《「最強」に育てられたせいで、勇者より強くなってしまいました。》第一章 第二十六話 解決策
近くにいた狼――つまり一番前に出ていた狼と目が合ったのが開戦の合図になったのは、きっとそいつがこの群れの頭だったからだろう。
見る限りでは他の狼よりも軀が大きいし、目つきも鋭い。
上手く言葉にできない、というか他の狼と見比べることすらままならない狀態ではあるのだが、一匹だけ格が違うというか、頭一つ抜きん出ているような気配をじる。
斷じて睨まれてビビったとか、そういうわけではない。
とは言え、狼の群れが結界に飛び込んでくるというのは中々に恐ろしいものである。
それにこの狼は相変わらず知能が高いようで、リーダー狼の合図によって真っ先に攻撃を仕掛けてきた一匹を除いて、俺の結界に阻まれはしても自滅するような奴はいなかった。
その最初の一匹にしても大したダメージにはなっておらず、すでに勢を立て直してこちらのことを窺っている。
「こんなの、守り切れるのか……?」
結界には自信を持っているし、簡単に壊れるとも思っていない。
だが、どうしても結界が破られるイメージが湧いてきてしまって、弱音を吐いてしまう。
これが上手くいかなかったら打つ手がないというのもプレッシャーだ。
何か、こちらから。
俺が仕掛けられることはないのか。
一匹ずつでも攻撃できる手段はないのか。
このまま防戦一方ではさすがにいつか結界が破られてしまうのではないかと思った俺は、何とかして狼を減らす手段を考え始める。
その間も狼たちは結界に正面衝突しないような角度で結界の耐久値を減らしてくるのだが、破られるとしても一晩越すくらいの余裕はあるだろう。
それでもまだ短く見積もっているから、場合によっては二晩くらいなら持ちそうな気もしてくる。
だが、いくら時間があると言っても攻撃手段をどうにかしないことには俺に勝ち目はない。
もしかしたら狼は結界を破ることができずにどこかへ去って行ってしまうかもしれないし、そうなればきっとトラウマが克服できて俺らの勝利となるのだが、ほぼ百パーセントの確率で攻撃し続けてくるだろう。
そうなると、こちらから狼を減らしでもしない限りは攻撃をけ続けるだけになってしまう。
要は負けが確定するのだ。
早急に対策をしなくてはならない。
これを解決するためにはモミジとユキに頼るのが手っ取り早いのだが、二人には手を出さないように言ってある。
どうしても、という時でないのにいきなりそれを撤回するのはさすがに如何なものかと思う。
俺自だけでできることに限定した的な案としては、結界を側からも貫通できる遠距離攻撃を繰り出すことが真っ先に挙げられるのだが、これにはし難點がある。
この手段を採用したのなら、俺は狼をじないように探知系の技を一切使わずに、目を閉じたまま狙いを定めなくてはいけなくなる。
そうしないとの制ができなくなるからだ。
狼はそれなりに集してき回っているため、何も考えずに攻撃を放ってもきっと當たるには當たるのだろう。
だが、これでは効率が悪すぎる。
初めの一発二発は運良く當たる可能もあるが。
それを見た狼がそのあとも易々と被弾してくれるはずがないのだ。
もしかしたら、一発も當たらないなんてことにもなりかねない。
この手段が使えないとなると、俺に殘されたのは広い範囲を攻撃するか、近接攻撃くらいになってしまう。
範囲攻撃は中々の妙案だと思うのだが、近接攻撃は論外だ。
となると、消去法で範囲攻撃ということになる。
森の中で使うのには気が引けるが、現段階でこれしか選択肢がないのだからこうするしかない。
そうと決まれば善は急げだ。
俺は結界の中でどかっと座り、瞑想するみたいに目を瞑った。
神を集中して荒れた心を落ち著かせる。
すると、モミジから念話が屆いた。
「スマル、狼に攻撃を仕掛けるのは良いんだけど、無理はしないでよ。今はよりも心を守らなくちゃいけないんだから」
「ああ、分かってる。ありがとう」
モミジからの言葉で、俺の心は段々と穏やかになっていく。
と同時に、新たな案を思い付いた。
自ら心を守れば良いのだ。
ヴォルムにしてもらっていたように、自分で自分の心にプロテクターを付けるのだ。
これはずっと付けっぱなしで維持する必要はあるが、今までのように自由にくことができるようになる。
俺は整ってきた心で、その準備を始める。
今から俺が使うのは呪。
思い込みを現実にするであり、神に影響を與える分野で強い力を発揮するだ。
だからその効果を最大限に発揮するためには強い自己暗示が必要になるのだが、前世の小さい頃から現実逃避と自己暗示のコンボは俺の十八番おはこだ。
落ち著いてきた今なら、恐ろしい狼でも難なく倒す自分が容易に想像できる。
狼は怖くない……。
あんなの俺の敵じゃない……。
俺になら、できる……。
「我が心、妖しき力に守られたるに、強かなり――」
呪文を唱え、呪力を込めて発する。
「――発はつ!」
狼を見ていないおかげで神が安定していたので、今回は力の制が上手くいった。
これで、俺は狼を見ても何とも思わなくなっているだろう。
見ても大丈夫なら、と俺はゆっくりと目を開きそれを視界の中に収める。
と同時に、思い切って結界も消してみる。
當然狼はダイレクトで俺に突っ込んでくるが、二匹、三匹、四匹と増えながら仕掛けられた攻撃を、俺は難なくかわす。
呪は大功。
狼からの攻撃を間近で見ても何とも思わないほどに強い守りになっている。
これで安心だと思ったが、そう思ったのは俺だけだったようで、木の上に待機していた二人が狼との間に割り込むように飛び込んできた。
「何やってるの!?」
「……正気……?」
二人は見惚れてしまうほどの鉄扇捌きで狼を撃退していく。
このまま放っておけば狼は全滅するだろう。
だがそれでは俺が戦ったことにならないため、狼を守るため・・・・・・に結界をもう一度張った。
無詠唱で発できる理防だけの簡易結界だ。
「二人とも、落ち著いて、もう大丈夫だから」
それでも追撃をしようとした二人に聲を掛けると、俺がトラウマを克服したということを理解したのか、二キョトンとした表ではあったが、すぐに攻撃を止めてくれた。
「もう、大丈夫なの?」
「……トラウマ、克服……?」
俺が狼を見ても怯んでいないのを見ているはずなのに、二人はまだ信じられないものを見ているような顔をしている。
やっぱり失禮な奴らだ。
「お前ら……ちょっとは俺のこと信じてくれてたんじゃなかったのかよ……。ま、良いけど。ユキ、これを好きなタイミングで破ってくれ」
なんだか無に腹が立ってきたので、俺がひと暴れすることにする。
その際に、呪がない狀態でも問題なく行できるか確かめるために、解呪の札をユキに渡した。
本來呪は者と被者以外が解呪しようとすると者などに比べて呪力を多く使うようになっているが、これを使うと誰であろうと呪力を使わずに解呪することが可能になる。
これで俺が知らない間に解呪されて、狼に怯まなければ実験は功ということだ。
さてさて、さっきまでは散々攻撃されたからね。
次は俺がやり返す番だ。
俺は狼に向かって歩き出し、
「攻撃されない限り、お前らは誰にも手を出すなよ」
戦いたがりの二人に釘を刺す。
さぁ、今度こそ躙タイムのスタートだ。
【書籍化】誰にも愛されないので床を磨いていたらそこが聖域化した令嬢の話【コミカライズ】
両親の愛も、侯爵家の娘としての立場も、神から與えられるスキルも、何も與えられなかったステラ。 ただひとつ、婚約者の存在を心の支えにして耐えていたけれど、ある日全てを持っている“準聖女”の妹に婚約者の心まで持っていかれてしまった。 私の存在は、誰も幸せにしない。 そう思って駆け込んだ修道院で掃除の楽しさに目覚め、埃を落とし、壁や床を磨いたりしていたらいつの間にか“浄化”のスキルを身に付けていた。
8 69キチかわいい猟奇的少女とダンジョンを攻略する日々
ある日、世界中の各所に突如として謎のダンジョンが出現した。 ダンジョンから次々と湧き出るモンスターを鎮圧するため、政府は犯罪者を刑務所の代わりにダンジョンへ放り込むことを決定する。 そんな非人道的な法律が制定されてから五年。とある事件から殺人の罪を負った平凡な高校生、日比野天地はダンジョンで一人の女の子と出會った。 とびきり頭のイカれた猟奇的かつ殘虐的なキチ少女、凩マユ。 成り行きにより二人でダンジョンを放浪することになった日比野は、徐々に彼女のキチかわいさに心惹かれて戀に落ち、暴走と迷走を繰り広げる。
8 180白色の狐〜とあるVRMMO最強プレイヤー〜
2025年、魔力の発見により、世界が変わった。 それから半世紀以上の時が流れて、2080年、魔力と科學の融合による新技術、VRMMOが開発された。 この小説は、そんなVRMMOの中の1つのゲーム、『アルカナマジックオンライン』の話である。
8 63俺の周りの女性は全員美少女なんだが必ず何か重大な欠點がある!
ありとあらゆることが平凡で、 運がとてつもなく悪い少年長谷川俊は、 自分に告白をしてきた幼馴染の告白を斷ったせいで無殘に殺されてしまう。 そんな俊のことを可哀そうに思った神々は、 俊を異世界へと転生させる。 また異世界に転生させた貰う時俊は、 神々からチートなステータスを授けてもらい、 異世界を楽しみつつ、 男の夢である美少女ハーレムを作ろうと決心するのだが、 そこには自分を無殘に殺した幼馴染がいて......
8 144田中と山田
田中と山田はいつも仲良し。そんな2人のハートフルボッコな日常コメディーちょっとだけラブもあるよ❤️ 會話文しかないめちゃくちゃ短いS S S小説だから期待とかは捨ててね
8 54格闘チャンプの異世界無雙 〜地球最強の男、異世界で更なる高みを目指して無雙する〜
東堂院力也は、地球最強の男だ。 ある日、居眠り運転のトラックから少年少女を助けるために、彼は犠牲となった。 「…………む? ここは……?」 彼が目を覚ますと、見知らぬ森にいた。 狀況整理に努めているときに、森の奧から女性の悲鳴が聞こえてきた。 「きゃあああっ!」 「むっ! 女の悲鳴か……。今向かうぞ!」 東堂院力也は駆け出す。 しばらくして、女性の姿が見えてきた。 數人の男に押さえつけられている。 服を脫がされ、半裸の狀態だ。 「そこまでだ! 賊どもめ!」 東堂院力也が大聲でそう言う。 男たちが彼を見る。 「何だあ? てめえは!」 「けっ。通りすがりの冒険者かと思ったが……。見たところ丸腰じゃねえか」 「消えろ。ぶっ飛ばされんうちにな」 賊たちがそう言って凄む。 果たして、東堂院力也はこの賊たちを撃破し、女性を助けることができるのか。 格闘チャンプの異世界無雙が、今始まる。
8 73