《転生王子は何をする?》第99話 ありふれた學園生活? 2

「…あ、來たこれ。」

「え?何が?」

新學期二日目からいきなり授業をけていたトリスは、開始から十數分後にそう呟く。

現在はマルティナのけ持つ魔法理論の授業であるのだが、軽く門的なじのためトリスは退屈していた。そのためトリスにとあるものが襲いかかってきたのだ。

トリスの呟きを聞き取ったホルスに、トリスはそれ・・を必死に堪えながら言う。

「…ね、眠い。というかもう寢る…。」

「はい?」

何のことは無い、トリスはただ眠くなってしまっただけである。新學期という事もあり、周りのクラスメイト達は真剣に耳を傾けているのだが、如何せんトリスは新學期というのは何度も経験しているのでどうしてもが無いのだろう。

『ゴン』と音を立てて機に突っ伏したトリス。

音を立ててしまったので、勿論マルティナに気づかれてしまう。

「トリス君?寢不足なのかな?…は!?若しかして夜遊びで寢不足!?トリス君!私はそんな子に育てた覚えはありませんよ!」

「ちゃいますよ!新學期早々夜遊びとか、普通じゃないですよね?というか先生に育てられた覚えもありません!」

ツッコミどころ満載なマルティナの言葉に、トリスはガバッと起き上がってぶ。

「じゃ、じゃあ私の話は退屈だった?」

潤んだ子犬のような目をしながら、マルティナは不安そうに言う。

「そ、そういう訳じゃないです。その、真面目に聞きますから、授業続けてください。」

マルティナの視線に負けたトリスは、仕方なく折れて大人しく授業に集中することにする。

「うん、お願いね。」

トリスが態度を改めると、マルティナは潤んだ子犬のような目を即座に止め、満面の笑みを浮かべる。

「演技…だと?」

「トリス?」

「いえ、何でもないです。はい、真面目に授業けます。」

マルティナが演技でトリスにそういう視線を向けてきたことに、若干お巫山戯をれながら驚いてみせるが、トリスの隣から心做しか低めのトーンでホルスが名を呼んできたため、慌てて姿勢を正してマルティナに目を向けるトリスだった。

「トリスって、実は不真面目な人?」

「ん〜?どうだろう?俺は昔からすぐ眠くなるんだよな。いくら寢ても、寢た気がしないというか。」

授業が終わった直後、開口一番そう問われたトリスは曖昧に言葉を返す。

実際前世からそういう質であったので、最早質ではなく神的な何かが原因となっているのだろう。か闇屬の魔法を駆使すれば、治せない事もないのだろうが、生活に支障が出るわけでもないので放っておいたのだ。

「あ〜、確かにトリスはいつも眠そうだよね。で、簡単なところだったからつい眠気に負けてしまったと。」

普段トリスと一緒に居るホルスは、普段から眠そうにしているのを思い起こし、納得したようでウンウンと頷いている。

「お〜、分かってくれたのか。」

「うん。…ところで昨日は、いや、今日は何時に寢た?」

納得してくれたことに一息ついたトリスに、ホルスは鋭い指摘をする。

「うん?あ〜、えっと、その、2時くらい?」

その指摘にトリスは迷いながらも、ボソッと小さな聲で正直に告げる。

「原因それだよ!」

「う!それはその、なんと言いますか、たまたま面白い本を見つけちゃったからついね。…てへっ。」

ホルスの追求から逃れようと、トリスは全力でてへぺろを敢行する。

トリス自はたまに忘れるのだが、彼の現在の容姿は母であるフランセットによく似て可らしい。また男であるので可らしさの中に凜々しさも見られ、獨特な雰囲気も持ち合わせているため、大抵の事をしていても絵になるのだ。

つまるところ何が言いたいかというと、トリスの行った『てへぺろ』は、トリスの思っていた以上の破壊力を持つことになる。それはすなわち──

『バターン!』

『マルティナ先生が鼻を出しながら倒れた!?』

──と、このようにマルティナのハートにクリティカルヒットするのだ。

「え?」

「は?」

トリスとホルスも呆気に取られて倒れたマルティナを見る。

「トリス君…最高です。うへへへへ…。」

最高に緩んだ表で呟くマルティナ。トリスの一撃で夢の國に旅立った後も、幸せな夢を見ているようだ。なにやら抱きしめる仕草すらしている。

「オーマイガッ!これは恐怖をじ得ないっす。…と、そんな事よりホルス!早く回復を!倒れた時頭でも打ってたら大変だから。」

「う、うん。『回復ヒール』。…いきなりどうしたんだろうね。」

回復魔法をかけ終わったホルスは、首を傾げてマルティナが倒れた理由を考える。

それを倣ってトリスも考える。

「さぁ?俺の名前呟いてるって事は…『てへっ』とか言った時の俺を見てたとか?いや、でもそんな事で倒れる奴居るのか?」

モロに正解を口にしたトリスだが、自分に外見的価値がある事に慣れていないので、すぐに否定にる。客観的に鏡で見れば『イケメンだな』とじるのだが、長年のローブ姿での生活の弊害で、周りに曬すことが無かったので普段はイケメンであるという事が実として湧かないのだろう。

「いや、多分それだと思うけど。」

ホルスは若干呆れながらツッコミをれる。

「え?そんな馬鹿な。というか、まだ起き上がらなそうだから、さっさと保健室に持って行k…運んでやろうぜ。」

トリスは尚も否定しながら、未だに夢の國に旅立っているマルティナを見て言う。

「ちょっと?今何かマルティナ先生の事、持って行こうとか言おうとしなかった?」

「き、気の所為じゃね?ほ、ほら。早くお姫様抱っこでも何なりしてやれよ。」

『先生』に対して失禮な事を言ったトリスに、ホルスは追求しようとする。しかしトリスは最もなことを言いその場から逃れようとする。

「はい?トリスが抱えてく他にないでしょ?あ、これ決定事項ね。」

「え?マジ?拒否権は…無いっすよね。うん、分かってた。」

トリスはなるべくマルティナに近付きたくない一心(別にマルティナが嫌いなわけではない)で聞くが、教室中から刺すような視線で『良いからお前が早く運べ』と無言の圧力をかけられたので、肩を落としながらマルティナに近付くのだった。

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