。何か問題ってあったりしますかね?」
俺の言葉に、一瞬だけジト目の子の目がし開かれた。
5割開きが7割開きになる程度の微々たるリアクションだったが。
「いいえ、問題はありません。では、この用紙に記を。登録料は2萬Gになります」
お高い!
でもまぁクラン組むならそれくらい稼げよということなんだろう。
先ほどワーグさんに貰った袋から、金貨2枚を取り出してジト目の子に渡す。
ついでにさらっと用紙への記も済ませた。
「はい、丁度2萬Gいただきました。クラン名は『竜語りドラゴンスピーカー』。リーダーはマサト様。加パーティは熊の狩人ベアハンターと三葉蟲トリロバイト。ソロ加としてベル様。以上でお間違えありませんか?」
クラン名:竜語り(ドラゴンスピーカー)
MEで自分が最も好きだった短編小説のタイトルをそのまま付けた。
ドラゴン使いが主人公の英雄譚だ。
するとマーレさんが腕を組みながら俺に話しかけてきた。
「なんだい、クランの名前、既に決めてあったのかい? もしやこうなることを予測してたんじゃないだろうね?」
「いえ、ただの思い付きですよ。好きな英雄譚の題名をそのまま付けました」
「英雄譚ねぇ~。いいじゃないかい。あたいは気にったよ」
マーレさんに続き、他メンバーも続いて賛同してくれた。
「わたしも素敵だと思います!」
「英雄譚を元にしたクラン名か~。おれっちはその英雄譚を知らないが、響きは悪くないと思うぜ?」
「うむ。儂もよい名だと思う」
するとセファロさんが……
「蟲語りインセクトスピーカーじゃダ…… いだだだだっ!? ジディやめてっ!? 痛いっ! 痛いよっ!? いつものツッコミの強さじゃないよぉっ!?」
「ダッメに決まってるでしょ!」
クラン名に蟲の名をれようとしてジディさんに耳を捻り上げられていた。
火傷蜂ヤケドバチに殺されそうになったのに、相変わらず蟲大好きなセファロさんには頭が下がる思いですよ。本當。
それぞれの會話が一息ついたタイミングで、再びジト目の子が説明を再開する。
「クラン専用の口座を無料で開設できますが、ご希されますか?」
「お、口座開設できるんですね。ではお願いします」
「はい、承りました。クランメンバーが依頼を達した場合、その依頼の一部をこの口座にれるよう設定もできますが、いかがしますか?」
「へぇー、そんな便利なこともできるんですね。でも今は不要なので、この198萬Gの貯金だけお願いします」
「はい、承りました。引き落とし可否に関してメンバー設定できますが、こちらはいかがしますか?」
「えっと…… ひとまず俺と、ワーグさんで。クランに関しての設定変更はワーグさんにも変えられるように権限付與お願いします」
「はい、承りました。クランについての細かい諸注意は、カウンター橫に手引書が置いてありますので、そちらをご確認ください。それでは、この度のクラン登録を、私、ノクト・アールが承りました。今後とも宜しくお願いいたします」
ノクトさんはそう口上を述べると、丁寧にお辭儀してから、退出していった。
最後の最後でほんのしだけ微笑んだ気がしたけど、営業スマイルだろうか。
かなり可かった。
と、再び扉が開き、ノクトさんがやってきた。
心なしか頬がほんのり赤い。
「……失禮します。お金を持っていくのを忘れてました……」
とてもミスするようには見えない毅然とした雰囲気があるのに、ドジっ子屬を見せるとか反則だと思う。
「……お預かりしたお金の計算に立會いを希しますか?」
「い、いえ、大丈夫です」
「はい、かしこまりました。では、失禮します」
お金を持って再び退出するノクトさん。
「おれっち、斷然セリスちゃん派なんだけど、今のはかなり効いたね…… お茶目過ぎるでしょ。あの顔でドジっ子とか」
フェイスの呟きに全員が頷く。
しの沈黙があった後、マーレさんが俺を見ながら口を開いた。
「それより、竜語りドラゴンスピーカーはどんなクランにしていきたいんだい? クラン作ったならクラン方針とかを決めておくれ」
「クラン方針かぁ…… うーん、困っている人がいたら迷わず手を差しべる、とか?」
俺の言葉に全員がなんとも言えない顔をする。
「そりゃあ、リーダーがそうしたいなら従うけど、ねぇ」
「あれ? なんか問題あるじ?」
「あたしはリーダーのそのお人好し過ぎるところ好きだよ? でもさすがに、いつか悪い奴に騙されて利用されるんじゃないかって心配になってきたさね」
(お、おおふ。言われて見れば確かにそう見えるかもしれない。でも特に方針ないしなぁ……)
すると、意外なところからフォローがる。
「おれっちは良いと思うぜ。巖熊ロックベアとの一戦で、ヒグ兄やラアナちゃんを失って初めて本気で実できたんだ。仲間を失いそうな奴や、仲間を失った奴らがどんな助けや救いを求めているのかってね。今までは理解したつもりになっていただけで、本當の気持ちなんてちっとも理解できてなかったんだよなぁ」
フェイスの突然の告白に、皆が暗い顔をした。
(表面上は何事もなく明るく振舞って見えたけど、そうだよなぁ…… 長年付き添った戦友が目の前で殺されたんだから、心穏やかじゃないよな…… なぜ守れなかったんだとか、ああすれば死なずに済んだんじゃとか、たられば考えるだろうし……)
「全く、今日のフェイスはどうしちゃったんだい? さっきから良いことしか言わないじゃないのさ」
「姐さん酷いな〜。おれっちも人並みに考えてんだぜ?」
「かっかっか! 大切な仲間は失ったけど、今いる大切な仲間がそれを糧に長できたなら、きっとヒグもラアナも笑ってくれてるよ!」
「うむ、儂らも立ち止まってはいられんな。ヒグやラアナのためにも」
「はい! わたしも困ってる人達のために頑張ります!」
「パン、本當かい〜? あんたはマサトのために、の間違いじゃないのかい?」
「ええっ!? ちょ、ちょっとマーレさん、マサトさんがいる前で何言ってるんですかぁ!?」
「かっかっか。でも、あの後街に戻ってきてから死にそうな顔をしていたパンに、しでも生きる活力が戻ってきたみたいで、あたしは嬉しいよ。放っておいたらどこかで自殺しちゃうんじゃないかとヒヤヒヤしてたんだよ?」
「マーレさん……」
「フェイスもパンも、ワーグとあたしにとっては自分の子供みたいなもんさね。ヒグとラアナのことは確かに殘念だったけど、リーダーに救われたあたし達にしかできないことを皆で頑張ろうじゃないのさ」
「はいっ!」「ああ!」「うむ!」
熊の狩人ベアハンターの面々がお互いの結束を固めると、マーレはセファロ達に話を振った。
「で、三葉蟲トリロバイトのあんたらはどうなのさ?」
「オレ達も特に異論はないけど…… 的にどうすりゃいいんだ?」
「蟲の事に関してしか取り柄がないでござるからなぁ……」
「もう2人とも!念のため補足しておくと、ちゃんと普通の依頼もできますからね?」
全員がマサトへ視線を向ける。
「蟲の知識が富なら、害蟲に困ってる人達の手助けとか、なんかありそうだよね」
「害蟲駆除か。なるほど」
「それならできそうでござるな」
「農家回って困ったことがないか聞いて回るのもいいかも」
「じゃあそんなじで。まぁ実際問題、誰をどう手助けするかの程度については裁量で構わないですよ。悩んだらワーグさんへ相談ってことで!」
「うむ、その辺は任されよう」
その後も、今後についての話し合いという名の雑談が続いたが、おでベルも他メンバーと普通に會話できるようになったのは大きいと思う。
メンバー達が雑談を楽しむ中、部屋の端のソファーが不自然に沈む。
だが、その小さな変化に気が付いた者は、最後まで誰もいなかった。
 
〈クラン報〉
クラン名:竜語りドラゴンスピーカー
ランク:F
資産:198萬G
構:
・リーダー
マサト、ランクF、Lv6
・メンバー
ワーグ、ランクB、Lv68
マーレ、ランクB、Lv67
セファロ、ランクB、Lv53
ラックス、ランクB、Lv51
フェイス、ランクC、Lv42
ジディ、ランクC、Lv35
パン、ランクD、Lv28
ベル、ランクF、Lv8
・加パーティ
熊の狩人ベアハンター、ランクB
三葉蟲トリロバイト、ランクC
クリフエッジシリーズ第三部:「砲艦戦隊出撃せよ」
第1回HJネット小説大賞1次通過、第2回モーニングスター大賞 1次社長賞受賞作品の続編‼️ 銀河系ペルセウス腕にあるアルビオン王國は宿敵ゾンファ共和國により謀略を仕掛けられた。 新任の中尉であったクリフォードは敵の謀略により孤立した戦闘指揮所で見事に指揮を執り、二倍近い戦力の敵艦隊を撃破する。 この功績により殊勲十字勲章を受勲し、僅か六ヶ月で大尉に昇進した。 公私ともに充実した毎日を過ごしていたが、彼の知らぬところで様々な陰謀、謀略が行われようとしていた…… 平穏な時を過ごし、彼は少佐に昇進後、初めての指揮艦を手に入れた。それは“浮き砲臺”と揶揄される砲艦レディバード125號だった…… ゾンファは自由星系國家連合のヤシマに侵攻を開始した。 アルビオン王國はゾンファの野望を打ち砕くべく、艦隊を進発させる。その中にレディバードの姿もあった。 アルビオンとゾンファは覇権を競うべく、激しい艦隊戦を繰り広げる…… 登場人物(年齢はSE4517年7月1日時點) ・クリフォード・C・コリングウッド少佐:砲艦レディバード125號の艦長、23歳 ・バートラム・オーウェル大尉:同副長、31歳 ・マリカ・ヒュアード中尉:同戦術士兼情報士、25歳 ・ラッセル・ダルトン機関少尉:同機関長、48歳 ・ハワード・リンドグレーン大將:第3艦隊司令官、50歳 ・エルマー・マイヤーズ中佐:第4砲艦戦隊司令、33歳 ・グレン・サクストン大將:キャメロット防衛艦隊司令長官、53歳 ・アデル・ハース中將:同総參謀長、46歳 ・ジークフリード・エルフィンストーン大將:第9艦隊司令官、51歳 ・ウーサー・ノースブルック伯爵:財務卿、50歳 ・ヴィヴィアン:クリフォードの妻、21歳 ・リチャード・ジョン・コリングウッド男爵:クリフォードの父、46歳 (ゾンファ共和國) ・マオ・チーガイ上將:ジュンツェン方面軍司令長官、52歳 ・ティン・ユアン上將:ヤシマ方面軍司令長官、53歳 ・ティエン・シャオクアン:國家統一黨書記長、49歳 ・フー・シャオガン上將:元ジュンツェン方面軍司令長官、58歳 ・ホアン・ゴングゥル上將:ヤシマ解放艦隊司令官、53歳 ・フェイ・ツーロン準將:ジュンツェン防衛艦隊分艦隊司令 45歳 (ヤシマ) ・カズタダ・キムラ:キョクジツグループ會長、58歳 ・タロウ・サイトウ少將:ヤシマ防衛艦隊第二艦隊副司令官、45歳
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