《転生王子は何をする?》第144話 両親に挨拶を…?(5)
『トリスちゃ〜ん!!!!!!』
「うげぇ…。」
 廊下から響くの聲に、トリスは頭を抱えるが、どことなく嬉しそうでもある。
 そんなトリスの様子に、ホルスは不思議そうにするが、取り敢えず様子見をする。
 聲が聞こえてから5秒ほど後、ノックも無しに、ドアが凄い勢いで開かれ、1人のが飛び込んで來る。
「トリスちゃ〜ん!久し振り〜!」
「母さん・・・、落ち著いてってば。この頃顔をあんまり出さなかったのは謝るからさ。」
 ソファに座ったままでは、隣に居るホルスにも被害が及ぶと思ったトリスは、ドアが開くと同時に立ち上がっていた。
 そしてそこに、トリスから『母さん』と呼ばれたが飛びついて、トリスはされるがままになっている。
「むぎゅ〜!久し振りのトリスちゃんだ〜!」
「く、苦しい…。あ、えと、この人は―――。」
 ホルスの視線に気が付き、トリスは紹介を始めようとするが、が自分のにトリスの顔を抱き込み、喋れないようにしてしまった。
「あ〜、ホルスト君。これは、私の妻のラウラです。見ての通り、トリスの事が好きすぎまして、いい加減、子離れした方が良いとは思っているのですがね。なんともはや、お恥ずかしい限りです。」
 ラウラは、明るい赤の髪を後ろで結っており、目も同じく赤である。外見は30後半くらいに見え、その顔立ちは、もうし若い時には、道行くすれ違った人の半數は振り返りそうな程の人である。
 長はトリスよりし小さい程度であり、し細ではあるが、非常に満な部裝甲を誇っており、トリスは完全に息が出來ない狀態にまで持ってかれていた。
「い、いえ。トリスは結構、好かれる時はベッタリと好かれるタイプだと思うので、ラウラさんのご様子も、凄く納得です。」
 自のピンチの最中に、勝手に人間関係を分析されるトリス。『何じゃそりゃ!』と言いたいトリスだったが、中々聲にならずに、苦しみ悶えている。
「―――ッ!」
「うふふふふふふ。」
 一方で、抱き締めているラウラの方は、至福といったようなじの笑みを浮かべ、本當に幸せそうである。
「は、母上。そろそろトリス兄さんを離してあげた方が良いと思います。ちょっと苦しそうですよ?」
「そうよ母上!次は私の番よ!」
「その次は私です!」
「え!?」
 ホルスがラウラにすっかり気を取られているに、何時の間にかもう3人、部屋の中にって來ていた。全く気付かなかったため、ホルスは驚いてしまう。
「えっと、君達は、もしかして、ルーカス君、ベルタさん、ベアタさんかな?」
「はい、そうです。僕がルーカスで。」
「私がベルタ。」
「私がベアタです。」
 ホルスの問いかけに、順繰りに自己紹介をする3人。
 まずルーカスは、活発そうな短髪であるが、どこかオドオドしている、12歳の年だ。
 次にベルタは、赤の髪と目の、気の強そうなである。そしてベアタはベルタと同様の見た目だが、どこか大人っぽい雰囲気を持っていた。彼達は11歳の雙子である。
「〜〜〜ッ!」
 苦しすぎて、とうとう耐えられなくなったトリスは、両腕をラウラの背中に手を回し、何故か力強く抱き締める。
 そうして10數秒後、大変満足した様子のラウラから、漸くトリスは解放される。
「うふふ。よく分かってるじゃない。」
「當たり前だよ。何年の付き合いだと思ってるの?」
 どうやらラウラからの抱擁は、トリスが抱き返さないと、終わらない仕組みであったらしい。しかし、未だにそのノリに慣れないトリスには、些かハードルの高い條件であり、久しぶりという事も加味されたのか、中々踏み出せなかったらしい。
「兄様!次は私よ!」
「兄様!次は私です!」
「あ、できれば僕も…。」
 この一家、抱擁をしないと満足出來ないのか、トリスの前に、列を為している。
「はいはい。分かったよ。」
 子供組の扱いには慣れているのか、今度はトリスの方から、順番に抱き締めている。
 そんな景を、ホルスはただ眺めることしか出來なかった。
「さて、紹介しようか…って、既に親父がしたか。じゃあホルスの事を紹介しよう。」
 抱擁を終えたトリスは、ホルスの方に向き直り、彼達を紹介しようとしたが、先程グレゴールが行っていたのを思い出したようだ。そのため、逆に彼達にホルスの紹介を行う。
「えっと、コイツはホルスト・ラ・レンバッハ。名前の通り、レンバッハ侯爵家の子息だ。俺の友達をやってくれてる良い奴だから、これからよろしくな。」
「あらあら!トリスちゃんのお友達!この子、同年代の子と、全然関わろうとs…」
「母さん、余計な事言わないで。」
 トリスのぼっち時代を喋ろうとしたラウラの口を、慌てて手で塞ぐトリス。
「えっと、ホルスト・ラ・レンバッハです。ホルスとお呼びください。よろしくお願いします、ラウラさん、ルーカス君、ベルタちゃん、ベアタちゃん。」
 『初対面で馴れ馴れしいかな?』とも考えたホルスだが、トリスの家族と仲良くなりたいと思ったホルスは、正直にその気持ちに従う。
「はい、お願いします。僕のことはルーと呼んでください。」
「私の事はベルと。」
「私の事はベアと呼んでください。」
 まだまだ子供であるのに、中々にしっかりとしているようだ。…なくとも、口を塞いでいたら、気が付いたらそのに抱え込まれるようなヘマをする者と、楽しそうにそれを実行しているに比べれば。
 こうして、トリスの家族紹介は、概ね平和的に終わったのだった。
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