《異世界に転生したので楽しく過ごすようです》第184話 邂逅と覚醒のようです
俺は心強い仲間達を加え気持ちを新たにした。教皇を止めるのなら、信頼出來る仲間が多い方がいい。
今、ここにいる人達以外は悪魔にされていた人達を連れて退卻してもらっている。言い方は悪いと思うが、正直に言うと教皇と戦う時に邪魔になってしまうからだ。
ニーナを殺された時のあの時の速さは異常だった。もしかすると今の狀態でも間に合わない可能があったが、そんな事を気にしていても仕方が無い。今出せる全力を持ってして相手をするだけだ。
「ねぇねぇ。結局、教皇って何処にいるの?」
神が首を傾げる。
何故だろう。し可いと思ってしまった俺がいる。
「……もうすぐここに現れる。未來予知でそれは知っている」
俺は神に対する気持ちを気のせいだと決めつけて、反応に遅れながらもそう答えた。
実際に教皇はくる。絶対だ。何故か分からないがその確信がある。
教皇は用意周到に準備して、この戦爭を起こした。しかし、教皇の目的は世界の破壊。
悪魔の攻撃は俺達一行や勇者一行、サトシさん達一行がいなかったら被害はまだ大きかったであろう。更にはニーナがいなかったらこちらは全滅以外の結末は待っていなかった。
だが、その結末とは真逆の結果を生み出したこの狀況は教皇にとってみれば面白くない事であるのは想像に容易い。
こうなってしまったら次何をするかと言われれば、俺ならばその障害となった者達の排除だろう。
今ここには、この戦爭で功績を上げている者が勢揃いしている。教皇がその障害になるであろう戦力を始末しに來ることは殆ど確実だろう。
更に悪魔との戦いでなからず疲弊している。それを襲わない訳がない。そういう事で教皇はここに現れると確信していた。
「……ほらな」
「えっ?」
俺に小さな影を落とした者がいた。そいつは知範囲外からいきなり現れた。
言わずもがな教皇だ。
教皇は宙に浮いて、こちらをまるで道端に落ちている小石を見るかのような目で見つめる。
「アハッ、アハハッ!悪魔達がやられるとは思いませんでしたよ。それに勇者達まで私の指揮下から離れるのですから驚きました」
「うるせーよ。お前のせいでどれだけの人が死んだと思ってんだよ」
「は? そんなの知りませんよ。寧ろ私がそんな事を気にしていたと思われていたとは、あなたは甘いですねぇ」
俺の周りにいる皆に張が走る。
こいつは今俺達に威圧をかけてきている。皆耐えれているという事はそれだけの実力の持ち主と言う事だ。
その中でも、ずば抜けて力があるというのが分かったのがジュリ達、勇者達、サトシさん一行、魔王だ。
恐らく超越者かそう出ないのかの差だろう。
「あれが教皇だね。相當な実力の持ち主みたいだ」
サトシさんが酷く警戒をしている。教皇というのはそれだけの力の持ち主なのだ。
「私にとって人間などもうどうでもいいのですよ。この世界を破壊するのに人間など些細な事ですからね」
「そんな事させねぇよ。俺はお前を許さねぇ。お前だけは俺が殺す」
「アハッ。あなたに出來るんですかねぇ?」
「出來る出來ないじゃねぇ。やるんだよ。何がなんでも」
「アハハッ! 笑わせないで下さいよ! あ、もしかして笑い死にさせようとか? なら大功かもしれませんねぇ!」
「イ、イカれてやがる……」
レオンが口からそんな想をこぼす。
確かにイカれていると思う。しかし、こいつにはこれだけの余裕を見せれるだけの力がある。
それはを持ってしたつもりだ。
「笑いたきゃ笑え。お前にあった時から人様に笑われる様なことしかしてこなかったからな」
「はぁ。そんな事言うなんてシラケますね。まぁ、いいでしょう。希通りあなたを先に殺してさしあげますよ」
教皇はそう言って俺達からし離れた所に降りて、地に足を付ける。
「さて――」
「やめて! お父さんっ!!」
それを見たニーナが俺の前に背を向けて立ち、教皇と向かい合う。
「また、ニーナですか。五月蝿いので黙って貰えませんかね? それともまた首を刎ねられたいのですか?」
「お父さん! もうこんな事はやめて! お母さんが死んじゃって悲しいのも分かるし、お母さんを殺した魔が憎いのも分かるよ! でもこんな事していいはずがないよ!」
「聞いてませんか」
「私だってお父さんみたいにお母さんが死んで悲しかった! 魔を怨んだことだってあった! でも、私にはまだ家族が居たから! お父さんはそうじゃないの!? お母さんは絶対こんな事んでないよ!」
「……あなたに私の妻の何が分かると言うんです?」
「分かるよ! だって私のお母さんなん――」
「黙れ」
この時の教皇は誰から見ても怒り狂った悪魔の様に見えただろう。
目が爛々としており、ニーナに怒りのをぶつけている。
「妻は、私の目の前で魔に殺された。護衛の者が気を抜いていたせいで」
「――っ」
ニーナの小さな悲鳴が上がる。もしかしたら、この話を聞くのは初めてなのかもしれない。
「妻は泣きんでいましたよ。私に助けを乞いながら、魔に貪られて。目の前で繰り広げられたのは、した者がを吹きながら、魔に喰われる事だけ。その間私はただ目の前で起きていた事を眺めることしか出來なかった」
「…………」
「護衛が來た時に魔は喰っていた妻の左腕を投げ捨て、戦いに行った。その投げられた左腕は私の目の前に転がって來た。左手の薬指には結婚指がされていた。それを見た時の私の気持ちなど誰にも分かるわけないのですよ」
想像を絶する悪夢のような現実が教皇をここまで歪めてしまったのだろう。
俺達はおろかニーナですらもう言葉を発する事が出來なくなっていた。
「それでも私の気持ちが分かると言うのですか?」
「わ、私は……」
「……アハ……アハハッ……アハハハハハッッ!! これだから、あなた達は甘いのですよ! 私が話している時に襲いかかってくるなり何なりすればまだ勝機があったでしょうにそれを不意にするとは!」
「お父……さん……」
「ニーナ。あなたは言いましたね? 家族がいたからと。私はあなたを家族だと思った事は一度もありません」
「そん……な……っ! なら……わた、私のしてきた事……は……」
「完全に無駄ですよ」
「ぁ――」
これ以上はニーナの心が壊れてしまう。
「うるせぇよ。さっきから聞いてれば、お前子供かよ。魔も脅威も何もない世界ならいざ知らず、この魔が蔓延る世界で誰かが死ぬ事なんて日常茶飯事だろうが。今日だって世界を守る為に死んでいった者もいて、この世界のどこかでは今も誰かが魔に襲われ死んでいる」
「だからなんだと言うんです? あなたのような大切な人を失った事もない様な人が知った口を利くのはやめてしいですね」
「……お前こそ俺の事を知らねぇのに、知ったような口を利くんじゃねぇよ」
俺だって失っているさ。本當にした者を、幸せを摑んだその時に。
今でもその時の事を夢に見る。俺のトラウマとして殘ってるのだ。忘れる事を赦さないと言っているかのようで、俺の心を抉っている。
「俺はお前に語る事はしねぇよ。だが俺だって大切な人を失った事があるってことは教えてやるよ。俺の場合は魔ではなく、人によって殺されたがな」
ジュリ達は驚きを隠せていない。今まで一度も言った事なかったしな。しょうがないと思う。
しかし、それはここにいる教皇以外の他の皆も同じ反応だった。
「それ……本當なのかしら……?」
ジュリがいち早く俺に聞いてきた。
「あぁ、そうだよ。まだこっちに來る前の話しだ」
「そう……。あなたはいつも気だったからそんな事があったなんて思わなかったわ」
「俺の中ではもう何年も前の事だ。それに今の俺には護りたいものが多くある。それはお前達や勇者達、俺と関わってきた人達、そしてこの世界。今はそれを大切にしていきたいと思っている」
俺だって教皇の様に誰かを怨んだりした。死んでしまえばいいとさえ思った事がある。
だけど、そんな事をしたって何も変わらない。死んだ人が戻ってくるわけでもないし、何かが変わるわけでもない。
「あなたにじるこのは同屬嫌悪ってやつなのでしょうか? 私はあなたとわる事は不可能だと直的にじましたよ」
「俺はお前と顔を合わせた時からそうだ」
「そうでしょうねぇ」
「お前のやっている事は絶対認めねぇ。この命が盡きようとお前だけは殺す」
「アハッ、その威圧凄いですねぇ。この私に鳥を立たせるなんて大したものですよ」
「託はいい。やるんだろ。この世界をかけた殺し合い」
「それいいですねぇ。やりましょうか」
教皇の雰囲気が変わる。今まで全く襲ってくる気配ではなかったのだが、それが一変したのだ。
全開の殺気と威圧。
教皇がやっている事が善行なのか悪行なのかは別として、こいつはこいつなりの想いを持って戦っている。
だからこそ負けられない。同じ痛みを持っている者として、教皇の気持ちが分かってしまうから。
誰かを怨み、妬み、遣る瀬無い気持ちをどこにぶつけていいかも分からず、自分の中にいる自分と戦う、その痛みが分かってしまうから。
俺は教皇を殺す。これは俺なりのケジメでもあり、こうなってしまった教皇への最後の救済だ。ニーナには悪いが、そうさせてもらう。
ゼロ、レン、ミル、ジュリ、リン、フェイ、ニーナ、シロ、神、エルシャさん、魔王様、勇者達、サトシさん達、各國の王達、六種族。
様々國から集めた者達を後ろに引き連れて教皇と対峙する。
悪魔と戦った人達の想いを護る為。今この時を生きる人達を護る為。素晴らしい時をくれたこの世界を護る為。そして、後ろにいる大切な人達を護る為に戦う!
その時、俺は優しく暖かな何かに包まれた。まるで俺の決意や覚悟を祝福するかのように。
俺の奧底から力が湧き出してくる。俺の決意。俺の覚悟。それを違えないための力だと分かる。
「あなた……超越を……」
「神か……。俺は護る為に戦う。もう大切な人は失いたくないから」
「――っ!」
「行ってくる」
俺は神とそんな會話をして、教皇へと突っ込んで行った。
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