《転生王子は何をする?》第40話 この世界で生きるとは

地上に降り立ったトリスは、木々を抜けてくる魔族の軍勢を待つ。すると殘り數百メートルまで近付いて來た時、どうやら魔族達はトリスの存在に気が付いたようで、その行軍が一旦止まる。こちらを窺うような視線をじたトリスは、それを極力意識しないように無関心を貫く。

やがてトリスを危険な者では無いと判斷したのか、そのまま一斉に突撃を図ってきた。恐らくは念には念を押して、萬が一トリスが強者であったときに自達が痛手をけないように圧倒的量で潰すつもりのようだ。

『キシャァァァ!!』

數百メートルの距離を數瞬で詰め、トリスを覆うように數の昆蟲型の魔族が奇聲を発しながら襲い掛かってくる。

その瞬間、トリスはいつの間にか手に持っていた魔道マジックアイテムである片手剣に魔力を通し、その刀に炎を纏わせて全てを切り裂く。

「はっ!」

襲い掛かってきた魔族達は一瞬で切り刻まれ、更に切斷面から炎に焼かれて消し炭狀態で息絶えてしまう。

今にもトリスに襲いかかりそうだった後続組も、その景に呆気に取られてそのきを止めてしまう。

「ナ、ナンダト!?」

「コイツ!ヨクモナカマヲ!」

「ユダンスルナ!コイツハココデ、カクジツニシトメルゾ!」

どうやら魔族は予想以上に知能があるようだが、この化けに挑んだ時點で運命は決まっていた。魔族が怯んでいると判斷したトリスは、広域に効果範囲が及ぶ魔法を使う。

「…ふぅ。『霧の國ニブルヘイム』!」

「ナニ!?」

「タ、タイヒ!」

魔法の発兆候を捉えた一部の魔族は、逃げようとするがもう遅い。1度見渡す限り氷漬けにしてしまったことで幾らか効果を弱める訓練をし、何とか思うように範囲を決めることができるようになった魔法だが、その威力は以前にも増して上がっているのだ。

一瞬で先行部隊の魔族達を氷漬けにし、同時に周りの木々まで凍らせてしまったトリスは、大きく溜息をつく。

「はぁ〜…。思っていたよりも、神的な負擔がなかったことに、安心するべきかそうでないか…。初めて自分の意思で武力を持って斬ったんだよな。」

この世界において、を殺さずに一生を終える人はない。多かれなかれ大多數の人間は武を手に取り戦うことはあるのだ。特に今回のような異常事態には。

しかし地球では蟲より大きなモノは殺さない生活を送っていたトリスが、今更偽善者ぶる訳では無いが生を殺す事に払拭されないモヤモヤをじるのは仕方の無いことであろう。

この先恐らくは同族、盜賊等を殺害することもあるだろう。彼らは他者を躙する味を占めてしまい、もはや人では無く他のより知恵の回るただの害獣である。放っておけば、例え懲らしめたとしても必ず元の道に戻ってしまう。そのため発見した者は報告する、若しくは討伐の義務を負う事になる。

そんな世界で生きていくには、生を殺して一々心を痛めていては、神が持たない。ましてやトリスのような力を持つ人間は特にそうだ。

「…よし。もう大丈夫だ。俺は目的のためなら、相手が善でない限りは容赦はしない。」

に言い聞かせるように呟くと、転移テレポーテーションでギルドマスター室に戻ることにした。ちゃっかり収納インベントリーに數の氷漬けの魔族を詰め込んで。

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