《転生王子は何をする?》第27話 宿屋『平和の礎』

トリスは、宿の口に立ち、ドアを數回ノックしてから開ける。すると中は閑散としていて、付と思しき場所には誰も居なかった。そのためトリスは奧の方に居ると思われる店員に聲をかける。

「失禮しま〜す。宿泊したいんですが、どなたかいらっしゃいませんか?」

トリスの聲に反応し、數秒後に30代後半の恰幅の良いが出てくる。

「は〜い。お待たせしちゃってすみませんね。夕食の仕込みをしていたものですから。」

「いえいえ。そんなに待ってませんから大丈夫です。それにこんな中途半端な時間にやってきた僕の方が・・・・が悪いんですよ。」

トリスは、態々一人稱を変えてと話す。ギルドでは舐められたら終わりだとアリアーヌから教わったため、し強気な口調を心掛けたのだ。しかし今はそんな必要は無いため、普通に丁寧な青年を演じている。

「え〜っと、宿泊ですよね?何泊ですか?」

「取り敢えず10泊お願いします。」

「はいよ。じゃあ1泊銅貨2枚だから合計で銀貨2枚もらうよ。」

トリスは、懐から銀貨を取り出してに渡す。

「はい、確かに。食事は朝と夜の2回付きだよ。部屋と一階の食堂のどちらかで食べられるけど、どっちにする?」

「部屋でお願いします。」

「はい、分かったよ。じゃあこれに名前と年齢書いておくれ。」

そう言っては帳簿を差し出してくる。

マルティナやグレゴール、ギルドでも名乗っている以上、別に変える必要は無いと思われたので、トリスと書く。

「ふむ。トリス君ね。私はここの將のレーナだよ。よろしく。」

「はい、レーナさん。よろしくお願いします。」

トリスはそう言って頭を下げる。

そんなトリスを見てレーナは苦笑いを浮かべて言う。

「そんなに畏まられると、困っちゃうね。君は見たじ武を持ってないみたいだけど、商人さんか何かなの?」

「いえ、僕は冒険者をやってます。登録したのは今日ですけど。」

「えぇ!?本當かい!?登録したてであんなにお金を持っているものかい!?…ってお客様の詮索は駄目だって主人から言われてるんだったわ。ごめんなさい。」

「いえ、別に大丈夫ですよ。1人で村から出てくる時に、じっちゃんから選別で貰っただけですから。」

トリスは再び設定を思い浮かべながら、口からでまかせをいう。

するとレーナは驚きつつも心する。

「へぇ。1人で武も持たずに、よくここまで來れたね!」

王都から小さな村まで、なくとも徒歩3日はかかる。その間魔や盜賊の出る箇所が幾つもあるので、通常護衛を雇うか、商隊にくっついて來るのが普通なのだ。

「えぇ、自分でもびっくりですよ。王都の口の所で初めてその事を知って、肝を冷やしました。」

トリスは『あははは』と笑って誤魔化す。レーナにはちょっと可哀想な子を見る目で見られつつ、トリスは割り當てられた部屋へと向かう。二階の一番隅の部屋だ。預かった鍵でドアを開けると、清潔溢れるベッドが目にった。それに飛び乗り、トリスはびをする。

「くぅ〜!疲れた〜!まったく、1日に2回も絡まれるとか普通じゃないよな〜!」

トリスはベッドの上でゴロゴロしながらぶ。暫くすると段々と眠気が強くなっていき、トリスはそのまま眠りにってしまうのだった。

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