《引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―》魔王
シュンとは違い、ロニンには常人ではありえない、《もうひとつの職業》を持っている。
すなわち、魔王。
不服ではあるが、前代魔王が習得していた魔法やスキルを、現在のロニンも使用することが出來る。
相手は強い。
使えるモノは使わなければ、自分が死ぬ……
ロニンは右手で剣を構えつつ、左手に自の魔力を集中させた。修行の果か、かつてないほどに魔力が供給されてくる。
そんなロニンを見て、熾天使ミュウは得心がいったようにニンマリと笑った。
「あーそっか。あんた、どっちかっていうと魔法タイプだもんね。それなら私も、本當の武を出してあげるよ」
本當の武……?
斧じゃないのか。
ロニンがそう思っている間にも、ミュウは斧を後方に投げ捨てた。次いで前方に右腕を突き出すと、彼の目前に白い靄もやが発生する。
異空間から武を出現させている――ロニンはそう直した。
果たして、次の瞬間には、ミュウの右手に極細の剣……通稱・細剣レイピアが握られていた。
余計な裝飾は一切ない。純白に彩られた、遠くからでは視認さえ難しい細剣。一撃のダメージは低いものの、その軽さゆえ、目にも止まらぬスピードで攻撃を叩き込むことができる。
「ま、斧でもいいんだけどね、いかんせんタイマンには使いづらいのよ」
言いながら、ミュウは剣を構え、軽いステップを取り始める。
そのきだけでロニンは察した。熾天使ミュウは強い。自分が思っていたよりずっと……
「さあ、魔王ちゃん……ついてきなさいよ!」
直後――ミュウが消えた。
いや違う。
高速で移しているのだ。
こちらの目視さえ追いつかないほどに。
速い……!
ロニンは揺を最小限に抑えつつも、左手に込めていた魔力を解放した。
炎の攻撃魔法。インフェルノ。
絢爛けんらんな神殿を、魔王の業火が覆い盡くす。そこかしこで大発が発生し、使用者以外に強烈なダメージを與える。
さきほどまで輝かしい彩を放っていたシャンデリアは一瞬のうちに溶け、室は真っ赤に染め上げられた。壁面にかけられていた絵畫も、跡形もなく消失する。
「あち! あちちちちち!」
さすがに耐えきれなくなったのだろう。熾天使ミュウのきが鈍った。
――いまだ!
ロニンは猛然と熾天使へ駆け寄った。
そのまま右手の剣を橫一文字に斬り払う。
が、遅かった。
ミュウも負けじとレイピアを突き出し、ロニンの剣は阻まれた。耳をつんざく金屬音が反響し、炎のなかに消える。
互いに剣を押し合う狀況下、ミュウはあろうことか、口笛を鳴らした。
「ひゃっほう! いいね! これこそ《殺し合い》の醍醐味だよ!」
「だから言ってるでしょ……殺し合いなんてやんないよ!」
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