《転生王子は何をする?》第85話 學前 21

魔王もどきを雁字搦めにしてその場に放置してから、トリス達がの狹い道を進んで10分後、ついに研究所の奧地と思しき場所までやって來た。

今までゴツゴツとした巖場で、進むのに一苦労するような地形であったのに、急に綺麗に整地がされている小部屋のような空間に出たのだ。

「あれ?行き止まりじゃないですか?」

リアが不安そうにホルスを見る。どうやら姉を早く助け出さないといけないのに、道を間違ってしまったのかと心配しているようだ。逃げ出した時は必死だったため、道がどうなっていたかなど覚えていないので、間違えるも何もないのだが。

それに、來た道に二又に分かれている道など、無かったのだ。リアがホルスに聲をかけようと、再び口を開きかけると、ホルスが納得したような聲を出す。

「あ〜、なるほど。の研究所だもんね。」

「ん?の?…あ〜、分かった。」

ホルスの聲に、トリスも考えついたようで、納得の聲をあげる。そんな2人に、リアは頬を膨らませて問う。

「むぅ〜。どういう事なの?教えてよ〜。」

「「お?」」

「?…あ。」

本気で知りたかったのか、若しくは2人に気を許したのかは分からないが、リアの口調が先程とは全く違うものとなっていた事に、トリス達は驚きの聲をあげる。そしてその聲に首を傾げていたリアだが、暫くして自分がどんな言葉遣いをしたのかを思い出し、口を大きく開けて間抜けな聲を出してしまう。

「す、すみません!助けてもらっている立場なのに、タメ口なんて!」

顔を真っ青にして平謝りを始めるリア。リアが2人の機嫌を損ね、力を借りることが出來なくなれば、自分を含め他の捕らわれている人達の救出が困難になってしまう。だからリアは必死に謝っているのだ。

しかしそんなリアの様子を見て、し困った顔でトリスをホルスが見てきたので、『どうにかしろ』という意味を込めて顎をしゃくって丸投げする。

トリスに丸投げされたホルスは、『そんな〜』という顔をしながらも、今にも土下座をしそうなリアを放っておく訳にもいかず、諦めてめにかかるのだった。

「リアさん。」

「は、はい!」

急にホルスに聲をかけられたリアは、ビクッと肩を震わせてホルスの方を見る。

産まれたての子鹿のように足も震えている。その様子を見てホルスは苦笑いをしつつ言葉を続ける。

「リアさん、僕達は寧ろ敬語を使われるよりは、タメ口の方がよっぽど気楽にいられるよ。それに僕達は同い年でしょ?あと、これから通う學園でも同級生だよ?それに僕達はもう敬語なんて要らない仲になってると思うんだけど、僕達の勘違いだったかな?」

ホルスは、リアのタメ口について気にしていないと伝える手前、まさか敬語を使う訳にもいかないので、優しげな笑みを浮かべながら諭すように話しかける。

トリスの言葉を聞いて驚いた顔をしていたリアだが、ホルスの最後の言葉がニヤリと、揶揄うような表であったことから、嬉しそうな笑顔になって言う。

「うん!ありがとう!」

「お禮を言われるようなことはしてないよ。僕がただリアさんとは仲良くなりないと思ったからこそ、困ってるリアさんに助け舟を出したんだよ。」

笑顔を浮かべながら片目を瞑って言うトリス。

その笑顔に見れているリアを橫目に、トリスが気が抜けた聲を出す。

「ふぅ〜。これで一件落著かな?」

「いや、まだ終わってないよね?というか何でトリスは僕に丸投げしたの?」

いつになく怖い顔で詰め寄ってくるホルス。

「い、いや、その。落ち込んだの子をめるのは、やっぱりイケメンのホルスの方が適役かな〜って。てへぺろ…って危なっ!?」

ホルスの問い詰めに、トリスなりに茶目っ気を効かせて返答するが、ホルスは大分イラついたようで、鞘にった剣をトリスの顔面を狙って橫薙ぎにしてくる。

それを慌てて避けたトリスは、その勢いのまま土下座の大勢にった。

「ごめんなさい!落ち込んだの子とか、どうやったらめるのか全く分からなくて、手慣れてそうなホルスに任せました!って痛い!」

正直に打ち明けると、再度イラついたホルスが今度は確実にトリスの脳天に軽く鞘にった剣をぶつける。

「それだとまるで僕がで遊んでるみたいなニュアンスになるよね!?トリスは一僕を何だと思ってるの!?」

「え?ハーレム製造機?」

「何でトリスが僕の稱號を知ってるの!?」

何故かつい最近新たに加わった稱號を、トリスが言ったことに驚くホルス。

どうやらローゼマリーとメラニー、それとギルドの付嬢のカミラの3人を攻略(?)したことで、條件が満たされ開放されたようだ。

「適當?というか見てれば分かる。」

いつの間にか條件を満たしてその稱號が現れていたことに驚いたトリスだが、どことなく納得出來る気がしてのほほんと答える。

しかしトリスが何故知っているのかと、ホルスの問い詰めはその後10分は続くのだった。

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