《転生王子は何をする?》第143話 両親に挨拶を…?(4)

「さてさて、話が落ち著いたところで、ゆっくりと茶でも飲もうか。」

 そう言ってトリスは、自らで用意した紅茶に口をつける。

「そうだね。」

「うん、頂こう。」

 それに倣い、2人も紅茶を飲み始める。だが、それを見るトリスの視線が実怪しい。

「「…ッ!?」」

 2人は、お茶を口に含んだ瞬間、途端に青ざめた表になり、涙目になって、口元を抑え始めた。

「プッ!2人揃って引っかかったな!」

 「「〜〜!!」」

「何言ってるか分かんないよ〜。わははは!」

 トリスが紅茶と偽って2人に出したのは、なんとセンブリ茶である。つい最近になって、エコール近郊で、センブリの群生地を発見したので、試しに煎じて飲んでみたところ、異世界でも相変わらずの威力を発揮したので、こうしてお披目をしたのだ。

「と、トリス!一何を飲ませたの!?」

「こ、この不味さ!まさか、毒ですか!?」

 トリスに、飲み込むように手振りで示された2人は、何とか口の中を空にするが、それでも尚舌に殘る味に、四苦八苦しているようだ。

「いやいや。毒なんか盛るわけ無いじゃん。それに本気でやるなら、味がしない、遅効の致死毒を盛るし。」

「「あ〜…。」」

 トリスの言葉に、完全に納得した様子である。

「でだ。これ、結構良い商売になりそうだぞ?」

「何ですって!?不味さでいえば、人生の中でもピカイチのこれがですか!?」

「え…。」

 トリスが商売の事を持ち出した瞬間、先程までホルスと仲良く悶えていたグレゴールは、目を輝かせてトリスの話に食いつく。

 その変貌ぶりに、ホルスは苦味も忘れて驚いてしまう。

「おう。これはセンブリ茶っていう名前のお茶で、センブリっていう植を乾燥させて、熱湯に浸して出來上がり。効能としては、胃腸の調子を整える、育、ダイエット、、etc…、ってじ。」

「実証は?」

「俺がこの間渡した、生薬の解説本の中の、センブリのページと、付近に住んでいた村民それ自が証拠になってる。その村では、小さい頃から習慣で飲むらしくて、非常に健康的な者ばかりだったな。ほい、これがその村の位置。」

「ありがとうございます。後日その村に、調査隊を派遣します。」

「えぇ…。」

 トントン拍子で話が進んでいくのを目の當たりにしたホルスは、もはや言葉が無い。

「…ってなじよ。俺の、変わった、驚かされるような、そんな考えを親父に提案して、親父の伝手と財力を利用して、儲けるってじだな。」

 先程、散々言われていたのをに持っていたトリスは、ニヤリと意地悪く笑いながら、ポカンとしているホルスに解説する。どうやら彼は、自分の普段している事を、簡単に説明するために、態々、商売のタネを持ってきたようだ。

「…なるほど。最近のカレンベルク商會の謎のアイデアマンは、トリスだったって訳か。いや〜、納得したよ。」

「ま、まぁね。てか納得って…。」

 異世界の知識をそのまま移植してる形なので、ホルスの屈託ない笑顔での賞賛に、若干の罪悪じるトリス。

 そんな中、いきなりドアがノックされる。

『グレゴール様。お客人がいらっしゃいました。お通ししても構わないでしょうか?』

 外から扉越しに、アメリアの聲が聞こえてくる。

「來客…ですか。」

「別に構わないから、通してやんなよ。」

「はい、大丈夫です。」

 突然の報告に、グレゴールはチラッとトリスとホルスに視線を向けるも、遠慮は要らんと一蹴される。

「分かりました。アメリアさん、この部屋に通して下さい。」

『はい、畏まりました。』

 アメリアに返事をすると、彼はスタスタと足音をたてて、扉の前から離れていく。

「よし、じゃあ、席を変わっとくか。」

「だね。グレゴールさん側に、僕達が座るって事で良いですか?」

「えぇ、それでお願いします。まさか、立たせておく訳にもいきませんからね。」

 思わぬ來客にも関わらず、特に慌てることもなく対応する3人。

ーしかし、こんな時間に客人?思い當たる者は…あ、なるほど。彼達ですか。ー

 客人が誰であるか検討がついたグレゴールは、トリスに対して哀れみを込めた口調で告げる。

「トリス、頑張って下さい。何があろうとも、私は貴方の味方ですからね。」

「え?急にどうしたん?客人に心當たりでもあんの?…おい、まさか、あの人達に、俺がここに來る事言ってないよな?」

「さ、さぁ?どうでしたっけ?ちょっと記憶に無いですねぇ。」

「あ?とぼけるのも『トリスちゃ〜ん!!!!!!』うげぇ…。」

 グレゴールの口調から、誰が來るかを察したトリスは、顔を引き攣らせながらも、追求しようとするが、それは廊下から響く、の聲によって完全に掻き消されてしまう。

 その聲を聞き、誰が來るのかを完全に理解したトリス。非常にゲンナリとした表で溜息をついているが、その口角はし上がっていた。

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