《転生王子は何をする?》第33話 試験をけよう 4
マックスは開始の合図とともに一息で10メートルの距離を詰めてくる。
「む。」
そんなマックスから繰り出される右ストレートを難なく躱したトリスは、懐に潛り込んで毆ろうとしたが蹴りにより防がれてしまう。仕方なく攻撃を中斷したトリスはバックステップでまた間合いをとる。
「ほう!これは予想以上だ!貴様は本當に魔師か?」
「ええ、正真正銘魔師ですよ。そんな事よりも、もう終わりですか?」
トリスは靜かな聲でマックスを挑発する。
するとマックスはより一層笑みを深めて突撃してくる。
「いや、まだだ!」
トリスはマックスの激しい攻撃を躱し続ける。常人なら數秒で全骨折するような拳を時には払い、時には紙一重で躱しているのだ。
「お〜。これは凄いですね。これならば程Bランクというのも頷けます。」
トリスは息も荒げずに呑気に想を言っている。しかし反対にマックスは段々疲れが目立つようになってきた。それもその筈、途中からトリスを捉えるためにほぼ本気で攻撃を仕掛けているのだ。だがトリスを捉えることは出來ない。
「くっ!余裕そうな奴が何言ってやがるんだ!お前も何か攻撃をして來い!」
マックスはびながら一旦距離をとり仕切り直しを図る。
「そうは言われましてもね。」
「ただ躱しているだけだと、昇格は出來んぞ?貴様は魔師なんだろう?ならば魔法を撃ってこい!」
トリスならば素手でもマックスの防の上から攻撃通すことは可能だろう。しかし魔師を名乗っている以上は魔法を使わねばならない。だがマックスほどの猛者相手となると、そこら辺のゴロツキに使っていた魔法では対処されるだろう。かといって本気で叩き込む訳にもいかない。
要するにマックスの実力が予想以上で、トリスとしてもちょっと困っているのだ。
「…死んでも知りませんよ?というか死にたくなければ全力で抵抗して下さい。」
トリスはし考えた後、死ななければ良いかと思考を放棄し、全力で初級魔法を使おうと腹を括る。
「ほう!面白い!その挑発、けてやろう!」
そんなトリスに、何とも言えない高揚を覚えたマックスは、ガンドレッドをぶつけあわせながら最高の一撃を放とうと全の魔力を高まらせる。
練習場に沈黙が訪れる。トリスはマックスの準備が出來るのを待ち、ニーナと神風の男は2人の様子を固唾を呑んで見守っている。
十數秒後準備が出來たようで、マックスは右手を大きく後に引いたままきを止める。
「行くぞ!トリス!」
「お、漸く名前で読んでくれましたか。」
未だに何の構えもとらないトリスの聲に、ついニヤリとしてしまったマックスだったが、すぐに真剣な目付きになる。
「オラァ!!」
 マックスは気合のった聲と共に、トリスからは距離があるのにも関わらずその場で拳を突き出す。すると右手からは人が3人はすっぽりとりそうな大きさの炎が吹き出る。
その炎はどうやら魔力によって固められていて、固と同じように質量を伴うと同時に高溫により焼き払う事が出來るという厄介な代であるらしい。そんなものが超高速で地面をガリガリと削りながら向かってきているのにも関わらず、トリスは安心したように呟く。
「程。これならば多は魔力を込めても大丈夫ですかね。」
言い終わると同時にトリスの周囲に火、水、風、氷、雷の初級魔法が複數現れる。それぞれ火矢ファイヤ・アロー、水の鞭ウォーター・ウィップ、風の刃ウィンド・エッジ、氷の矢アイス・アロー、雷ライトニングである。
「「な!?」」
ニーナと神風の男は思わずといった風に驚きの聲をあげる。それも當然のことであり、複數屬使えるということだけでも驚きであるのに、トリスは複數屬を同時に幾つも使ったのだ。それも無詠唱でだ。それだけでは無く、発させた狀態で待機させているというのも通常ではありえない景だ。
そんな馬鹿げた事をやってのけたトリスは、ニヤリと口元を歪めながら全て出する。
一撃が並の魔なら即消滅するような魔法により、マックスにより放たれた炎はどんどん勢いを弱めてゆく。
そして最後には雷ライトニングを殘して炎は完全に掻き消え、電撃がマックスを穿とうとした時ニーナがストップをかける。
「そ、それまで!」
その瞬間雷ライトニングはマックスを避けるようにきを変え、すぐに何事もなかったかのようにその存在を消す。
こうして、トリスの完全勝利で昇格試験は終わりを告げるのだった。
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