ホーエンハイムの狀況は最悪の事態を迎えていた。

大天使 マリアの加護は消え、城門は突破された。キャットハンズの大半は負傷しそして今、アーサーも倒れてしまったのだ。

クルセイダーズも五百余りいた軍勢も殘り三分の一程までになってはいるがホーエンハイムの今の狀況下では厳しい。

「アーサー様ぁぁ、 大丈夫ですかあ」

「アーサー様、 お気を確かに」

「あーさー様ぁぁ」

三人の霊が必死に倒れたままのアーサーに呼びかけるが全く反応がない。

「私、ルナを呼んで來る」

「それが良いですわね。疲労や力低下なら回復魔法で治りますわ」

ルナは、現在後方で傷ついた兵士の治療に努めている。

「しかし、この狀況はかなり危険ですわ。城門前で必死に防いで國にクルセイダーズを進させないように食い止めていましたが、アーサー様やカスケード様が倒れてしまわれた事により戦力的にもいつ進されてもおかしくない狀況ですわ」

シルフィーが眼鏡を指で押さえながら前方で必死に戦うキャットハンズの兵士達を見ながら言う。

「あーさー様・・・大丈夫かなあ」

アーサーの顔を覗き込みながら今にも涙が溢れ出しそうなエルザ。

「心配ないわよ。アーサー様は強いお方よ、 この程度では問題ないですわ」

エルザの頭をでながらシルフィーは優しく微笑む。本當はシルフィーも心配でたまらなかった。的な疲労は回復魔法で治療出來るが神的な疲労やダメージは回復出來ないのだ。

ギリギリの神狀態で、魔法を使い続けたのであればかなりの神的ダメージが蓄積されているかもしれない。

最悪の場合は目を覚まさない可能も否定出來ない。

実際、悪魔族に支配された人間はそのや神が盡き果てるまで使われ続ける。

悪魔から解放された人間は、力が戻っても神的な部分は欠落したまま二度と戻ることはなかったーー。

「・・・大丈夫よね」

「えっ？」

エルザは、目を丸くしてシルフィーの顔を見つめた。

「何んでもないわよ、あなたはアーサー様の側にいてあげなさい」

シルフィーはエルザのふわふわな頭をポンポンと叩く。

今回のアーサーのケースはどうだろうか。

大天使 マリアの加護が剝がれてクルセイダーズに攻め込まれている狀況を目の當たりにした。

戦場で傷付いても尚も立ち上がり戦うキャットハンズの姿。

悪魔族のサタンやその部下が背後で薔薇十字クルセイダーズをっていること。

怒りや自分のチカラのないもどかしさ今まで経験した事ない戦場、さすがに神的に參ってしまうのも無理はないのかもしれない。

シルフィーは、アーサーに寄り添っているエルザの姿を細い目で見ながら、何も出來ない自分のチカラの無さをじていた。

★ ★ ★

電石火の速さで次々に敵を倒すメルル、 仲間を倒された事により暴走気味に暴れている。

「メルル様、危険ですにゃ。あまり無意味に突っ込み過ぎると・・・」

三貓たまが暴走気味のメルルに呼びかけるが全く聞こえていない。

今、キャットハンズは十二名程で戦っている。傷付いた兵士は、ルナにより治療してもらいまた戦場に向かう、力的には問題ないがやはり神的ダメージは拭えない。

彼らを支えているのは國や仲間を助けたいという思いだけでいているのだ。

「くっ、メルル様に続けええ」

「にゃん！！」

たまは、出來るだけ力を溫存して粘る作戦をとりたかったのだがどんどん先走ってしまうメルルを放っておけず、攻める方向に行くしかなかった。

「何時まで遊んでいるのだ？ メフィストマリシアが帰って來てしまうぞ」

ペダランは、相を変え居ても立っても居られない狀況だった。

「奴らかなり粘りまして城門を破壊して一時國には潛しましたが再び城門前で固く守られてしまっている狀況です」

クルセイダーズの一人が説明する。

「ーーあまり使いたくなかったが私が行こう」

そういうとアジトらしきテントの中から出て城門の方へクルセイダーズ數人を率いて向かって行く。

戦況は、先ほどは変わらないが城門前より更にクルセイダーズ達は攻めてくるキャットハンズに押され後退していた。

「このまま押し切るにゃん」

メルルが剣を天に掲げて行くぞとみんなに合図を送った時だったーー

クルセイダーズの遙か後方で何やら輝くようなモノが見られた。

「高魔力がじるーー メルル様ヤバイです。退卻して下さい」

「メルル様ぁぁぁ退卻ですにゃ！退いて下さいにゃ」

ミントとたまは、大聲でんだ。

しかしーー ペダランから魔法が放たれる。

「ヤバイ！ メルル様ぁぁぁ」

メルルは、その魔法攻撃に全く気づかずに真面にけてしまった。

「ーーーー!!」

「メルル様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

三貓たまのび聲が國中に響きわたる。

メルルは、攻撃をけてやっと我に返る。

自分の任せで無暗に突っ込んで行ってしまった事、それにより周りを混に巻き込んでしまった事、自分が如何に愚かだったか。

「メルル様・・・」

「にゃ、にゃ・・・すまないにゃ、迷かけたにゃ」

メルルは、攻撃を左側から腹に真面にけていてを口から流し、左側は焼けて黒ずんでいる。

「誰か、メルル様をルナのところに至急運んでくれニャ」

三貓たまは、を噛みが流れた。今まで自分たちを率いてくれた人がやられてしまった。 仲間がやられてしまった。

「ミント！」

「分かってるにゃんよ！ ミケミントコンビにゃんよ」

ミントは、首を橫に向けてバキッと鳴らした。たまも軽くをほぐしている。

「ここで、最悪俺らが刺し違えてもアイツを殺れば殘りはクルセイダーズの殘黨のみ。殘りはキャットハンズのメンバーでも倒せるのにゃ」

「ミケミントコンビ！やってやろうぜ！」

「ニャン！」

たまとミントはハイタッチしてお互いの健闘を祈ると、二人で息を合わせたように一緒に駆け出しペダランに向かって行った。

ペダランは、連続で何発も魔法を放つが二人は、的を絞らせないようにき回り撹させる。

「ちょこまかと、目障りなーー」

攻撃が當たらないことに苛立ちを隠しきれずにいるペダラン。

「行くぞ、ミント！」

「ニャン！」

二人のスピードが加速するーー

「ーーーー!？」

ペダランの前に一瞬で移したかと思えば殘像だけを殘し二人は消えたように移する。

次の瞬間、ミントは真橫に高速で切り捨てるーー たまは、ペダランの周りを回転しながら縦橫無盡に斬り刻む。

「ーーーーーーッ」

ペダランからが噴き出す。

「やったニャン」

後方にいるキャットハンズからも歓聲があがる。

ペダランは、が吐き全からが溢れながら崩れ落ちかけたーー その時ーー、

「あらあら、何やってるの貓ごときに本當人間って弱い生きでもろいわ」

がゆっくりと歩いて來るのが見えた。

「人間にし魔力を與えたところでこんなモノか？ だけどまだこんなところでくたばってもらっては困るんだよペダラン」

ペダランに向かいは掌をかざすと、ペダランが輝きはじめ傷が癒えるーー。

「貓ども、悪いが忙しいんでね。これ以上は遊んでられないんだよ」

はゆっくりと前に歩いて來る。

「ーー 絶に震えよ」

ーー メフィストが絶を與えるーー