《転生王子は何をする?》第120話 名(迷)探偵トリスの事件簿

「さて、それでは解除をお願いしますかね?」

十數分後、すっかり泣き止んだトート。そんな彼のベッドにフロレンティーナを寢かしたトリスは、ポンと手を打ち解除をお願いする。

「は、はい、分かりました。ですが、その…。」

するとトートは非常に言いにくそうに、言葉を詰まらせている。

「え?どうかしたの?」

そんなトートに、ホルスが優しい口調で聞く。どうやらトリスが隣の部屋に行っている間に、トートに対してホルスはタメ口で話しかけると決定していたらしい。

「えっと、その、実は、フロレンティーナ様達の暗示は、私達舊王家に伝わるオリジナル闇屬魔法の封印シールというものを使い自意識を封じた後、地道に語りかけて行をさせるという方法で行われたんです。」

優しい口調のホルスに後押しされ、トートは暗示の仕組みについて語り出す。だがその容に言いにくい事など無いようにじたホルスは、疑問符を浮かべつつ、話を促す。

「?つまり?」

「つ、つまり、封印シールを解けば、後は自然に自意識が戻ってくる筈なんですが…。」

気まずそうに言葉を濁すトート。

そこでピンときたトリスは、口を挾んでみる。

「と、言う事は、その封印シールとかいうものを解く方法に、ちょっと問題があるという事で良いですか?」

「トリス、どういう事?」

トートは頷いているが、トリスの言わんとする事が微妙に分からないホルスは、首を捻りながら聞く。

「ん〜、つまり、封印シールを解くには、例えを挙げるならば、する者の接吻が必要とか?」

トリスはホルスに対して適當に答える。『お姫様の封印を解くには、やっぱり王子様のキスっしょ!』という、話を知っている人なら誰でも思うであろう事を口にしただけなのだが。

しかし、この世界ではそのような話は一般的では無いようで、ホルスはポカンとしている。

一方でトートは、どういう心境なのか目を見開き、口をあんぐりと開けている。

『折角人なのに、そんな顔は勿ないな』とトリスが心の中で苦笑していると、唐突にトートがトリスに摑みかかってくる。

「な、何で分かったんですか!?封印シールを使うには、封じるものと、それを解く鍵、つまり方法を設定しなければならないと教えてない筈なんですが!?」

「え?世間一般常識じゃないですか?」

涼しい表でトートのびをけ流すトリス。実際には、目の前で大質量の2つの山が揺れている訳で、し目を逸らしているのはごである。

數分後、トリスへの猛質問タイムが終わる頃には、ホルスも完全にどういう狀況なのかを理解する。

「という事は、ティーナがしている人を連れてくれば良いんだよね?」

ホルスがそう言うと、トートは『ん?』という顔をする。

「ティーナ?」

どうやらティーナという呼び方が気になったようだ。

「え?あぁ、フロレンティーナの事だよ。何かそう呼んでくれって言われたんだ。」

フロレンティーナから呼んでくれと頼まれたと説明するホルス。その様子が、人にとの関係を責められる男に見えたトリスは、若干吹きそうになるが、トートの言葉に固まる。

「え?そんな事、暗示したかな?コホン。で、している人なんですけど…。」

トートから発せられた重要な発言に、トリスはニヤリとする。

しかしそんなトリスの様子が目にらなかったホルスとトートは、話を続ける。

「ティーナのしている人は、ここに連れてくるのが難しいの?」

「フロレンティーナ様にはの頃には既に封印シールを行使していますので、している人とかいうのはちょっと…。」

頭を悩ませる2人。

トリスは別に推理小説に出てくる探偵では無いため、勿ぶるまでもなく謎が解けたと思えばそれを実行に移す。

「あ〜、確かにそうですね。どうしたもんか…。お?こんな所に王子様が居るじゃないか〜。王子様〜。お姫様をお助け下さ〜い。」

棒読みで変な臺詞を言うトリス。

そんなトリスに、ホルスとトートは驚いて話し合いが止まる。

「「え?」」

『一何を?』という表のままこちらを見ているホルスの肩を摑み、トリスは引っ張りつつ足を引っ掛けて自分の後ろにホルスをうつ伏せに倒す。

「…ていや〜!!」

「のわぁ!?」

トリスはベッドに背を向けて、ホルスとトートはそのトリスの正面に居たため、ホルスは丁度寢ていたフロレンティーナに覆い被さる狀況になる。

「な、何を…「いいから、ちょっとその勢のまま聞いてくれ。」う、うん。」

「え?え?」

文句を言うホルスに、トリスは有無を言わせない口調で言う。

「トートさんも、ちょっと聞いて下さい。」

「は、はい。」

トートも戸っていたため、トリスは口に人差し指を當てて靜かにしてもらう。

人差し指を口に當てる行為が、この世界では別に靜かにしろという事を意味する訳では無いが、狀況から察してトートは素直に頷く。

「さぁ、謎解きを始めようか!」

自信満々なトリスの聲が、靜かになった部屋に響くのだった。

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