《銀狼転生記~助けたと異世界放浪~》024 ~俺、現実を見據えます~
翌日の朝、俺は自室で何をすることもなく窓から外を眺めていた。
今日も天気は雨。昨日から絶えず、降り続けている。
雨天時特有のどんよりとした空気が、ただでさえ暗くっぽい里の空気に拍車をかけていた。
「くぁああ……」
欠が出る。
昨夜は一睡も出來なかった。
人が亡くなったんだ。
ぐっすり眠れる方がどうかしてる。
今でも昨日の出來事が鮮明に脳裏に浮かぶ。
◆◆◆◆
スフィアの訃報ふほうを聞いた俺は、大急ぎで里の中心に向かった。
「長~!!」
「なぜ、逝ってしまわれたのですか!?」
「ウェーーーン!!」
そこには、雨の中寢臺の上に橫たわり、ピクリともかないスフィアとその周りに膝をついて泣き崩れているエルフ達の姿。
ガーさんとフィリは、寢臺にあがってスフィアのへ向かって必死に聲をかけていた。
「おい。起きろ!! スフィア!! 俺を置いて勝手にくたばってんじゃねえ!! 頼む! 起きてくれ!!!」
「嫌だ嫌だ!! 姉さん、目を開けて!! 私を一人にしないで!!」
悲鳴にも似たび聲。
普段を表に見せないフィリの泣き顔──先日俺に見せたとは違う悲痛な──が脳裏に焼き付く。
なんだ。これ?
夢か?
なんでこんな……2日前までスフィアは元気だった。
それも、夜這いと稱して俺の部屋に踏み込んでくるくらいに。
周りの、エルフ達の嗚咽やフィリ達の聲が遠くに聞こえる。
まるで実が無かった。
”人が死んだ”
その事実に。
混した。
雷に打たれた気分だった。
重苦しい空気が辺りに立ち込める。
その中で俺は、ただただ呆然と目の前景を目に寫し続けていた。
◆◆◆◆
「ロウ、いるか?」
廊下から聞こえたガーさんの聲で我に返る。
『おう、いるぞ』
ドア越しにガーさんへ【念話】を送る。
「っていいか?」
『ああ』
ドアを開けて部屋にってきたガーさんは、俺の傍まで歩いてくると、ベッドへ重く腰掛けた。
ガーさんと並んで窓を眺める構図が出來上がった。
「……」
『……』
お互い、何を話すこともなく降りしきる雨を見つめる。
『フィリは?どうしてる?』
「泣き疲れて寢ちまった。今は自室にいる」
外を眺めたまま答えるガーさん。
フィリは明け方まで泣いていたらしい。
それほど、家族スフィアの存在は大きかった。
その悲しみは俺やガーさんの比ではないだろう。
『そうか』
「ああ」
2度目の沈黙。
その沈黙を破ったのはガーさんだった。
「ロウは、昨日泣いたか?」
『いや、泣けなかった』
そう、悲しかったが涙は出なかった。
これが、獣ののせいなのかは分からないが。
「俺も、泣けなかった……」
天井を見上げるガーさん。
「石のじゃ、涙はでない。これほど、ガーゴイルのであることを恨む時はねえ。
生半可、不死に近い質と壽命がない俺はいつも取り殘される側。 周りの奴は俺を置いてけぼりにして先に逝っちまう。この數百年間。 ずっとそうだった」
『ガーさん……』
「っ!! やめだやめ。俺としたことがついっぽくなっちまった。忘れてくれ」
一転、努めて表を明るくするガーさん。
確かに、今日のガーさんはガーさんっぽくなかった。
この里の雰囲気がそうさせたのだろうか。
「なあ、ロウ。今日こうやって、お前の部屋にきたのは伝えたいことがあったからだ」
そう言ってガーさんは視線を俺へと據える。
本題はここからのようだ。
「お前、〖転移者〗何だろ?」
………え? ちょ!!
なんでばれた!! いやでも、鎌かけられただけかも!?
ここは一先ず……。
『急になんだよ? 〖転移者〗? なんだそれ?』
とぼけてみるが……。
「隠すことねえだろ。フィリにはいってたじゃねえか」
……あの時か。
聞いてたのかよ。
貍寢りこいてやがったのか。
誤魔化しはきかねえな。
『ちっ、ああそうだよ。〖転生者〗でもあるが、どちらにせよ俺はこの世界の住人じゃねえ。それがどうしたんだよ』
「いやな、ダチが〖転移者〗だったんだよ。昔な」
まじか!! 転移者の友達がいたのか!
エルビスに続いて二番目の〖転移者〗報だ。
『そのダチは、いつこっちに転移したか言ってたか?』
「朧気だが、確か今から200年前ぐらいだな」
ふむ、エルビスが転移してきた時期にかぶるかはわからんが、百年という単位は一致してるな。
「ともかく、そいつは極度のお人好しでな。助けれねえもん助けようとして、ありえもしねえ未來を夢想して、最後はあっけなく死んじまった」
そいつがガーさんのいう”周りの奴”の一人ってわけか。
『そいつはガーさんとどういう関係だったんだ?』
何気ない、興味本意の質問だった。
「ん~。……上司だな」
ふーん。
上司か……。 上司ねえ。
……上司?
ガーさんは元魔王軍幹部だ。
その上司ってことは、まさか。
『ガーさん、それって?』
おそるおそる聞いてみる。
「ああ、初代魔王だ」
やっぱりか!!
まさかの初代魔王の正が転移者かよ!?
てか、魔王なのにお人好しってなんだよ?
『まじか……』
「マジだが、伝えたい事はこれじゃない。この世界の先輩として、この世界で生き殘るすべを教えてやる」
『生き殘る?』
「ああ」
ガーさんは俺の目をみて力強く、それでいて厳かにいった。
「現実を見ろ。それと、余計な甘さは捨てろ」
ッ!!
「ここは、お前ら〖転移者〗が言う”ゲーム”の世界じゃねえ。死んじまったらそこで終わり。ゲームオーバーだ。
コンテニューなんかねえ。
そして、晝夜問わず危険の付きまとうこの世界で、余計な甘さは命取りだ。この世界で生きる覚悟を決めろ。お前はまだそこら辺がなっちゃいねえ」
ははっ。
図星か。
確かにその通りだ、俺がこの世界に來て躊躇わずにゴブリンを殺したり喰ったり出來た理由。
それは、ゲームの世界だと思い込んだから。
要するに現実逃避してたって訳だ。チートもらって調子に乗ってたのもあるな。
ゲームの中だから、殺して経験値に。
ゲームの中だから、食べてスキルに。
頭の中で、行原理に”ゲームの中だから”を無意識につけてたんだ。
この里を見てからある程度、現実を見たつもりだったがまだ甘かったみたいだな。
現に今、ゲームの中にはない。生としての、蘇生コンテニューのない”死”を目の當たりにして、混しちまってる。
ゲームの中だから人が死んで當たり前。
これだけは思ってはいけない。
それを逃げ道にすれば、俺は”人”として二度といられなくなる。
ゲームにかこつけて現実から目をそらすのは────────もう終わりだ。
「最後に、これは俺自深く後悔したことだが、守りたいもんがあるなら強くなれ。誰よりも。お前が何を目指して旅してるのかは知らないが、道中に必ずそういう出會いはある。その時、後悔しないようにしろよ」
『わかった。ガーさん、ありがとな』
本當に謝だ。
俺の”逃げ”をしっかり見抜いて正してくれた。
そんな人(魔だが)、中々出會えねえ。
伊達にババアと同じ目はしてねえな。
「まあ、お前は既に充分強えし、下手な心配は杞憂か。あいつのことも心置きなく任せられるぜ。だとすると、この広い家に一人で住まなきゃいけねえのか。寂しくなるなぁ」
何の話だよ? てか、使用人がいるだろ。
それより、気になることが1つ。
『魔王が死んだ理由ってなんなんだ? 俺も下手踏まねえように気をつけたいんだ』
言いずらそうに口をつぐむガーさん。
やっぱ言いにくいか。
と、思ったら俺から目を反らして言った。
「……ハニートラップだ」
…………魔王ーーーー!!
魔王は仕掛けでやられたらしい。
俺も肝に銘じておこう。
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