「ふぁ…あれ？　私…わわっ、おにーさん！?」

「んぅ…ぅう…ん……ロウ？」

「やっと起きたか……」

人間達が居なくなったので、取りあえず気絶させていた二人を起こした。

二人を巻いていたコートも、既ににつけている。

「へ、寢てたの？　私達。　なんで？　確か……フィリ君のレベルを上げてて、おにーさんが私達を抱えて茂みに飛び込んで、それから…う～んと…あれ？　なんだっけ？」

頭を抱えて、必死に思い出そうとするサハラ。

どうやら、一部記憶がとんでいるみたいだな。

「思い出せないのか？」

「うん。そーみたい」

サハラの隣で、寢起きなのが辛いのか、目をっているフィリを見る。

「フィリもか？」

「…ん」

やっぱり、昨日と同じだ。

昨夜、突然俺に襲いかかってきたフィリだったが、事態が落ち著いた時に、どうしてああなったのか聞いた時、フィリの反応は「ん?　何のこと？」だった。

最初は、暗に、「そんな事実は無い」と告げられているのかとも思ったが、違った。

どうやら、本當にその部分の記憶だけがとんでいるみたいだ。

今のところ、おかしくなっている間の記憶がとぶだけだから、たいした問題はないけど、原因がわかんねえのはちょっと怖いな。

悪化とかしねえか？

誰か、こういう事に詳しい奴に聞きてえが……。

「ロウ、あれ…ナニ？」

突然、フィリが俺の後ろを指差した。

なんだ？

恐る恐る振り向く。

「おわっ！！　なんじゃありゃ！?」

そこには、の皮で出來た袋が側からモゾモゾと、生きのように蠢く景が……。

「わあっ！！　なにあれ！?」

「あっ！　おいっ！！」

恐怖よりも好奇心が勝ったサハラは、止める間もなく謎の袋へと飛んでいく。

一人だけ…行かせるわけにはいかねえ。

十分に警戒しながら、フィリと一緒に袋の周りを飛び回っているサハラへ近づく。

「ねえねえ、おにーさん！　この袋、喋ってるよ！！」

興した様子で、目をキラキラと輝かせるサハラ。

お前は、シンバルを叩く猿の玩オモチャを見てはしゃぐ子供か。

見た目だけなら完全に子供だが。

それよりも──

「は？　聲が聞こえる？」

蠢く袋に、恐る恐る耳をそばだてる。

「タすケて～！　ダして～!!　コわいよ～！」

「なっ!!」

たどたどしい聲だったが、その聲音は紛れもないのそれだった。

恐怖心は一瞬で何処かに吹き飛び、代わりに助けてやらねばという使命に駆られる。

「今、出してやる!!」

袋の結び目を探し當て、固く結ばれた結び目を口で噛み切り、袋の口を開いた。

「大丈夫か!?」

「タスけて──あッ!!　デぐチッ！」

開いたと同時に、鉄の鎖でぐるぐる巻きになったが袋の中から飛び出してきた。

……もうしでぶつかるところだった。

アブねーー。

「でラレた!!　あ、でモ、うごケなイ。……グスッ」

「おい、大丈夫か？」

無事、革袋から出を果たした緋の髪のに聲をかける。

「ウん!!　あリガと！　おねーさン！！」

鎖で巻かれてけないをくねらせて、が近寄ってくる。

ついさっきまで、泣いていたとは思えないほどに、その顔は喜満面の笑みで満たされている。

フィリとは対照的に、表現がかな子だな。

というか…。

「おにーさんな？」

一杯笑みになるように努力して、いに訂正部分を教える。

橫で俺の顔を見ていたサハラが、「うわっ！　おにーさん、顔が恐いよ！?」と言っていたが、気にしない。

「ン？　わカった、おニーさん。─ネエ！！」

「うん。なんだ？」

しっかり訂正箇所を直してきたので、今度こそとびっきりの笑顔をに向ける。

「ホどいテ！！　うごけナい」

「お、おう」

ドヤ顔でけない宣言をするに苦笑しつつ、俺はに絡みついた鎖を解き始めた。

◆◆◆◆

ふう、何とか解けたか……。

思いの外、疲れたな。

主に神的に…。

途中までは、をグルグルに縛っていた鎖を解こうとしていた。

だが、鎖は側の方で複雑にに絡みついているようで…。

「ヒャぅ！」

「アひャァア！！」

「ソこハちが…うヨ！」

「アッ、ダメっ！」

俺が、鎖を引っ張るたびにのイケナイ所へれてしまい、その景を見ていた、サハラとフィリ、両名の視線がブリザード並みにに突き刺さり、とても痛かった。

の、やけに艶っぽい悲鳴と合わせて、ダブルパンチで痛かった。

もう、ゴリッゴリッにＳＵＮ値が削られた。

で、結局は、力任せに鎖をちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返して、ようやく彼を解放する事に功した。

で、解放したの姿を見て、心底驚いたことが一つ。

彼──緋の短髪は人間・・ではなかった。

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名前　ピア

種族　半面鳥ハーフ・ハーピー　Ｄ＋

LV：19/20

HP:200/240

MP:10/10

攻撃力：530

防力：20

抵抗力：40

俊敏：100

魔法力：10

運　：1000

：ユニークスキル：

【阿呆Ⅲ】【音癡Ⅵ】

：パッシブスキル：

【怪力】【翻訳】【神汚染無効】

：ノーマルスキル：

【飛行Ⅵ】【拳Ⅱ】【ハウリングⅡ】

：稱號：

〖阿呆の子〗〖半種族ハーフ〗〖魔〗

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まず始めに突っ込みたい。

ユニークスキル、悪口じゃね！?

稱號でも、アホって言われてるのに、なんて可哀想ななんだろう。

まあ、その代わりなのかはわからんが、運の値がヤバいことになっておられるので、気にする事はないか。

現在、サハラとじゃれついている(サハラは嫌がっているように見える)ハーピーの──ピアへと生暖かい目を向ける。

首から上とは、紛れもないのモノだが、なるほど、羽や、腳の鉤爪、尾などの鳥のような特徴が顕著に見てとれる。

髪と同じの羽は、見ていて、とても暖かい気持ちになる。

と同時に、し冷靜になった心に、沸々と怒りがこみ上げてくる。

さっきの五人組は、こんな気なを人攫い(魔攫い？)するようなクズだったか。

言葉わさなくて良かったかも知れねえな。

次、會ったらただじゃおかねえが。

特に、化け呼ばわりした金髪。

あいつだけは、絶対に殺す。

俺のガラスハートに傷を付けた罪─コホンッ…ピアを攫った罪は重い。

まあ、この場にいない相手に怒っても仕方がねえ。

取りあえず、ピアをどうするかだな。

「ピア!!」

「アハハハ！　マてまテぇい!!　──ン？　なーに？　おニーさん？」

丁度、空中鬼ごっこ的な遊びでサハラを追いかけ回していたピアへと聲をかける。

既に、力が限界になったサハラを、フィリが介抱しに向かうのを橫目で見ながら、たずねる。

「お前、親はいるのか？」

「うん!!　いル!!　パパとママ、とってもやさシい!!」

よし、親がいるなら、彼を家まで送り屆ければいいだろう。

多、予定が変更になるが許容範囲だ。

俺としては、ここでピアを家に送り屆ける方が優先度が高い。

「じゃあ、親さんの所まで送ってやるから、案してくれ!!」

「ホント！?　アりがト！　おにーサん！！」

ピアは、俺の傍まで飛んでくると、そこから俺のにダイブしてくる。

「ピア、おニーさン、ダイすキ！！」

そして、頬をり付けてきたので、頭をでてやる。

「よし、じゃあ家まで案してくれるか？」

「うン！　まかセて！！」

と、威勢良く返事をして飛び立つピア。

そこで、勝手に決めてしまったことを詫びようとフィリ達に目を向けるが、二人とも、和な顔で頷いてくれた。

こうして、俺達はピアの案で、もう一度森の奧へと引き返していった。

「ア、コっちだッた」

……若干の不安を抱いて。