《三人の霊と俺の契約事》Bグループ予選
「Bグループの実況は次エレクトラがお送りします。間もなくBグループ予選開始になります」
ステージには選出が勢揃いしている。
しかしーーキルケーの姿はステージ上にはない。
観客席からも騒めきがおこる。
「キルケー居ないよ? どこ行っちゃったんだろ」
リサがキョロキョロと會場を見渡すが姿はなかった。
「おかしいですわね。 先ほどまでヤル気満々で居ても立っても居られないじでしたのに」
シルフィーも控え室を見渡すが姿はなかったーー
メーディアはなぜか背中に悪寒が走ったーー
「Bグループ予選開始したいのですが皆さんが注目しているキルケー選手の姿が見えないようですがーーあっ! あれは何だ」
実況のエレクトラの視線の方向ーー會場のステージの真上に飛行が浮遊している。
「あれは何だ? 鳥か、魔かーー」
盛り上げる実況ーー湧き上がる歓聲。
「キルケーだね・・・」
「ーーなの」
ため息をつくキルケー知り合い一同。
だいたいこの後の展開も分かってしまっている。
何と言ってもキルケーは何が何でも目立ちたいのだ。
ただ登場するだけでは演出が足りないと思いこの空からの登場を考えたに違いない。
「ハハハハ。 待たせたな! 私が天才魔導士 キルケー様だ」
空から箒でのド派手な登場ーー観客席からも拍手が起こった。
Bグループの選手たちはみんな怒りを発させている。
「何とキルケー選手、箒で空からの登場の余裕のパフォーマンスだ。全員揃ったところで試合開始」
バアァァンとド派手に響くドラの音と共にキルケーに一斉に選手たちが襲いかかる。
しかしーー箒で空中に浮いて逃げ去る。
「おっと。 危ない危ない」
この行に観客席からもBグループの選手たちからもブーイングが飛ぶーー
「天才魔導士は會場の全ての人々の心を摑むをも知っているーーまさに天才だ」
ブーイングを歓聲と勘違いし更にテンションを上げるキルケー。
箒にのけ反りながらっている。
「ハハハハ。 魅せてやる! 天才魔導士の大魔法をーー」
箒の上に立ちバランスを取り杖を天に掲げる。
キルケーの魔力が一気に膨れ上がる。
一瞬で會場の雰囲気が変わった。ーー靜まり返る観客席、構えるBグループの選手たち。
見守る控え室の選手たち、皆キルケーの魔法に注目している。
「火力は死なない程度に落としてやるが會場は吹き飛ぶかも知れん! 承知してくれ」
誰もが、會場が吹き飛ぶなら死ぬだろうとツッコミたくなった。
「目に焼き付けておけ次元斷層ダウンウォール」
「ヤバイ! テンション上げすぎよ」
焦るメーディア。ーーポンと肩を叩き落ち著いてと言わんばかりにリリスが障壁をった。
會場は靜まり返っているーーBグループの選手たちも構えているが何もまだ起きていない。
「何だ? 失敗か・・・」
一人の選手が口にした瞬間ーー
凄まじい地鳴りと今までじた事もない地震が起こった。
この世の終わりかと思うようなそんな揺れがしたかと思うと會場のステージが一瞬で々に陥沒し消え去った。
Bグループの選手たち全員が陥沒したどこまでも続いている底無しの闇のに消えたーー
「やり過ぎよ。 本當にバカなんだから」
メーディアは肩を落としため息をついた。
「勝負あり! Bグループ代表はキルケー選手」
あまりの魔法の強力さに會場のテンションは下降気味だった。
「ハハハハ。快勝、快勝」
逆にキルケーは上機嫌だった。
★ ★ ★
「呼び出してスイマセン」
「アーサーきゅん、どうしたんだい」
控え室からし離れた人通りのない場所にアーサーはメイザースを呼び出した。
アーサーが何から喋ろうかと考えているとーー
「金の瞳エンペラーアイですか? 」
アーサーがハッと顔を上げた。
「図星ですね。 私も深くは知らないのですがあなたの父シーサーさんもやはり金の瞳の持ち主で同じく霊使いです。これはペンドラゴン家における筋かと思います」
「兄さんや姉さんも金の瞳エンペラーアイなの」
メイザースは首を橫に振りながら
「お調べしましたが現在この世界で金の瞳エンペラーアイはお二人だけ、シーサーさんとアーサーきゅんだけです」
「そうですか・・・」
アーサーは下を向いて何か言いたそうな顔をしている。
「アーサーきゅん、本當に聞きたい事は何ですか? 教えてあげれることがあれば可能な限り教えますよ。 遠慮なく聞いて下さい」
し戸ったが覚悟を決めたのかアーサーが重い口を開いた。
「もう一人の自分・・・人格切り替えスイッチについて教えてほしい。 もし次に金の瞳エンペラーアイを使ったらまたれ替わってしまうのかどうかーー」
すがるようにメイザースを見つめるアーサー。
どうしても知っておきたかった事なのだ。
また、大切な人を悲しませてしまうんではないか。
みんなに迷をかけるんじゃないか。
ルナの一件を頼まれた時に真っ先にこの事が頭を過ぎっていた。
いろんな思いと葛藤し今、メイザースに思いを相談したのだ。
「アーサーきゅんの場合、もう一人の自分は過去のトラウマが引き金になっていると思うのだよ。 それは魔力の無い自分を罵倒し馬鹿にしめられてきた環境から自分自信を守る為に創り上げた者だと思うのだよ」
アーサーは何となく過去の自分を思い浮かべていた。
それは思い出したくない過去で、逃げ出した現在、忘れたい日々ーー
「金の瞳エンペラーアイを使っても自分自信を保ちたいなら過去の自分に打ち勝つ心の強さが必要なのだよ。 あの頃と今の自分では決定的に違う事があると思うのだよ」
「決定的に違う事ーーーー」
そうだ・・・今の俺はーーーー
リサ、エルザ、シルフィーの笑顔がアーサーの脳裏に浮かぶ。
ーー ひとりじゃない ーー
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