《「最強」に育てられたせいで、勇者より強くなってしまいました。》第五章 第百九十一話 武屋
翌日から一週間、二人はそれぞれ別の仕事をしてお金を稼いだ。これは、二人の得意とする分野が異なっているからである。基本的に、誰でもできる仕事よりも特定の技能が必須となる仕事の方が報酬が良い。そのため、稼ぎの効率を考えると、二人で同じ仕事をするよりも得意なことを活かせる仕事をそれぞれ選んだ方が効率的だという結論に至ったのだ。
ヴォルムは主に腕っぷしが必要とされる仕事をしていた。警備とか、門番の手伝いとか、そういう戦闘がある「かもしれない」といったじの仕事だ。これらは単純に危険があるから報酬が高く設定されている。とはいえ、その危険が訪れる頻度がとても低く、一週間やって戦闘に発展したのはたったの一回だけだった。それも、何人かいる人材でまとめてかかったため危険なんてものは微塵もじられなかった。本當にこんなに楽な仕事で良いのかとも思ったが、雇い主が言うには強そうな奴がそこにいるというだけで抑止力になっていて、むしろそっちがメインの仕事なのだそうだ。確かに、何か言いたげなのに悔しそうな顔をしているだけで去って行ってしまう人が何人もいた。これがこの仕事の価値というわけだ。
一方で、リフィルは病院で手伝いをしていた。これはリフィルが元々教會の人間で奉仕系の仕事に適があったのと、簡単な治癒魔が使えたのが大きかった。大きな町の病院というだけあって人材が足りているのか治癒魔を使うような事態には至らなかったらしいが、診察や治療の際に使うの準備や片付け、カルテの管理など、いわゆる雑用が結構忙しかったみたいだ。思いやりの心があって、それでいて運能力も優れているリフィルは細かいところまで気を遣ってテキパキといたのだろう。報酬にを付けてもらえたと喜んでいた。
「生活面での出費がないと、結構な速度で貯まるもんだな」
「そうですね、なんだか悪いことをしているような気になってきちゃいました」
夜、二人は部屋でお互いの稼ぎを見せ合っていた。初日の時點で一週間は町の中で稼いで、それで手にれられる裝備で魔を狩りに行こうと話をしていたのだが、この調子だとだいぶ質の良い裝備が整えられそうだ。それもこれも、保護されているおだ。元々二人とも質素な暮らしには慣れているため、倹約することに何の苦痛もじない。それなのに、宿と食事が保障されている。面白いことに、収が丸々そのまま懐にってきているのだ。
「これだけあったら十分そうだな。明日は裝備を買いに行こうか」
「はい、裝備以外にも、いろいろとお店を見てみましょうよ。気になっているところがいくつかあるんです」
翌日、この日は休日と決めて、一日町の中を見て回ることにした。これまでの一週間で勤務先に行く間に町の様子を観察したり、人から話を聞いたりはしたのだが、やはりそれだけでは分からないことも多い。実際に自分の目で見て、でじて、この町の構造をもっと理解するのだ。
「やっぱり、まずは武や防から見に行きますか?」
寮から出るとき、リフィルにそんなことを聞かれた。防に関しては実を言うと二人とも軽いものしか裝備したことがなく、なんならなくても良いと思っている。危ない時の生存率を上げるために鎖帷子みたいなものを著ても良いかもしれないが、それくらいだ。それより、武をどうにかしたい。今日、一番に買いたいものは武なのだ。
「そこに割くお金がなくなったら困るからな。そっちが先にはなるが、防は安い鎖帷子でも買っておけば良いだろう。あるいは、今日は買わなくても良い。いきなり危険度の高い魔を狩りに行く予定はないからな」
しくらいの怪我ならリフィルに治してもらえる。ならば、高級な防を持つよりも、攻撃力を高めた方が倒せる魔の幅も、効率も上がるというものだ。まずは武屋をいくつか巡る。その旨をリフィルに伝えて、早速一件目にった。
寮から一番近くある武屋。ここは、安価で扱いやすい武を取り揃えている店で、憲兵隊の人たちから教えてもらった。スタンダードなものがたくさん置いてあるということで、自分が得意とする武の種類がどれなのか、試すのにも良いだろう。
良い武を、と言いながら安価なものが置いてあるここに來たのには理由がある。ここにはいわゆるサブウェポンを買いに來たのだ。武が一つしかないと、戦闘中にそれが壊れてしまったとき、素手で戦うしか選択肢がなくなってしまう。環境によっては武を調達できたり、武代わりになるものが落ちていたりすることもあるのかもしれないが、そんなものに期待して戦いに出るのは無謀というものだ。そんなときに困らないよう、サブの武を攜帯しておく。普段は荷になってしまうにしても、必要なものだとヴォルムは考えていた。それから、使い捨ての投擲武もしかった。ヴォルムは基本的に近接攻撃を主とする戦闘を得意としているし、リフィルの魔では発までに時間がかかる。素早く遠距離に攻撃をしたいときに投擲できる刃があると便利なのだ。
「いらっしゃい、今日はどんなものをお求めで?」
「攜帯しておける短めの刃と、投げナイフや針を探してるんだが、どんなのがあるか見ても良いか?」
「それだったら……こちらなんてどうですか? 柄が木製で、軽いのがウリなんです」
店の奧から出てきた店員らしき人にどんなものがあるのかを聞きながら味する。そこで、リフィルにもいろいろと聞いてみることにした。
「そういえば、リフィルはどんな武を持つつもりなんだ?」
「私は魔を使うので、杖は持っておきたいです。それ以外だと、ダガーみたいなものでしょうか。小さくて、替えが効くものをいくつか持っておきたいです」
「それなら、こんなのはどうだい」
店員が持ってきたのは、いわゆるソードブレイカーと呼ばれる類の刃だった。
「これは護用ナイフの強化版みたいなもので、相手の剣を破壊することができるんです。実際はそんなに都合良く壊れてはくれないみたいですが、ここに挾んで捻ると引っ張られるみたいで、それが普段の打ち合いじゃ経験できない力のり方だから、きを止めることができるみたいですよ」
武が破壊されるかもしれない。そう思ったら、迂闊に手を出せないだろう。そういう、抑止力としての効力もある。ちょうどその重要を學んだヴォルムには、ソードブレイカーは魅力的に見えた。
それをリフィルに勧めながら、自分の武も選ぶこと數分、結局、ヴォルムは始めに紹介してもらった小刀と、投げナイフを購した。リフィルは杖を選んだあとで決めるとのことで、一旦、店からは出ることとなった。
実際に武を買うとし意識が変わってくる。高揚を覚えながら、二人は次の店へと向かうのであった。
すみません、來週の更新はお休みです。
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