《三人の霊と俺の契約事》魔道士キルケー
「來たようだね」
「今、何か音が?」
アーサーがキョロキョロと辺りを見渡す。
「いつものことよ」
メーディアは、平然と何事も無かったかのように振舞っている。
「彼は、私程ではないがかなりの腕の立つ魔導士なのだよ・・・ただし難があるのが傷でね。 それさえなければ」
複雑な表を浮かべ頭を掻くメイザース。
「・・・し難とは?」
アーサーが嫌な雰囲気をじとり神妙な面持ちで聞いてみる。
「簡単にいうと天然です」
さらりと言うメーディア。
その話を聞きうんうんと頷くメイザース。
アーサーのじた微妙な違和は殘ったままだった。
ディンゴーンと豪華な呼び鈴の音が屋敷全に響き渡る。
★ ★ ★
「メイザース來てやったぞ。それと言い難いのだが・・・壁をしな」
黒いトンガリ帽子に黒いマント、手には箒を持っている。
肩くらいまでのショートヘヤーの桃の髪で大きな瞳の可らしいが現れた。
おデコに真新しい絆創膏をっている。
「相変わらず騒がしいねえ、キルケーちゃんは」
「アンタも相変わらず締まりのない顔をしてるよメイザース。ところで何故こんな場所に」
メイザースは、頭を掻きながら、
「話せば長くなるのだよーー」
「って事は、面倒な事に巻き込まれてるって事ね。ハア、勘弁してくれよ」
「まあまあ、そう言わずに頼むよキルケーちゃん。 私とキルケーちゃんの仲じゃない」
「どんな仲だよ! 用件を聞かせてもらうよ」
さらりとけ流すキルケー。
「ゾロアスター教なのだよ」
眉間にしわを寄せ顔を怖ばせるキルケー。
「ゾロアスターに首突っ込むとかアンタ馬鹿じゃないの? 私に何させようっての」
目を大きく開き呆れたと言わんばかりの力加減を見せていた。
「今回は、簡単な潛捜査をそこのアーサーきゅん達とお願いしたいのだよ。彼らだけでは心細いのでキルケーちゃんにお供をお願いしたいのだよ」
「ふーん。簡単な潛捜査ねえ、私だけなら楽勝なんだけどこの子大丈夫なの」
アーサーをまるで品定めでもしているかのように周りをじろじろ見ながら歩いて回るキルケー。
「ん? この霊たちは誰のパートナー」
「アーサーきゅんの霊たちなのだよ」
キルケーは、驚きの表を浮かべ霊たちとアーサーを見比べていた。
「なるほど、理解したよメイザース。この子達のお供に著いてやるよ」
任せておけとをドンと拳でついた。
「期待してるよキルケーちゃん。アーサーきゅんと霊ちゃんをよろしくなのだよ」
「そうと決まれば早速出発だ! 表に出ろ」
★ ★ ★
「ゆっくり行くからちゃんと私の後をついて來るんだぞ。 良いな? ではーー」
キルケーは、箒にるとふわふわと浮き出した。
「おお!!」
アーサーは、驚きの聲を上げた。
人間が宙に浮く姿を初めて見たのだ。
「行くぞお」
キルケーは、箒ほうきに乗って出発しようとする
「ちょっと待ったあーー」
アーサーが飛んで行こうとするキルケーを制止する。
「何なのだ? 出発早々に」
「あの、 飛べないんですが・・・」
「はあ?」
耳に手を當て聞き間違いかと思い聞き直すキルケー。
「いや、だから飛べないんですよ」
ため息を吐き、天を仰ぎながら肩を落とすキルケー。
「これだから人間は、不便で困る。最初からコレでは先が思いやられるぞ」
「ーー飛べなくてスイマセン」
何故文句を言われているのかイマイチ納得がいかないアーサーだった。
「とりあえず私の後ろに乗りな。振り落とされないようにしっかり摑まってるんだぞ」
言われるがままにキルケーの背後にまわり箒にるほうきにまたがるとキルケーの肩に両手を乗せた。
「アーサー様、何てハレンチな行為を」
「エルザ見てられないの」
「アーサー様、酷いですわ」
その景を見た霊たちは嫉妬の炎を燃やしていて、ワナワナとを震わせていた。
「準備は良いな! 行くぞ~」
キルケーは、地面を思いっきり蹴ると箒はキルケーとアーサーを乗せ空へと飛んで行った。
屋敷の中から様子を見ていたメーディアがメイザースに聲をかける。
「行ってしまわれましたね、メイザース様」
「そうだねえ、何か一つでも良い報告があれば良いかなと思うのだよ。デーモンズゲートが開くのは何としても阻止しなければならないからね。その為にあの子達を敵地に送り込んだのだから」
「潛捜査ってのは?」
「キルケーちゃんがいる限り潛捜査にはならないのだよ」
「ーー 確かにです」
心配そうに窓からアーサー達が飛び去った空を見上げたメーディアだった。
箒にり大空を鳥のように飛ぶ、空から見た世界はとても小さく見える。
「私たちも普段飛んでるけどこんなに高いところから景を見たことないよお」
アーサーにしがみ付いている霊たちもこの壯大な景にはしゃいでいる。
「魔導士が全員飛べると思っているなら大間違い! 魔導士でも空を飛べるのは私くらいなんだぞ」
思いっきり仰け反りのけぞり大威張りで自慢するキルケー、アーサーにもたれかかる。
「お、落ちる」
落ちそうなアーサーにあたふたする霊たち。
キルケーが再び元の制に戻ると、霊たちはホッと一息肩をで落とした。
「ところでキルケー、何処に向かって飛んでるんだ」
「逆に聞こう、何処に向かえばいい?」
・・・・・・。
ーー 先が思いやられます ーー
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