「はぁっ!!」

雲一つ無い青空の下、僕は掛け聲と供に、目の前の敵へ剣を振るう。

「グルゥ!!」

敵は僕の剣を跳躍して避ける。

避けられたか……だが！！

「凜！　頼んだ！」

「任せて！」

可憐な聲が響くと同時に、宙を飛ぶ人影。

「柊流剣　【両斷】！！」

「ギャン！」

瞬間、敵の上半と下半が泣き別れする。

人影──柊凜はそのまま華麗に地面に著地。

「これでいい？」

れた前髪をかき上げる。

相変わらず、敵には容赦ないなぁ。

「うん。上出來だよ」

取り合えず、近くに敵はいないみたいだ。

剣を鞘へ納めて、凜に歩み寄る。

「ヒイちゃ～ん！　ミッチー！」

と、聲を上げながらこちらへ歩み寄ってくる。

白詰さんだ。

「お疲れ様、白詰さん」

「お疲れ、菜。大活躍だったみたいね」

白詰さんは僕等の近くまで來ると、振り手振りを混ぜながら話し出す。

「うん！　重傷の人もいたから大変だったよ！　あとし到著が遅れてたら間に合わなかったかもね」

「そう、霞ヶ浦さんは？」

…そういえば見てないな、霞ヶ浦さん。

「サエリンなら、砦から援護撃してくれてたよ」

白詰さんが答える。

ああ、砦からか。

なるほどね。

あそこからなら安全に攻撃出來るわけか。

遠くに転がっている敵の死。

あれは彼がやってくれたのだろう。

「取り合えず、依頼は終了かな？」

僕は、後ろにそびえる石造りの大きな壁と砦を見上げる。

僕達が今居る場所は、王國と〈サハラの森〉との境界付近に築かれた砦、〈ドルム砦〉。

その役割は、定期的に森からやってくる魔や魔獣達の討伐をして、王國への侵を阻止すること。

簡単に言えば、間引きと防衛かな。

そして、僕等がここに居る理由は単純、冒険者ギルドから防衛員として派遣されたからである。

「初めての急依頼だったけど、上手く出來たみたいね」

「そうだね」

凜が言うとおり、今回の依頼は急の依頼。

容はズバリ、”スタンピード”からの砦の防衛。

スタンピードとは、大量の魔や魔獣達が何かしらの要因によって、波のように押し寄せる、僕等の世界で言う天災のような現象だ。

何とか、現場に駆けつけた僕らによって、砦の防衛は事なきを得たけどね。

でも、気になることがある。

「それにしても、今回のスタンピードはコボルトが多かったね」

「そうね。ゴブリンなんかも居たけど、確かにコボルトの量が多かったわね」

先程、柊が斬ったのもコボルトだった。

因みにコボルトとは、人間の子供のに犬の頭を乗せたような容姿の魔で、驚異度はDとそれほど高くはないが、素早いきと高い能力、集団で群れる習等から、単の驚異度Cの魔よりよっぽど危険な魔だ。

一一の力はゴブリンとさほど変わらないけどね。

『皆さん、大量の魔力反応を知しました。どうやら第二波がくるようです』

「「「っ！！」」」

霞ヶ浦さんからの【念話】だ。

やっぱり、さっきのは前哨戦。

本番はここからみたいだ。

そして、徐々に森の方から何かの疾走する音や獣の聲が聞こえてくる。

僕等は即座に戦闘準備を整える。

「皆、僕の考えが正しければ、來るよ！」

「何が──」

「ヒイちゃん！　あれ！」

數多の魔や魔獣達が森からなだれ込んでくる。

その中に、一際目立つ大きな影が。

「コボルトロード……」

凜が呟く。

コボルトロード。

コボルトの最終進化種であり、個數はない。

長ニｍ弱の強靱なと兇悪な爪と牙を持ち、巨に似合わない俊敏で獲に襲いかかる。

個によっては武を裝備する者もいると聞く。

現れたコボルトロードは、冒険者から奪ったであろう、大剣を裝備している。

さらに、指揮能力に長けているため、コボルトロードのいるコボルトの群れは驚異度が急激に上昇する。

だけど、僕等にとって、ロードはそこまでの驚異にはなり得ない。

突然でびっくりしたけどね。

僕はパーティーリーダーとして味方へ指示を出す。

「凜は周りの魔を殲滅して！　白詰さんも攻撃に回ってくれる？」

「まっかせなさい！」

「天哉はどうするの？」

凜が押し寄せてくる魔達を見據えながら言う。

勿論、

「僕は──ロードを叩く！！」

「了解！」

「頑張って！　ミッチー」

剣を片手に敵の群れへ突っ込む。

遅れて凜も群れへ突っ込む。

その速度は速い。

この人數で百近い魔達を相手にする。

無謀に見えるかもしれないけど…

僕等は王國を守るため、世界を救うために力をつけたんだ。

凜がコボルト達と接するのを橫目で確認する。

凜の職業は〈侍〉、與えられたユニークスキルは【神速】。

元々、柊流剣道場の次期師範の凜にとって、まさしくそのスキルは鬼に金棒だろう。

今も、刀を鞘へ納めたまま、魔達の中をかっ歩している凜。

近寄った魔達は例外なく真っ二つにされてる。

彼は文字通り、神・の如き速・さで剣劇を繰り広げて居るに過ぎない。

「柊流剣　──」

【神速】は発している間、意識した行全てに補正がかかる。

そんな狀態で剣を行えば…。

「【散華】！！」

神速で繰り出された一撃は、軽く音速を超える。

結果、放狀に広がる衝撃波。

コボルト達がまるで花のように宙を舞う。

凜は転移者の中でも規格外だと思うな。

「おっと─」

「グァ、バ！」

その時、橫から飛び掛かってきたコボルトを軽く剣を振って両斷する。

危ない、危ない。

「サラリー！　やっちゃって！」

──ゴブァアアアアン

突如、後方で炎の波が発生する。

「ギャァアアア！」

「グォオオオン！！」

巻き込まれた魔獣達が焼け死んでいく。

白詰さんの仕業だ。

さっき、彼が砦の人間を治癒したことから、回復師ヒーラーだと思うかもしれないが、正確には違う。

彼の職業は〔霊師〕だ。

ユニークスキル【四元素霊エレメントスピリッツ】を與えられおり、火、水、風、土の四の霊を自由に扱う事ができる。

MPの消費は0、周りに霊がいないと使用する事が出來ないっていう弱點があるけど、それ以外に制限らしい制限はない。

強いて言うなら、長い詠唱が必要らしいんだけど…。

「シル！　お願い！」

突如発生する竜巻。

彼の場合、これで発するんだから弱點とはいえないだろうね。

天才型なんだろうか。

『皆さん、長距離狙撃を開始します。備えてください』

霞ヶ浦さんの念話だ。

そう、霞ヶ浦さんの職業は〔狙撃手スナイパー〕　何だけど…これって狙撃手って呼んで良いのかな？

砦から放たれる數々の魔法、炎の玉や風の刃、線、氷の矢なんかが飛んでくる。

それらは、指向・・・をもって僕の進行上の魔を追尾・・し、撃破していく。

霞ヶ浦さんに與えられたユニークスキルは【追跡者プレデター】

効果は、彼の放つ魔法全てへの追尾補正。

うん。

狙撃手にあるまじき追尾だ。

敵からしたらたまったもんじゃないよね。

さらに、副産として敵の魔力をじとり、離れた場所からでも敵の接近や位置を把握出來る。

正に、名前の通り追跡者プレデターなスキルだ。

僕達パーティーの優秀な斥候兼後方支援役でもある。

そして、僕の職業は〔魔法戦士〕

與えられたユニークスキルは

「グルァアアアアア！！」

魔達の波をぬけ、ロードと対峙する。

「【限界突破】！！」

自の限界を超え、全ステータスを大膽に上げるスキル。

制限時間や回數制限と、々制限の多いスキルだけど、上手く使えば格上との勝負も可能になる。

「はあああああああ！！」

そして、奴の持つ大剣と僕の振るった剣が衝突するかと思われた剎那──

「っ!!」

の危険をじて剣を引き、バックステップを踏んでその場を離する。

そして、僕が今まで居たところに目を向けると、背中に三本の爪痕を付けたロードの巨が橫たわっている。

明らかに絶命してるね。

『皆さん、新手の登場です。驚異度は──』

森からなだれ込んでくる、波のように靜かで、それでいて氷のようにに突き刺さるような圧力。

そして、死の宣告が告げられる。

『──測定不能アンノウンです』

僕等の前に、巨大な銀狼・・が姿を現した。