《転生王子は何をする?》閑話 マルティナの気持ち 1

マルティナ・アルムガルトは現在22歳で、結婚平均年齢が15,6のこの世界では比較的珍しく行き遅れているお嬢様だ。彼の実家は侯爵家であるのだが、トゥール王國は平和であり、貴族同士の抗爭もあまり見られないためか、政略結婚をさせられるでもなく自由に暮らしていた。

しかし家柄も申し分無く、容姿端麗であり、稱號に『天使』などと付けられるマルティナが何故結婚しないのかというと、それは10年前の出來事が原因となっていた。

當時マルティナは、街でガラの悪い男に襲われかけるが、そこを素敵な男に救われる、という在り來りな語を好んで読んでいた。最初は普通に語として楽しんでいたのだが、時間が経つにつれていつしか自分もそのような出會いをしてみたいと思うようになっていった。

そんなある時、マルティナにとあるスキルが発現する。そう、『天使の囁き』である。

「お父様。このスキルは一なんなのでしょうか?」

超高位な、それこそ神話レベルでの鑑定眼の持ち主でなければ、スキルや稱號の詳細は分からないため、マルティナは自の父でもあり、博識であると名高いヴォルフラム・アルムガルトに尋ねた。

「『天使の囁き』?ふむ、聞いた事が無いな。名前から察するに、恐らくは予知や予言、若しくはそれに近い事を知りうる事が出來るスキル、といったところだとは思う。…ティナ、このスキルの事はあまり人に知らせていはいけないよ。悪人に狙われてしまうだろうからね。」

「はい、分かりました、お父様。」

何でも知っていると思っていた父が、知らなかった事にマルティナは驚きながらも忠告には素直に従う。

から理解力に長けていたマルティナは、父の言わんとすることはすぐに理解出來たのだろう。

そういう希なスキルの持ち主は、いつだって悪人に利用されるのが世の常である。そのためマルティナはスキルについて、忘れるように努力したのだった。

しかし數週間後に、ある異変に気付く。頭の中に急に言葉が浮かんできたのだ。

『運命の出會いは近い』と。

そしてその言葉には、イメージが付隨しており、どのようにすればその運命の出會いとやらが起きるのかが、漠然と分かるのだ。

そのイメージとはこうだ。マルティナの習慣である月に一度の買いで、護衛達の目を盜んで抜け出して、いつも行く洋服屋の近くの路地裏にれば、必ず運命の出會いがある、と。

「こ、これは…。」

マルティナの憧れである、語のような出會いが出來るとなると、彼は自分の衝を抑えることは出來なかった。

今まで護衛達に迷をかけなかったためか、拍子抜けするほど簡単に抜け出したマルティナは、イメージ通りに路地裏へとっていく。しかし、マルティナを待ちけていたものは、彼の思い描いていたものとは違うものであった。

「おや、お嬢ちゃん。こんな路地裏にろうとするだなんて、襲ってくださいって言ってるようなもんだよな?」

「そうだな。清楚に見えて、案外なのかもな!」

「げひゃひゃ!どうでもいいから、俺達と遊ぼうぜ!」

どうやら目を付けられていたようで、路地裏にろうおした途端に、後から追ってきた男達に取り囲まれてそのまま連れ込まれてしまう。

「ひっ!」

人の悪意にれたことのないマルティナは、男達の悪どい笑みと言葉に、言葉もなく震えることしか出來ないでいた。

「おいおい!自分からっておいて、震えてやがるぜ!」

「はははは!ってないだろ!多分コイツお嬢様だから、脳花畑なんだろうよ!」

「違いない!ま、今からそのを以て、世の中は危険だという事を學ばせてやるんだけどな!」

「授業料は、そのってか!ギャハハハハハ!」

震えているマルティナを見て、その嗜心が唆られたのか、更に高圧的になる男達。

-わ、私は何てことを!護衛達は當分私の居場所は分からないだろうし、例え気付いたとしてもこの人數を倒すには時間がかかりすぎる!その間に私は間違いなく…。-

こんな時であっても、冷靜に狀況が判斷出來る自分を、どこか可笑しくじながらも、マルティナは自の絶的な狀況を認識する。

「久しぶりの上玉だ!半日は遊んでやるぜ!」

「おいおい!そんなにやったら、神がもたないだろ!」

「なら気を失わせて、とかな!」

「いや、最初は意識があった方が良い!無理矢理とか、滾るよな〜!」

ゴミクズのお手本みたいな會話をしながら、マルティナの首っこ摑み、更に路地の奧に連れ込もうとする男達。

もう完全にマルティナが諦めかけた時、その聲はかかった。

「ねぇ、何か楽しそうだね。」

子供の聲であったが、何故かマルティナにはとても頼もしく聞こえるそれは、トリスから発せられたものだった。

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