《ダンジョン潛って1000年、LVの限界を越えちゃいました》龍神起こしとキリガの過去回想(二日目)
あの回想後のエレスパの後、キリガは三時間ほどの仮眠を取ったあとに再度顔面攻撃を繰り返していた。
しかし、今度の魔法はエレスパとは違う、特殊系の魔法である。
その名もーー
「喰らえ!全屬元素超発オールテラ·エクスプロディオ!!」
略稱はオテプロである。
このオテプロは、エレスパ同様書いて字の如く、全屬のテラを膨張させ、発させるだけの技である。
もうお気付きだとは思うが、この技は超絶的な高火力であり、それに伴いキリガがけるダメージも増えてゆくのだ。
つまり、諸刃の剣である。
何故わざわざこんな事をしているのか、それは、キリガのある思いつきによるものだった。
時は、仮眠から目覚めてすぐのことである。
數分前ーー
仮眠から起きたキリガは、このロゼミネルはエレスパ連打では起きないであろう事を確信し、次なる策を考えていた。
「はぁ……どうすりゃ起きっかなぁ…」
頬杖を付き、眉間に皺を寄せながら、ぼんやりとティオーネ戦の時の事を思い返していた。
「あの力って、どうやったらまた使えんのかな…」
あの力、とは、キリガとクロナがティオーネと戦った時、己の中の意思をもつ加護、ユグドラシルによって一時的に目覚めた力、『霊覚醒』の事だ。
この力の発條件は未だ分かっていおらず、それどころかこの力の事は殆どの事が謎に包まれており、全くと言っていいほど報が無い。
そんな報のない霊覚醒に対し、キリガは ティオーネとの戦いを思い出し、ある一つの仮説を立てた。
「なぁクロナ、俺達がティオーネと戦った時って、かなりヤバイ狀況だったよな?」
『ん?……あぁ、そうだったのだ……もう思い出したくも無いのだ……』
「で、俺が何かパワーアップしたよな」
『そうだけれど、一どうしたのだ?』
そしてキリガは一息置いて、自分の立てた仮説を話し始めた。
仮説というよりは、簡単な思いつきのようなものなのだがーー
「もしかしてだけど、俺って追い詰められたら覚醒するタイプなのかな?」
ーーそして、今に至る。
「全屬元素超発ぅ!」
キリガは、尚も自のを削りオテプロを、繰り返している。
言うまでもなくキリガのはズタボロになり、段々と技の威力も落ち始めていた。
霊を持つキリガにとって、いくら無限に魔法を放てるような空間でも、ダメージが蓄積すれば段々と魔法も放てなくなるものなのだ。
だがそれでも、キリガは決して攻撃をやめることはない。
己が好奇心をみたすため、更なる力を手にれるために。
だが、現実は非にも、キリガの期待に応えず、尚も沈黙を続けるのだった。
しかしそれは、キリガを追いつめることになる。
だがキリガは、なおも自分を追い込み続ける。
何発、何十発、何百発、何千発、そして、何萬発ものオテプロを撃ち込んだ。
手の皮は破れ、服は汗塗れ、およそ十三時間ほど立ちっぱなしの足は、オテプロの衝撃によるダメージや疲労により、既に立つのが限界だった。
幾らエルフ、ましてや強大な力を持つ変異型エルフでも、そう何時間も達続けるのは疲れるのだ。
そんか狀態で更に魔法負荷をかけるなんて、人間の子供が小指で一トンのを持ち続けることくらい、あり得ない負荷があるというのに。
しかし、キリガは放ち続けた。
「これだけ撃ってんのに起きる気配すらねぇとか、逆に笑えてくるわ」
軽口を叩き、自分のの限界を誤魔化すように。
しかし遂にーー
「全屬元素オテ……っあ」
フラリ
と、キリガは後ろに倒れ込んだ。
遂にがダメージに負けたのだ。
の芯から響くほどの激痛に襲われる中、キリガはニヤリと笑っていたのだった。
それは、決してアホらしくなっただとか、諦めたといった類の笑いではない。
(こんだけ撃っても起きないってことは、コイツ絶対に強いだろ!
ぜってぇ叩き起こしてやる……!)
ロゼミネルに対する期待と、どうやって起こすかという事へ思考を巡らせ、一人楽しんでいた為、笑っていたのだった。
そしてそのまま、眠りに落ちた。
『全く…無茶するのだ』
その倒れたエルフの元にふわふわと、石が寄り添うように飛んで行く。
暫くのぞき込むようにグルグルとキリガの周りを回った後ーーー
『はっ!なのだ』
クロナがし気合いを込めると、キリガの周りのみ、薄黃緑な半明のみならずのようなものが現れる。
このは、ミスクリアの石がとなっているクロナだからこそ作り出せる、テラの濃空間である。
このテラ濃空間は、怪我をしているのなら回復スピードが上がり、食料なら保存が長期間出來るようになるのだ。
要は、生命の源につかり続けるようなものの為、細胞の活化に繋がるということだ。
因みにエレスパの時も同様にクロナはテラ濃空間を作り出している。
そうでもしなければ、例えミスクリア部でもこんなに早く力は回復しない。
『全く、僕を暇にしたあげく僕に力と傷を治させるなんて……なんて奴だ…のだ』
言葉こそ怒っているものの、クロナの喋り方には怒気や覇気は含まれていなかった。
やはり自分はキリガに甘いのだろう、そう実させられたクロナであった。
………因みにロゼミネルの夢の中がし悲慘になっていることは、誰も気づくことはなかった。
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