《引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―》俺たちなら三人でもモンスターたちをぶっ殺せる

「で……でけえな」

シュンは思わずひとりごちた。

森林を抜けた先でシュンたちを出迎えたのはーー巨大な魔王城。

が漆黒に塗りたくられており、どこか禍々しさをじる。いくつか設けられている小窓からは、真紅のれていた。

「お、おい、なんだよありゃ」

シュンはとある方向を指さした。

屋上から死が吊されているのである。しかも一人や二人だけにとどまらず、數え切れないほどに。

「あ、あれは、だな」

ディストは気まずそうに視線をそらした。

「魔王城に侵しようとした人間を、ああして見せしめているのさ。実際、かなりの抑止力になっててな」

「そ……そうか」

シュンはぼりぼりと後頭部を掻いた。

思った以上に、人間への嫌悪は高まっているようだ。

人間がモンスターを敵視するように、モンスターも人間を嫌っている。そのことを思い知らされた気がした。

魔王城の手前には荒野が広がっていた。

いくつも家屋が屹立しているのは、おそらく一般のモンスターが寢泊まりしているのだろうか。いわゆる城下町のようなものだろう。

「さて」

ディストは荒野にはらず、ふいに立ち止まった。

「いったんここでお別れだな。互いの作戦が実ることを祈ろう」

「……ああ」

シュンは小さく頷いてみせた。

作戦。

ディストが城下町からモンスターたちをし、敵兵が減ったところで、シュンとロニンが部から侵する。

いかにも単純な作戦だが、これが一番良いだろうとディストが提案したのである。

「いまや俺は《ロニン様のために狂った元幹部》にり下がってるからな。モンスターの目を引くにはちょうどよかろう」

「……ディスト」

ロニンが不安そうにディストを見上げる。

「死なないでね。また三人で、ご飯食べたいよ」

「……そうですな。ロニン様もご無事で」

そう言うなり、ディストはシュンに目を向けた。

「人間なぞにロニン様を任せるのは口惜しいが……もはや頼れるのはおまえしかいない。頼んだぞーーシュン」

「おうよ」

二人の男たちは拳をガツンとぶつけ合った。

ーーそして。

三人の《引きこもり軍団》による魔王城侵略は幕を切った。

「おおおおおおおおおおっ!」

ディストが噓の泣き顔をつくり、城下町に突進していく。

「よくも! よくも俺のロニン様をーーーーッ! 許せん! 貴様ら全員、ロニン様の名にかけて処罰してくれよう!」

その奇っ怪きわまる演技にーーいや、演技じゃないのかもしれないがーーモンスターたちの注目がいっせいに集まった。

「な、なんだ!?」

「ディスト元幹部だ! 差し押さえろ!」

「ロニン様の加護をけた俺を、簡単に倒せると思うなよぉぉぉぉ!」

それを遠くから見ていたシュンが、呆れ顔でつぶやく。

「……なんだあいつ、演技が板についてんな」

「う、うん」

ロニンも若干引いてしまったようである。

「ま、そのぶん時間も稼げるだろ。俺たちもいこうぜ」

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