《転生王子は何をする?》閑話 アリアーヌの難
時は遡り、トリスが初めてアリアーヌに出會い、ぶっ倒れた日のことである。
その日王であるオウギュストは書類仕事で執務室に篭っていた。
そんなオウギュストの下に、慌てた様子で騎士が1人の駆け付けてきた。
『コンコン』
「失禮します!!」
ノックからオウギュストの返事を待たずにノータイムで執務室にってきた騎士に対し、不安を覚えたオウギュストは頭を抑えつつも聞く。
「どうした?魔群れが王都に侵攻でも始めたか?」
「い、いえ!國政には特に問題はありません。」
最悪の事態を否定されたオウギュストは安心しながらも、何故騎士がそんなに慌てているのか疑問に思い、紅茶を飲みながら言うように促す。
「こ、これは不確定な報なのですが、魔導師団団長のアリアーヌ様がトリスタン様に結婚を迫った挙句に押し倒し、最終的にトリスタン様が気を失われてしまったそうです。」
『ブフォッ!?』
オウギュストは飲んでいた紅茶を吹き出す。
「あ、あの『冷徹の魔』アリアーヌがトリスに!?しかし幾らトリスの容姿が優れているからといっても、彼奴がいきなり押し倒すなんてことするのか?」
サラッと親バカ発言をするオウギュストであったが、それと同様に、部下であるアリアーヌにも信頼を寄せていた。そのためそんな馬鹿げた話をハナから信じることはないのだ。
因みにアリアーヌに付けられた二つ名である『冷徹の魔』とは、氷屬を好んで使うことと、男に靡かないこと、そして敵を冷酷無慈悲といっていいような顔付きで殲滅していくことから名付けられたものである。
「し、しかし気を失われたトリスタン様を、アリアーヌ様が抱きかかえている様子を見ていた者が居ます!どうやら今はトリスタン様のお部屋に居られるようです。」
「…そうか。苦労だった。私が直接行って確かめて來よう。」
し考えた後、そう言ってオウギュストは椅子から立ち上がる。
「は、はい。分かりました。何分相手が魔導師団団長となると、我々でな荷が重いと考えておりましたので、そうして頂けると幸いであります。」
「うむ。では持ち場に戻るが良い。」
そう言い、オウギュストは執務室から出て足早にトリスの部屋へと向かうのだった。
その頃アリアーヌは、トリスをベッドに寢かせた後、顔を青くしてオロオロとしていた。何故なら、怪我人なら戦場で見慣れているため対処は出來るが、単純に神的な圧迫から気を失った者は介抱したことがないためである。
「ど、どうすれば良いのだ?私と一緒にトリスを運んでくれた騎士は何処かに行ってしまったし、普段なら居るはずのメイドもここに居ないとは…。そ、そういえば、気を失った者の介抱をするには、まず著ているものを緩めてやるのが良いと聞いたことがあるような。」
アリアーヌはそう呟きながら、トリスの服に手を掛ける。現在トリスはワイシャツのようなものを著ており、一番上までボタンがしてあったので、それを外そうとしているのだ。
しかし、この狀況は傍から見れば々危ないじがする。このように、
『コンコン!』
「失禮する!トリス!大丈夫か!?アリアーヌに襲われたと聞いたが…は?」
々と勘違いしている者には。
この狀況の危うさに気が付いたアリアーヌは必死に否定しようとする。
「こ、これは。違うのです!」
しかし、一切の効果をさなかったようだ。
「…む、息子を、よろしく頼む!!クッ!まさか一番下の子が、他の兄弟より先に婿に出すことになるとは!」
オウギュストは目に涙を浮かべながら、直角に腰を折って頭を下げる。
「な、何の話ですか〜!?」
いきなりトリスを任せる発言をされたアリアーヌは、顔を真っ赤にしてぶ。
『コンコン』
「何やら騒がしいですが、どうかされたのですか?」
騒ぎを聞きつけたフランセットが部屋にってくる。
服をはだけてベッドで寢ているトリス、そのすぐ側で顔を真っ赤にしながら涙目になっているアリアーヌ、そして深々とお辭儀を居ている夫を見て直的に判斷したようだ。
「アリアーヌさん。」
「は、はい!?」
いきなり真剣味を帯びた聲で呼ばれたアリアーヌは吃りながらも返事をする。
「トリスを大切にしてやってくださいね?」
「そ、それは勿論…って違います!!誤解です!!」
聲音に流されて思わず承諾しそうになってしまったが、慌てて否定する。
「まぁ、トリスとの仲は遊びだったのですか!?」
「何ィ!?そうなのか!?」
どんどんと混沌カオスになってゆく狀況の中、あまりの騒がしさに部屋の主が目覚めた。
「ん〜?何やら騒がしいですね?…何ですか、この狀況は?」
漸く目覚めたトリスに、アリアーヌは藁にもすがる思いで必死に現狀を説明し、打開することを要請した。
結局トリスの説明により、押し倒した事は事故であり、アリアーヌが綺麗過ぎて頭にが上ってしまって意識が遠のいたことを、自のの事にはれずに説明し、どうにか事なきを得たのだった。魔導師団団長はショタコンである可能ありという深い爪痕を殘して。
こうして、アリアーヌの悲慘な1日は終わりを告げるのだった。
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