《銀狼転生記~助けたと異世界放浪~》031 ~俺、森を征く~
里を出てから數日が経った。
自分で言うのも何だが、旅は結構順調だ。
格納庫に溜め込んだ、魔のおで食料には困らない。
最初、フィリは食べるのを渋ってたけどな。
背中にフィリを乗せて歩く森は、とても心地良い。
心なしか、フィリのテンションもいつもより高めだ。
「ロウ、北の森に來たの初めて?」
『おう、こんな気持ちいとこだったなんてな。気持ち良すぎて涙が出そうだぜ』
鬱蒼とした〈西の森〉は開幕ダッシュで二日かけて早々に突破。
そうしてようやく、俺達は〈北の森〉へと足を踏みれたのだ。
ガーさん報によると、この森は、東・西・南・北の中で一番大きな森らしい。
確かに、周りに生えている木からしても、高いし大きい。
多分、【三角跳び】で木を蹴って昇っていっても屆かねえと思う。
ただ、そのおで太のが最大限に降り注いでいる。
草木も活き活きとしている。
空気も澄んでる。
『空気がおいしいな』
「ロウ、凄い。空気の味がわかる?」
おっと、こっちの世界じゃ通じねえのか。
『ああ、悪い。深呼吸したくなる空気だな。って言いたかったんだよ』
後ろを向いてフィリに教えてやる。
『……なにやってんだ?』
俺の背中でフィリが口を大きく開けて何かを頬張る仕草をしている。
……なにそれ、可い。
「ん。ロウがおいしいって言うから」
そう言って、顔を赤くしてうずくまるフィリ。
しかし、アホは揺れまくってる。
……何この生き、可すぎだろ。
ああ、天使か……。
このアホ、謎だな。
どうやってかしてるんだ?
若干、フィリの髪のへ疑問を抱きながら、俺は森を進む。
俺はまだ、エルシアを倒した時可能になった進化をしていない。
するタイミングはあったんだが、フィリに進化の主旨を伝えた時に──。
”「私、もうすぐ進化出來る。そしたら、一緒にしたい」”
と言われてしまった。
俺としても、フィリの戦力上昇は必要だと思ってた。
別に進化を急いでるわけじゃねえしな。
経験値も、LVMAX超えても蓄積されるのは試練時にわかってる。
あと、上目遣いには勝てなかった。
フィリの現在のレベルは27だ。
後、最大までレベルを三つ上げればいい。
この森は、言わば魔獣の寶庫。
住みやすい環境は奴らにとっても同じ事だろう。
さっきも、コボルトっていう犬人間みたいな魔獣とか、お馴染みゴブリンズや、ファンタジーの定番の一つであるスライム君なんかに出會ったが、フィリのレベルの足しにはならなかった。
エルフの長は遅い。
それはレベルアップに必要な経験値の量が多い事を意味するみたいだ。
てか、俺の長速度が異常なんだと思う。
まあ、経験値補正かかってるしな。
せめて、フィリと同レベルの魔獣が出てきてくれたら良いんだけどな。
──盛大にフラグが立ったのだった。
◆◆◆◆
森を歩き始めて數時間。
フィリは今、俺の隣を歩いている。
乗り疲れたらしい。
車にずっと乗ってると、腰が痛くなったりをかしたりしたくなるが、多分それと同じだ。
俺達は拠點とする場所を探していた。
まず、確保すべきは水だな。
ここ最近、全く水を飲んでない。
さっき倒したスライム君で水分補給はできたが、良い想いはしなかった。
と言うことで、川を探しているんだが……。
『ねえな~。川』
「ん。私もこの森で川を見たことない」
マジかよ。
よく、それで生きていけるな、この森の魔獣達。
この世界で水は生存に必要とされねえのか?
その時、俺のずば抜けた聴覚が水の音を拾う。
『っ!! こっちか!!』
「ロ、ロウ!?」
即座に方向転換。
フィリを口に咥えて森を疾走する。
『フィリ! 水場だ! これでしっかりした水が飲める!!』
このとき、俺は捨て子時代に山で學んだ事を完全に失念していた。
──水場では、水を飲みにくる猛獣と遭遇し易いことを。
視界が開け、目の前に現れたのは湖に口をつけて水を飲む大きなクマだった。
──はい、フラグ回収~!
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