《転生王子は何をする?》第50話 呪われてるんじゃないの?

「やっぱり僕を抹殺したい者の仕業かな?」

ホルストは口に手を當てて呟く。

「抹殺?ホルストは今何か面倒事に巻き込まれてるのか?」

「ん?や、僕は侯爵家の跡取りだからね。相手の狙いなんて、まるで検討がつかないよ。」

「さいですか。」

『慣れてるよ。』と言わんばかりの態度にトリスは若干引き気味で返答する。

「ま、まぁ兎も角ここで考えていても始まらないし、さっさと學園都市まで行って、捕らえた盜賊の引渡しと報告でもしようか。僕は尋問は苦手だしね。」

「ん?學園都市?ホルストも學園都市に行くのか?」

トリスはその事を知っていたが、そうでないフリをしてサラッとホルストに訊ねる。

するとホルストは嬉しそうな顔をしてトリスの言葉に食らいつく。

「『も』っていうことは、トリスも學園都市が目的地かい!?」

「あ、あぁ。學園都市の王立トゥール學園に學しようと思ってるんだけど。」

ホルストと食らいつき方に圧されながらも答える。

「そうなんだ!実は僕もそこに學しようと思っててね、良かったら馬車に乗ってくかい?」

「良いのか?」

「あぁ、勿論さ!ここで會ったのも何かの縁だよ。」

「いや〜、助かるよ。流石に歩きで行くのはちょっと心が折れかけてたからさ。」

トリスは思わぬ事態に破顔する。當初の予定では、學園に學してからホルストと接を図るはずだったのだ。當然メイドさんはいい顔をしなかったが、騎士達は直接助けられた事もあり比較的容易にれてくれた。

予定外の出來事であったが、良い方向に向かっていることにトリスは満足するのだった。2日後までは。

2日後、トリス達は學園都市まで殘すところ1日ちょっとの場所まで來ていた。ちょうど丘陵のような場所であり、馬車が坂道を上り後しで平地まで行けるという時に事件は起こった。

「ホルスト様!急事態です!」

先行していた騎士の1人が慌てた様子で馬車に馬を寄せる。

「何事ですか?まさかまた盜賊が襲ってきそうなのですか?」

メイドさん(メラニーさんというらしい)が騎士に質問する。しかし騎士の答えは斜め上のものであった。

「いえ、違います!丘陵を上りきった先にある馬車が襲われそうなのです!」

「「「はい?」」」

トリス、ホルスト、メラニーの聲が重なる。

だがホルストが即座に立ち直り、急いで指示を出す。

「僕が直接攻撃にる。トリスには援護を頼めるかい?」

「お、おう。」

「し、しかし!…はぁ。」

メラニーがそんな危険な事はさせまいと、ホルストに食い下がろうとするが、ホルストの真剣な眼差しを見て諦める。

そんなメラニーにホルストはふっと表を和らげて言う。

「大丈夫だよ、メラニー。僕の実力は知っての通りだし、トリスが支援してくれるんだ。」

「…はい、お気を付けください。」

メラニーに微笑みかけたホルストは、騎士に問う。

「距離は?」

「數百メートル先です。馬車と盜賊の距離は數十メートルといったところです。急げばホルスト様の魔法も有効打を與えられると思われます!」

騎士が一気に言い切ると、ホルストは頷きながら人間とは思えないスピードで言われた通りの方向に走り出す。

「速っ!強化の魔法でも使ってるか!?」

トリスは思わず聲を上げてしまう。しかし魔力をじない事から察するに、純粋に能力のみでありえない速度をだせるのだろう。

などと考えつつ、トリスも到底人間には出せない速度で追いかける。

-ふむ。このステータスだと高過ぎるかなとは思っていたが、ホルストを見る限りだと大丈夫そうだな。-

丘陵を上りきり、馬車が見えてくるとホルストがし速度を落としてトリスに話しかける。

「僕が魔法で最初に一當てしてから、剣を持って突っ込むから、その後に馬車を守るじで援護をお願い!」

「了解!」

トリスが返事をすると同時に、ホルストは魔力を高める。

「『ぜよ!大発エクスプロージョン』!」

馬車の橫っ腹から突っ込もうとしていた50人ほどの盜賊達の中心付近に、紅蓮の炎が生まれ、それは一気にぜる。いきなりのことで発に巻き込まれなかった20人ほどの呆然としている盜賊達。馬車の方でも、漸く異常事態に気が付いたようで、複數人が馬車から顔を覗かせ悲鳴を上げている。

「上級魔法を詠唱省略で!ってそんな場合じゃないか!よし、程範囲に到達したぞ!」

一方でトリスは呑気にホルストの実力に驚いているフリをしていたが、急事態なので自重することにして、ホルストに報告する。

「了解!『強化フィジカル・ブースト』!」

ホルストはトリスの聲を聞いて、どこからともなく取り出した剣を片手に、一気に十數メートルの距離を詰めて盜賊に切りかかる。

「ひいっ!ば、化け!」

「て、敵は2人だけだ!冷靜に対処しろ!」

「誰か馬車から人質を回収して來い!」

盜賊の頭領は頭を回転させて、人質を取ることに決めた。部外者であるのに、態々突っ込んできた2人組は余程のお人好しであると踏んだのだろう。

しかし2人の化けの前では、そんな作戦は無意味であった。

「させないよ?」

トリスは薄く笑みを浮かべると、頭領の聲に反応した何人かの盜賊に向けて矢を放つ。

その矢は綺麗に彼らの頭を撃ち抜き、一撃で絶命させていた。

「トリス!何人か報収集のためにとっておいて!僕の剣だと大抵が一撃で死んじゃうから!」

「ほ〜い、了解っす!」

ホルストの聲に軽く返答しながら、トリスは3人の盜賊の手足に矢を打ち込み、行不能に追い込むのだった。

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