《進化上等~最強になってクラスの奴らを見返してやります!~》第三十二話 宿屋が見つからないよ!
依頼をけた俺たちは、一旦宿を取ることにした。
なんでも出発するのは明日だそうで、明日に顔合わせとミーティングを済ませて出発するらしい。
効率が悪いと言えばそうなのだが、こればかりはどうしようもない。
そんなわけで、今日の宿を探しているのだが―――――
「びっくりするくらいどこも空いてないな」
「どこも大繁盛してた」
そう、どの宿も部屋が空いていないのである。
もちろんこれほどの規模の街なのでこういったこともあるとは理解していたし、空いていないなら空いていないで、言い方は悪いがみすぼらしい宿でも別に構わないのだ。
だが、それでも見つからない。
大通りの場所しか見ていなから何とも言えないが、この狀態だとどこも空いていないんじゃないか?
「もしかしたら裏通りとかにもあるかも」
リーナがそういうので、裏通りも見ることにする。
裏通りは表通りと違い、酷く閑散としたものだった。
こういったところにお店を構えても客を捕まえたりできるのだろうか。
そんなくだらないことを考えながらリーナの歩幅に合わせてゆっくりと歩いていく。
今更だが、リーナは結構歩くのが遅い。
走るのはかなり速いのだが、如何せん長が低いせいで歩幅がどうしても短くなってしまう。
これを本人に言ったら無言で毆られた。あの時が今まで生きてきた中で一番痛い一撃だった気がする。
「? どうしたの?」
ジッと見られていたのに気が付いたのだろう、こちらを首をかしげながらこちらを見る。
「いや、リーナは可いなぁ~って」
「~~~~!/////」
リーナが顔を赤らめて俯いた。
あまりこういったことを言わないため、リーナもそう言われることに慣れていない。
もちろん可いとからしいとかいうは持っているが、それを素直に言えるかと言われれば無理としか言いようがない。
二人だけの空間なら言えるのだが、周りに人がいる狀態でイチャイチャするのは流石に無理である。
こうしてイチャイチャ(周りから見たら)しながら、裏通りを見て回る。
そして裏通りを一周して宿を探すのを諦めかけたそのとき、ふと目の端にINNの文字が見えた。
…………もうここの宿も空いてなかったら野宿するしかないな。
覚悟をきめて俺はその宿の扉を開いた。
チリーン、という鈴の音とともに、パタパタと奧の部屋から誰かが走ってくる音が聞こえた。
「い、いらっしゃいませ! 鈴の音亭へようこそ!」
俺たちを出迎えたのは、リーナと同じくらいの長の小さなの子だった。
リーナも驚いている。
「お食事ですか? それとも泊まりですか?」
「あ、ああ。泊まりだ。一泊だけな」
ふむ、とは考え込むような作をした後、後ろの引き戸から神のようなものを引き出した。
「はい。一泊するだけなら銀貨2枚。朝晩の食事つきなら銀貨3枚です」
食事込みで銀貨3枚か……隨分と安いな。もうし高めだと思ったのだが。
そう思っていると、奧の部屋から人が來る気配がした。
「ゴホッゴホッ! メリル。お客さんかい?」
「おばあちゃん! まだ調が悪いんだから寢てなきゃダメじゃない!」
はそう言いながら老婆を介抱する。
なるほど、家族で切り盛りしているのか。
「お客様が來たんだ。お出迎えしないわけにはいかんじゃろう?」
そこで老婆がこちらを見た。
「よくいらっしゃった、お客さん。よくこの店を見つけられたね」
「ああ、どこの宿もを空いてなくてな。探し回った末に見つけたのがこの宿だったんだ」
俺の言葉に老婆はにっこりとほほ笑むと「そうかいそうかい」といいながら奧の引き戸から鍵を取り出した。
「これが部屋の鍵だよ。一番大きい部屋を選んでおいたからね」
「いいのか?」
「かまわないよ。どうせだれも使っていないからね」
そういうことなら有難く使わせてもらおう。
「夕食は19時くらいに來てくれたら用意できるからの」
作っているのは息子じゃがな、と老婆は笑いながら言った。
二階の部屋に移し、リーナと向かい合う。
「ここの宿、どう思う」
リーナがそう切り出した。
「どう思うって、なにがだ?」
「異常な魔力、じない?」
俺はリーナの言葉にしだけ目を細める。
「確かに普通の魔力とは違うが……なにかじたのか?」」
「たぶんだけど……私と同類の人がいる・・・・・・・・・」
俺はリーナの言葉にしばかり驚く。
リーナと同類。つまりそれは徳スキルを保有している者がこの宿にいるということである。
だが先ほどの老婆が言っていた通り、この部屋を除いたすべての客室には人の気配が一切ない。
つまり、この宿の従業員がスキル保有者ということになる。
そして肝心の保有者の候補だが、おそらく―――――
「九分九厘、あのだろうな」
「私も、そう思う」
メリルと呼ばれた、この宿で働く。
このまま放っておけば、遅かれ早かれ聖都から迎えが來るだろう。
そうなれば待っているのは、非常につらい毎日だろう。
ついさっき會ったばかりの子ではあるが、あのような年端も行かない子を戦爭に巻き込もうとするのは正直気分が悪い。
どうにかしてスキルを隠蔽するしかないな……
俺はのををどうやって助けるか考えながら、意識を手放した。
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