《「最強」に育てられたせいで、勇者より強くなってしまいました。》第五章 第百九十八話 進展
魔を食べる生活をしばらく続けていると、戦闘面以外にも々と変化が現れた。それもそのはず。ヴォルムは、的な能力を本から変えてしまったり、見た目に影響のある能力だったりを手にれていたのだ。制できるようになれば隠しておくのも難しくはないが、未知の能力をすぐに使いこなせるようになるほど用でも天才でもない。仲間を集めるはずだったのに、それを隠すために最近は二人だけで魔狩りをすることがほとんどになってしまっていた。
「強さを求めて、その一つの答えに辿り著いた気もするんだが、並行して目指していたはずの仲間探しがおろそかになっている。これは由々しき事態だ」
拠點で食事を取りながら、ヴォルムはわざとらしく芝居がかった口調でそう言った。
「確かに、そうですね。いくら個々が強くなっても、二人では々と限界がありますから」
「その通り。もっと言うなら、中途半端な準備で挑むと完なきまでに叩きのめされる――つまりは皆殺しにされるだけだから、できれば挑むときは明確な勝ち筋を見出してからが良い」
勝率が低くても、勝算がある。なくともこれくらいは確信をもって言えるようになってから挑みたいのだ。しかし、現狀を見る限り、口が裂けてもそんなことは言えない。確かにヴォルムたちは強くなったかもしれないが、生命エネルギーによるび幅や、まだ見ぬ神の加護があることを考えると、まだまだ不十分なように思えた。その上で、人數が足りない。それから、相手の報も足りない。並行して行うはずだった仲間集めと、神に関する報集めができていない。今さらながら目の前に立ちはだかる壁の高さを痛する。
「今までは武が先だとか、強くなるのが先だと言って後回しにしていたが、そろそろ他の部分でも進まなきゃならない。一応、聞いておくが、神に関して何かわかったことはあるか?」
強くなる方法と並行してヴォルムも調べてはいたのだが、結局今になっても見つけることはできていない。考えてみれば強くなる方法に関してもユルドに教えてもらった本から見つけたもので、ヴォルムの力で見つけ出したものではないのだ。
「図書館では特に見つけられませんでしたが、この町にもある教會に、一般には公開されていないような書があるはずです。それを読めば何か分かるかもしれません」
なるほど、そんなものがあるならヴォルムたちが求めている報があってもおかしくはない。しかし、一般には公開されていないということは、ヴォルムはもちろんのこと、リフィルでも見ることができないのではないだろうか。それとも、なにか算段が付いていて言っているのだろうか。
「それは、俺たちが読めるものなのか?」
「いえ、私たちは部外者ですから。それに、関係者でも管理している人か、責任者くらいしか見ることはできないでしょうね」
では、見ることができないではないか。という言葉は飲み込んだ。なんだかんだ言って、そこにあると分かっていれば、本の一冊や二冊、読む手段なんていくらでもあるのだ。つまり、リフィルがここで言っているのはそういった書がある、あるいはある可能があるということだけで、必要ならば読みに行こうという話なのだ。
「この町の教會は大きいですから、きっとあります。私のいた教會とは信仰対象が違うみたいですが、それにしては教會自の作りや仕組みが似ていますし、教義も同じようなものです。もしかしたら、裏で神が繋がっている証拠となるものが見つけられるかもしれません」
そこまで言うのなら、何か拠があるのだろう。別に、それが何なのかを問いただすつもりはない。これくらいのことはもう疑わないのだ。
「分かった、そしたら……神についての報収集は任せても良いか? 俺は俺で仲間集めをする。何人か目星はついてるから、勧してみようと思うんだ」
「はい。任せてください。教會に忍び込むとなると、二人より一人の方が都合が良いですからね」
最近、リフィルが獲得した能力に潛や隠に向いているものがある。魔眼は暗闇でも視界を確保するのに役立つし、他にも姿を消したり、催眠を行ったりと役立つ場面が々と想像できる。
リフィルが食べている魔はヴォルムも食べている。だから、同じ能力を使うことはできるのだが、リフィルの言う通り、忍び込むのには一人が最適だ。多の心配はあるが、リフィルも強くなっている。きっと功させて無事に帰ってくると信じて、行かせてみることにした。
「一応、何かあったときの合図は決めておこう。狀況にもよるだろうが、何かしら魔を撃ちあげてくれればどうにか反応しよう。それ以外でも、何らかの異変があったら合図だと解釈するから、とにかくその場でできることをしてみてくれ」
「はい。どうにかしてみますね」
「もちろん、何もなくても帰ってこなかったら探しに行くくらいはするからな。安心してくれ」
フォローをれつつ、ヴォルムは食を片付けた。
翌日、リフィルが教會へ潛するために準備を始めた。と言っても、ちょっとしたアイテムと裝備を買いに行っただけで、それ以外は特に普段と変わらない。流石に準備に充てるために魔狩りには行けなかったが、食事の用意はしてくれた。今日くらい當番は無視しても良かったのに、律儀なものだ。
日が暮れる前に教會へ向かうのを見送り、ヴォルムも拠點を後にする。向かう先は酒場。何人か目星をつけていたうちの一人が、いつもここで飲んでいるのだ。
仲間にしたい人材にはいくつかの基準がある。もちろん、聲をかけて承諾してくれるというのが何よりも大前提だが、それは一旦置いておいて、まず、何よりも戦闘力はある程度あってほしい。仲間にしていきなり戦いに行くことはないにしても、現狀でリフィルと同じくらいの戦闘力はしい。それから、一人であることも重要視している。複數人で固定のパーティを組んでいる人を引き抜いてしまうと殘されたメンバーに迷がかかるし、引き抜いた側としても気がかりがあるのは気持ち悪い。
そんなことを考えながら、早速、目當ての人に聲をかける。
「なぁ、俺が魔食ってるって言ったら、どうする?」
目の前の男が怪訝そうな顔をして振り向く。渉が始まった。
外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。
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