パーティーの翌日、トリスはアリアーヌ以外には緒で王城の外に出ようと畫策していた。勿論例の哀れな仔羊の下へ向かうためである。

｢──という事で、私のアリバイ工作に協力していただけませんか？今なら私の前世の知識の一部を開放しないこともありませんよ？｣

妖しく微笑みながら魔法の言葉を口にし、アリアーヌに協力を要請する。

｢乗った!!｣

即答である。

それもその筈であり、魔法の発には確かにスキルによる適が必要だが、それに加えてイメージがとても大切である事が最近分かってきたためだ。自の事を喋らない代わりに、アリアーヌに燃焼の知識を教えたところ、威力の向上が見られた。

更なる魔の高みに至れるチャンスとあらば、アリアーヌは悪魔にでも魂を売りそうなレベルで魔法には貪に向き合っているのだ。

｢では、的にはどうすれば良いのだ？｣

｢そうですね…。私の代わりを作れる魔法とかありません？｣

｢勿論あるぞ。『影分ドッペルゲンガー』。｣

アリアーヌがキーワードを口にすると、アリアーヌのそっくりさんが生み出された。

｢す、凄いですね。どっからどう見ても本にしか見えませんよ！｣

｢あぁ。これならば外に出ても問題無いだろう。どうせお前の事だ。通常1時間保てればいいものを、數日間はもつだろうよ。｣

アリアーヌにジト目で睨まれる。

トリスに散々非常識な景を見せられたため、ちょっとに持っているのだ。

｢そ、それもそうですね。あははは…。｣

そんな視線を向けられたトリスは、笑いながらそっぽを向く。

｢そ、それと年齢を自在にる魔法とかありますか？｣

｢ふむ。それなら聞いたことがあるぞ。確か時空屬の上級魔法だったか？え〜っとだな。…あ、思い出した。年齢作エイジコントロールっていう魔法だったと思う。自の年齢を年単位で変化させられる。元の年齢から離れれば離れるほど魔力の消費が激しくなるが、一度発すれば數日間は効果が持続するはずだな。｣

｢へぇ。便利な魔法ですね。じゃあ、やってみますか！『年齢作エイジコントロール』！｣

トリスが魔法を使うと、がに包まれみるみる大きくなっていく。そしてが収まると、そこには20歳近くの青年が居た。

｢お！功したみたいですね。どうです？師匠？｣

｢…。｣

トリスがそう問いかけるが、アリアーヌは顔を手で覆い、指の隙間からチラチラと見るだけで無反応である。

｢え？何ですか？その反応は？…あ!!服が!!｣

そう。急激に長してしまったため、服が破れてしまい、びやすい繊維で出來ているパンツだけが殘っている狀態になっているのだ。

｢か、『解除』！そして『収納インベントリー』！｣

トリスは慌てて年齢作エイジコントロールを解除して、元の年齢に戻ってから異空間から服を取り出して急いで著る。

｢…ま、まったく。しは考えれば分かるだろう？｣

｢す、すみません。…それにしても師匠。｣

トリスはニヤニヤしながらアリアーヌに言う。

｢ん？…何だ？｣

そのニヤニヤ顔に、アリアーヌは嫌な予を覚える。

｢師匠って、案外むっつりなんですね。｣

｢フン！｣

｢グホッ！｣

トリスがアリアーヌを揶揄うと、アリアーヌがどこからともなく取り出した杖で頭を毆られたのだ。

｢す、すみませんってば。｣

｢ふん。次はもっと強く毆るからな。｣

アリアーヌは顔をし赤くしながらそっぽを向いて言う。思わず揶揄いたくなったトリスだが、毆られるのは嫌なのでぐっと堪える。

こうして、著々と街に出る準備を整えていくのだった。