《「最強」に育てられたせいで、勇者より強くなってしまいました。》第二章 第四十一話 勝利

ゴブリンロードの先制攻撃を難なく防いだ俺は、追撃を警戒して一旦距離を取った。

おそらくそのまま攻撃をけ続けても俺の張った障壁は破られることはないだろうし、なんならこっちから反撃を當てられたような気もするが、まずは様子見だ。

攻めに回るのはもうし相手の攻撃パターンを割り出してからにしよう。

そう思って攻撃を待っていると、どうやら様子見をしているのは俺だけではなかったようでゴブリンロードもこちらを睨んだままあまりこうとしなかった。

俺のことを相當警戒しているようである。

もしかしたら本能的なところで俺が危険な人だと気付いているのかもしれない。

もしそうなら警戒は解けないだろうし、慎重に戦われると面倒である。

それに、睨み合いの時間もそれなりに長くなってきた。

このまま何もしないままではすぐに日が暮れてしまう。

俺は相手の攻撃を引き出すための攻撃を仕掛けることにした。

「エレキショック!」

右手を突き出し、無詠唱で放ったのは雷屬の初級魔

わざとの芯からはずれた部位を狙った電撃は、當然のように避けられる。

だが、この魔の狙いはゴブリンロードをかすことだ。

その仕事は十分に果たしてくれている。

――グルァ!

そして、回避行を取ったことで俺との距離がまったゴブリンロードは、魔行使によって生まれるはずの隙を突いて棒を當てに來る。

だが、ショックボルトに限らず、初級魔で生まれる隙なんてものは微々たるものであり、今の場合ゴブリンロードが攻勢に移ったのが確認できた時には自由にけるようになっていた。

だから、俺は振るわれた棒を余裕をもって躱すことができるのだが、それを悟られると余計に攻撃を仕掛けてこなくなるので、わざとギリギリまで引き付けてから回避した。

ついでに勢を崩したふりもしておく。

すると、これを好機と見たのか、ゴブリンロードは連続で棒を振るってきた。

橫に薙いでは叩き付け、振り上げては振り下ろしの繰り返しだ。

必死に棒を振り回し、汗なのか涎なのか分からないをまき散らす様は、段々と暗くなってきたことも相まって何とも不気味で、そして醜かった。

俺はその攻撃の全てを躱すか障壁で防ぐかし、理的な攻撃は一切けていないが、その君の悪さから目が合うたびに神が削られていくような気がした。

合計して十三発の棒攻撃をしのぎ切ったところで、ゴブリンロードはきを止めた。

いい加減にこれ以上打ち込んでも効果がないことを察したのだろう。

未だに睨みつけてくるあたり神攻撃は継続されるようだが、確かにこれに関しては効果が出ているのでやめてはもらえないはずだ。

というか、向こうにはただ睨むだけで攻撃になっているなんてことは分からないだろうし、敵対している相手を見るなというのは土臺無理な話だった。

これでまた両者がかなくなってしまったかと思われたが、今度はゴブリンロードの方から攻撃を仕掛けてきた。

様子見は終わりということだろうか。

相変わらず雑に棒を振り回すのが主の単調な攻撃だが、単純に振り回していたさっきとは違って、今は極力避けにくい方向から打ち込んだり、フェイントが混ざったり、背後に回るようなきまで見せてくるようになった。

棒を振るリズムやテンポにも緩急が付いていて、いくらか回避の難度は上がっている。

自らの攻撃が通用しないと見るや否や工夫を凝らしてくるのはなるほどさすがはゴブリンのてっぺんというだけある。

だが、難度が上がっても所詮は棒を振るだけの攻撃。

それだけきが限定できれば、攻撃の予備作を見ただけでどこにどんな攻撃が飛んで來るかまで簡単に分かる。

數十発ほどの攻撃は、結局俺にはかすりもしなかった。

そこで俺は様子見をやめて、本格的に攻勢に出ることにした。

強いと言われたゴブリンロードの棒攻撃は、その速度や威力を見れば申し分なく強者なのだが、野生の魔というだけあってそこには「技」がなく、これ以上単調な攻撃を見ていても意味がないとじたからだ。

俺はもう一度ゴブリンロードから距離を取ると、周囲に浮かせたままになっていたエネルギーソードをるべく、意識をそっちに集中させた。

ゴブリンロードはその不穏な空気をじ取ったのか、焦ったように特攻を仕掛けてくる。

また棒攻撃だ。

俺はそろそろ飽きてきた棒を躱して、自らもエネルギーソードの攻撃に紛れて毆ってやろうかとゴブリンロードの懐に潛る。

その瞬間、ゴブリンロードの焦った顔が、下種な笑みへと塗り替えられた。

何だと思った時には、薄汚れた緑のが目の前に迫っていた。

――バチィ!!

咄嗟にそのとの間に障壁をり込ませるが、不完全に形された障壁は衝撃をけて不吉な音を立てる。

だが、不完全でも、それは俺とを確かに隔ててくれていた。

遅れてそれがゴブリンロードの膝だということが分かり、直前の笑みからこの膝蹴りがあえて使わなかった不意を突くための攻撃だと察する。

まだ攻撃のレパートリーがあったことには驚いたが、それすら防いで見せたのだ。

やはりゴブリンロードと俺の間には大きな実力の差があるみたいだ。

そう思うと自然と笑えてきてしまう。

喰らわなかったとは言え危なかったのは事実だから油斷はしないが、負ける気も一切しない。

俺は勝利を確信し、こぼれる笑みを抑えようとしながらゴブリンロードの顔を見る。

さっきまで汚く笑っていたその顔は、今までに見たことのないくらいに醜く歪み、小刻みに震えていた。

案外表かなものだな、なんてことを考えながら、俺は漂うエネルギーソードの切っ先を目の前の巨に向ける。

威厳も威圧じられなくなったそれは、酷く小さく見えた。

――ガァァァァア!!

ゴブリンロードはやられまいと半ばやけくそのようにも見える突撃を試みているが、俺はそれが近付くことを許さず、まずは機力を奪うために腳を狙って剣を飛ばした。

最早避けることをしなくなったゴブリンロードはその刺突と言えなくもない攻撃をモロに喰らい、足を止める。

それから、上手いこと筋や腱を切ることができたのか膝を付いて倒れた。

どうにか棒でを支えているが、もうくことはできない。

そして、格好の的となったゴブリンロードに、俺は殘りのエネルギーソードを全て飛ばす。

――グ、ギ、ガァッ……!!

上から下まで至る所を貫かれたゴブリンロードは、遂にその両目からを失い、を流しながら倒れた。

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