《「最強」に育てられたせいで、勇者より強くなってしまいました。》第五章 第二百話 新たな仲間
翌朝、ヴォルムは昨日の夜に聲をかけた男とは別に仲間候補として考えていた人に聲をかけるべく、狩人が集まる建へと赴いた。酒場とはまた違った用途の建なのだが、いつからか狩人が集まるようになったらしく、目當ての人もよくここに來ているそうなのだ。なんでも、特定のグループに所屬せず、その場にいたメンバーに聲をかけて狩りに行くらしい。それでいて誰からも邪険にされないだけの実力を持っている。実力者であり、かつ引き抜く際の抵抗がない。ヴォルムがしい人材にぴったりと合致した人だった。
「いらっしゃい」
酒場ではない。というのは名目上だけの話で、店にると雰囲気は同じだった。朝だから酒ではなく朝食になるようなものを提供していて、酔っ払いがいないからより清潔な印象がある。違うのはそれくらいだった。店構えも客層も変わらない。
ヴォルムは適當にパンとスープを注文して席に著いた。店を見渡す限り、目當ての人は見當たらない。今日の同行者が決まってしまう前に聲をかけようと思って早く來たから、単純にまだ來ていないだけだろう。ゆっくりとスープを飲みながら待つことにした。
ただぼーっと待っているのも暇なので、周囲の會話や様子に意識を向けてみる。今日は何を狩りに行くだとか、朝からよくそんなに食べられるなとか、どうでも良い日常會話がほとんどだった。こんなところで神に関する報や強くなれる方法が聞けるはずもない。分かり切ったことだったし期待もしていなかったが、しだけ気分が落ち込んだ。
そんなことをしていると、勢いよく店の扉が開いた。かわいらしい顔をした年だった。
「おはよー! おっちゃんいつものね!」
深く頷いたおっちゃんがしばらくしてキッチンから持ってきたのは、年のかわいらしい見た目からは想像できないボリュームのステーキだった。なく見積もっても一キロはあるだろうか。ジュウジュウと音を立てる鉄板に乗せられたが年の前に配膳された。よく見ると、付け合わせの野菜や他のメニューが見當たらない。オンリー。
「ありがとー!」
年は目を輝かせながら、即座に目の前の塊にかじりついた。いや、正確にはナイフをれて切り分けて食べていた。なんなら所作だけを見たらキレイなのだが、あまりにも速く食べ進めていくので一瞬、犬がを貪っているようにも見えてしまった。それだけの迫力があったのだ。
「ごちそうさまー! 今日も味しかったよ!」
所要時間は五分かそこらだろうか。熱々のうちにを平らげた年が空になった鉄板を掲げると、おっちゃんがそれを回収していった。これがほぼ毎日行われているのか。見世ではないことを理解しつつも、年の豪快な食べっぷりは目を引くものがあった。容姿とのギャップも相まって、これを見るために人が集まるのも理解できるような気がした。
さて、どう聲をかけようかな。ヴォルムが席を立とうとした瞬間、店の空気が急変した。先程までの穏やかな雰囲気が噓だったみたいに、ひりつくような張が場を支配する。まさに戦場。周囲への警戒レベルを一気に引き上げて、様子をうかがった。
周りにいる客――狩人の目線の先は総じて年だ。しかし、そこには敵意がない。年が狙われているのは確かだが、目的は害を與えることではない。そう、ヴォルムと同じく、仲間にうためだったのだ。おそらく、毎日誰が年を獲得して狩りに出られるか、競爭が発生しているのだろう。お互いに牽制し合って、誰かが抜け駆けするのを阻止している。年が聲をかけた人が勝利ということだろうか。
ならば、くのみ。そんな暗黙のルールに付き合ってやる義理はないのだ。意を決して、ヴォルムは中途半端に浮いた腰を上げ、完全に立ち上がった。周りからの視線が、敵意が強くなる。しかし彼らはかない――いや、けないのだ。二番目に立った人間も言ってしまえばルール違反。違反者はきっと、この先ずっとこの店で朝食をとることはできないだろう。とすれば、違反をしてまで今日を共に過ごすよりも、今後、何度も共に過ごせるチャンスを殘しておいた方が良い。そんな心理が働いて、この場で妨害してくる人間はいない。
「なぁ、ちょっと良いか」
「んー? なにー?」
こんな殺伐とした空気になってしまったというのに全く意に介していないのか、年は背後から聲をかけると相変わらずのかわいい顔のまま振り返った。
「俺たちの仲間になってくれないか?」
「うん、いいよー。なに狩るの?」
ここで、ヴォルムは年がいつもと同じように今日限りのいをけていると勘違いしていることに気付いた。このおいは最終目標を達するまでのものだ。それに、現狀でそれなりに強いのをもっと鍛えなければならない。それをどう説明したものか……。
「……神だ。神と、その使い」
「へぇー! 面白そうじゃん! これから行くの?」
「いや、ずっと先だ。もっと強くならないといけない」
「ボク、強いよ? 足りない?」
案外、話が分かるというか、賢いのかもしれない。年の強さの訣はフィジカルよりもむしろ頭脳面なのではないか。そんなことを考えつつ、ヴォルムは頷いた。
「俺以外に二人仲間がいる。そいつらと一緒に強くなって、最後は神を倒す。短期的なものじゃなくて、それまでの仲間になってほしいんだ」
「うん、いいよ。仲間になる。よろしくね」
そう言いながら年が右手を差し出してきた。握手を求められているのだろう。ヴォルムはそれに応え、二人で店を出た。他の狩人が呆気にとられたような顔で固まっていたが、そんな顔をするくらいなら、さっさと行すればよかったのだ。獨占して、それでも文句を言われないくらいに強くなれば良い。そういう世界なのだ。
「これからもう一人の仲間――擔ってくれそうな人のところに行くけど、一緒に來るか?」
「うん! あいさつ回り!」
意外とすんなり仲間が増えそうだ。順調に渉が進むのを喜びつつ、同時にそれならば昨日、あんなに回りくどいことをしないでも良かったかもしれないとも思った。これから仲間になるというのに、あれでは第一印象が最悪だからな。どうにかリフィルにフォローしてもらおう。小さな後悔をに、ヴォルムは男との待ち合わせの場所に向かった。
二百話達です!
ここまで書き続けられたのも読者の存在あってのこと。
ありがとうございます。
もうしばらくお付き合いいただけると幸いです。
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