｢えっと、フロレンティーナ様。｣

ホルスは真剣な表で、フロレンティーナの目をしっかり見て手を取り、覚悟を決めようとする。

｢はい、何でしょうか？あ、これからは私わたくしのことは、ティナとお呼びください。｣

｢え？あ、はい。ティナ…でいいですか？｣

がしかし、フロレンティーナの思わぬ言葉に戸い、素直に聞きれてしまう。

｢はい。出來れば敬語も止めていただきたいですが、それは後々という事で。｣

すると満足そうな表をした･････フロレンティーナ。

｢え？は、はい。｣

｢ジー…。｣

｢わ、分かったよ。だからそんな目で見ないで。コホン。…ティナ。｣

｢はい、何でしょうか？｣

腑抜けた顔をしていたホルスだったが、トリスの視線に気付き、慌てて予定通りの言葉を口に出そうと、再びフロレンティーナに目を合わせる。

｢僕は、ティナのような綺麗なに、あの様に距離をつめらた事がなくて、とても張してしまうんだ。｣

｢はい。｣

通常のなら、顔を真っ赤にしてしまいそうな言葉を、無表で頷いて流すフロレンティーナ。

そんなフロレンティーナに手応えを全くじないホルスは、トリスの計畫に若干疑問を覚えるも、他に手がないので言葉を紡いでいく。

｢ティナの息遣い、溫もり、仄かに香るいい匂い。どれをとっても僕には刺激が強いんだ。だから、ここは1つ僕を助けると思って、席の距離を定位置まで戻してくれないかな？｣

何とも生々しい表現に、流石のホルスもし顔を朱に染めながら、それでも優しい笑顔を意識して、更に距離を詰めて言う。

｢はい──｣

｢おぉ、ありがとう！｣

フロレンティーナの言葉に、『ここまでした甲斐があったか！』と喜びを発させるホルス。しかし続く言葉でドン底に突き落とされる。

｢──お斷りします。｣

｢な…。｣

｢ズコーッ！｣

ホルスは唖然、トリスは態々口に出しつつずっこけて居る。

これには周りで見守っている生徒達も口々に戸いを顕にしている。

｢なんだと!?あのホルスト様の笑顔を、至近距離で回避した!?｣

｢噓っ!?男でも落ちると言われている、ホルスト様の笑顔を!?｣

｢あの笑顔、守りたいわ…。｣

｢無表で斬り捨てるお姉様！素敵だわ！｣

…半數ほど趣味を優先したびだったが、それでもホルスの笑顔には一定の定評があるらしく、表を変えないなど最早人間の所業では無かった。

-噓だろ、おい！不意をつかれれば、枯れてる俺ですら驚くってのに、例えフロレンティーナが同者であっても、見ようによっては可らしいとも天使とも表現出來るホルスの笑顔を、無表でけ流すなど無理だろ！-

｢ど、どどどどど、どうするよ!?｣

｢いや、トリス！噛みすぎだから！｣

｢…？｣

慌てる2人を見て、小首を傾げるフロレンティーナ。

｢！｣

｢え？急に目を見開いてどうしたの？｣

今まで見た中で、最も綺麗で可いフロレンティーナがやれば赤面モノである筈なのに、それを見て何故か背筋に冷たいものが走り、言葉を失うトリス。

｢トリス？お〜い？｣

｢…ん？あ、あぁ。ちょっとこっち來てくれない？緒の話があるんだけど。｣

｢え？うん？｣

放心狀態のトリスを、ホルスは肩を揺さぶって現実世界に呼ぶ戻す。

するとトリスは最初は戸っていたが、すぐに真剣な顔付きになり、ホルスの肩に手を回しながら廊下に連れ出す。

｢1つ、フロレンティーナ様について、仮説がある。｣

廊下に出ると同時に、小聲でトリスは話し始める。

｢！どういう仮説？｣

｢おう、それはだな、さっきので確信したんだけど、彼からは…いや、自意識がじられない･･････････。｣

トリスは言葉を選びつつ、なるべく正確な言い方になるように言葉を紡ぐ。

｢？どういう意味？｣

しかしあまり上手くホルスには伝わらなかったようで、小難しい顔で腕を組んでいる。

｢う〜んと、つまり、彼自の意思でいているように見えないって事。｣

｢そ、それはつまり、誰かにられているって事？｣

｢あぁ。昔、何かの本で読んだんだけど、魔力はによって多の波長の変化が見られる事があるらしいんだ。で、俺たちみたいな結構覚の鋭い奴らだと、それを気配みたいにじられるらしいんだ。｣

事実、トリス達は冒険者として魔を狩る際、殺気のようなものをじ取って攻撃を躱したりする事が出來る。

｢って事は、この間気配がイマイチ摑めなかったのは、それが原因って事？｣

｢多分な。で、自意識が無いって事は、誰かがっているという事になる。それも大分時間をかけて暗示みたいに魔法をかけられたんだろうよ。｣

眉を顰めながらトリスは言う。あまりいい気分では無いようだ。

｢ん？どういう事？｣

自意識が無いという事に気を取られていたホルスは、トリスの言葉の意味が分からなかったようで、聞き返してくる。

｢自意識が無いのに、生活を常人のように、特に違和なくこなせるんだ。よっぽど多くのパータンを最初から組み込んでおかなければ、そうはいかないだろ？｣

｢うん、そうだね。それはつまり、フロレンティーナ様がの頃から魔法を使われていたという事を意味するよね？｣

｢あぁ。1、2年でどうにかなる代ではなさそうだしな。｣

｢という事は、狙いは分からないけど、黒幕はフォルツ王國の上層部。若しくはソイツらに依頼された組織の仕業か…。｣

｢あぁ、そうなるな…。｣

結論に至った2人の間に、重苦しい空気が流れるのだった。