《転生王子は何をする?》閑話 マルティナの気持ち 3

「トリスさん、ですか。」

マルティナは噛み締めるように、その名を反芻する。

だが語ではそれに続いてヒロインが自己紹介をしていたので、慌ててそれに倣う。

家名を聞いた瞬間、トリスの口がし開いたので、驚かれたのを察して気にしないでと伝える。するとトリスは『分かったよ』と態々フレンドリーな言葉遣いをし、マルティナに気を遣ってくれる。そして何とマルティナを安全な所まで送ってくれると言うのだ。

この機を逃すマルティナでは無い。トリスにり寄り、距離を詰めてどんどん會話をする。途中トリスはそんなマルティナに圧されていたが、それでも丁寧に返事をしてくれ、マルティナの好意は更に強くなる一方であった。トリスからは、普段男と話しているとマルティナに注がれる、じる厭らしい視線があまりじられず、それでもしはじるのだが、自制を必死にしているのかと思うと、寧ろどこか可らしくじ、それもまたトリスに夢中になる材料となった。

「トリスさんて、本當に5歳なんですよね?」

「え?はい、そうですが。」

しかし5歳児から的な視線をじた事の無いマルティナは、不思議に思って質問する。すると若干そっぽを向きながら答えたので、怪しく思って更に質問を重ねようとするが、トリスから被せるように話題が提供され、有耶無耶にされてしまう。

納得いかない気持ちを抑えつつも、トリスとの會話は楽しいのでついのってしまうマルティナ。平民とは言ったが學があり、マルティナの好きな魔法にも深い知識を持っていて、家族以外の男との會話を心の底から楽しめたのは、実に久しぶりであった。

の頃はじなかったが、『アルムガルト侯爵家のご令嬢』という眼鏡で見る視線や、的な視線を相手が向けてくるので、最近は男との會話は苦痛でしかなかったのだ。

當のトリスは、を好きにならないように・・・・・・・・・・・・・意識して見ないようにしているのだが(特にトリスの好みのを)。に狂えば、前世は兎も角今生ではどうとでもなってしまい、恐らくは抑えが効かなくなるだろうという、言ってみれば自分に自信が無い現れだ。

そんな事を知らないマルティナは、好度をアップさせていく。だが、そんな楽しい時間はそう長くは続かず、人通りの多い道へと出てしまう。

-もうトリスさんと話す口実が無くなっちゃう!ここは何とか引き留めたいところだけれど、ローブで顔を隠しているのを見ると、多分目立ちたくないんだよね。それにこの年であの実力となると、貴族達にに利用されるのが目に見えてるからお父様にも紹介は出來ない…。あ!確か語では、何か私と繋がりを示すを渡すはず!そうだ!これを渡そう!-

マルティナは必死に頭を回転させ、腕から特注品のブレスレットを取る。そしてトリスに差し出してお禮を言う。するとトリスは恐きた様子で、差し出されたブレスレットをすんなりとけ取ってくれた。

-や、やった〜!これで何とか繋がりが消えなくてすんだ!-

心の中でマルティナは狂喜狂していたが、表には出さないように必死に耐えながら、トリスに別れを告げてその場を後にする。

その日マルティナが、護衛と合流し屋敷に帰った後、護衛達から報告を聞いた両親にこっぴどく叱られたのは言うまでもないだろう。しかしその日の夜、マルティナはトリスから貰った紅茶の瓶を大事に抱え、しにやけながらもらよく眠れたのだった。

「…う、う〜ん。…懐かしい夢をみたな〜。」

マルティナはベッドでし微睡みながら呟く。トリスと出會ってから10年後、マルティナは教員としてトゥール學園に勤めており、今日は験日であった。マルティナの擔當は魔法実技の試験だ。

「さてと。そろそろ起きて、準備をしないとね。」

マルティナは起き上がり、學園へと向かう準備をしようとする。と、その時マルティナの脳にとある単語が浮かんでくる。『今日、運命の人と再會するであろう』と。そしてその単語には、予定通りに學園に向かえというイメージも付屬している。

久しぶりのスキルの発に、マルティナは驚いてしまうが、意味を理解してくるとその顔をは段々とにやけてくる。いや、し涙ぐんでいる。

「トリス君…。」

10年間想い続けた、その名前を口にする。中々発しないスキルに、あの魔王軍の襲來で、若しかしたらトリスは死んでしまったのではという事を考えていたため、生きているという事に極まって涙ぐんでいるのだろう。

「漸く、漸く會えるんだね…。よし!早く行こう!」

マルティナは勢い良くベッドから立ち上がると、準備をあっという間に整え、予定通りを心がけてながらもし早足で學園へと向かう。

こうして彼は數時間後、トリスとの10年ぶりの再會を果たすこととなるのだった。

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