《事故死したので異世界行ってきます》第29話 生存
目の前にはリリカがいる。
だが背後から、いつもよく耳にするリリカの聲が聞こえてくる。
俺が混に陥っている間も勢いを止めることなく槍は近づいて來ている。
「王族魔法【消去イレーズ】」
その詠唱ともに、俺に向かって放たれた槍は、
キラキラとを放ちながら砂へと変わるように消えていった。
俺は振り向き背後を確認した、するとそこにはリリカとラギナが2人肩を並べて立っていた。
「リ、リカ……? それに……ラギナ……? ど、どういうことだ……」
混に陥っている俺をラギナがを引っ張り無理やりゲートの中に引き込む。
グワァン
音を再び立ててゲートは閉ざされる。
「ここは……」
俺が居た場所は國王室だった。
「危ないところだったな」
ラギナが口を開く。
「生きてて良かった……」
リリカは腰が砕けたかのように國王室の絨毯の上に泣き崩れる。
「何が起こっているか理解できないという顔をしているな」
ラギナが俺を諭すようにそう言う。
まさしくその通りだ、先程まで俺を殺そうとして居た人が今は泣き崩れながら俺が生きていることに安堵している。
「な、なにが起こっているんだ……?」
「うむ…まずはユウスケの人であるリリカ殿に襲われたのかを説明しよう、そなたを襲ったリリカ殿はリリカ殿では無い」
は…?ラギナの放った一言は、火に油を注ぐように俺の謎を深めた。
「どういうことなんだ??」
「ヤツの名は千面嬢。魔王軍の大幹部だ、千面嬢は様々な者に化ける、今回はリリカ殿に化けて現れそなたを殺そうとしたようだ」
なるほどな、俺を殺そうとしたリリカは千面嬢という変化に秀でた才能をもつ魔族だったと言う訳か。
「魔王軍…… なぜ俺の命を狙ったんだ?」
「それは其方が黒き闘神だからだろうな」
「黒き闘神?俺は闘神の稱號はもらったが黒き闘神という稱號は貰ってないぞ?」
「正確には、黒き闘神という稱號はない闘神に與えられる稱號は全て闘神と一律して定められているからな」
「その言い方だと他にも闘神がいると言うことなのか?」
「その通りだ
蒼き闘神は民に清らかな潤いを
紅き闘神は民に大いなる力を
旋風の闘神は民に偉大なる知恵を
罍塊の闘神は民の堅牢な盾に
迅雷の闘神は民の無雙の刃に
輝なる闘神は民に希を與える
そして、黒き闘神は魔に破滅を齎もたらす 」
俺が黒き闘神だから魔族を滅ぼしに來ると思ったのか……
命を狙われる理由はわかった、だがどうして俺が黒き闘神なんだ?
「何故自分が黒き闘神になっているんだ?  とでも言いたげな顔だな」
コクリと頷くとラギナは口を開き説明を始めた。
「黒き闘神は、數多の攻撃を魔裝で遮り、並居る無數の敵を魔剣で斬り払う と言い伝えられている、そして、その魔裝と魔剣はそなたも良く知っている ガルガンチュアとエリフィスだ 」
「そういうことか……」
確かに今思えばガンドラは所々紅い部分はあるが基本的に黒が基調だ。
エリフィスに関しては柄から切っ先まで真っ黒だオマケに魔力も流してないのに黒いオーラを放っている。
「俺が黒き闘神と呼ばれる所以はわかったが、どうして俺が危険な狀態だとわかったんだ?」
「闘神になる際にのどこかに魔法陣のような紋章が彫り込まれているだろう?アレはそなたの命が危険な狀態になった時に、王宮に知らせる伝達係のような役割を持っている、他にもんな機能がついてはいるがな」
「そうだったのか……」
そんな機能がついているなら、先に言っておいてしいかったよ國王様……
他に々な機能があるって言ってたけど絶対に、プライバシーを侵害している機能も1つくらいあるよな……
「でもどうして俺の家に【ゲート】を使って移して來れたんだ?あんた俺の家には來たことないだろう?」
「それに関してはそこで泣き疲れて寢ているリリカ殿に協力してもらった」
ラギナはリリカを指差してそう言った、俺はリリカの方を見るとリリカはスヤスヤと絨毯の上で眠っている。
「それでリリカと一緒に來ていたのか」
「いや、それはリリカ殿が一緒に行きたいと言ったから連れてきただけだ 心底心配しておったぞ?ずいぶんされているんだな、ホォッホォッホォッ」
何を笑っているんだか……
「ん?そういえばアレク達は何処に居るんだ?」
「うむ……それについてはしっかりと話しておかなければならない……」
ラギナの雰囲気が変わり空気がピリッと張り詰めた覚がした。
「実はな、アレクとかいう者達は魔族の呪印を刻み込まれて居たのだ。今治療をけているが、治る見込みは薄い
後數日もすれば人間としての理を喪いただの魔とかしてしまう」
「つまりそれは殺すという事か?」
「場合によってはそうなるな、治らなかった時は申し訳ないが諦めてくれ」
「わかった、今までに治った事例はあるのか?」
「……」
どうやら今まで治療が功した事は一度もないようだ。
「そうか……」
「しかし、古代魔法を使えばもしかすれば救える見込みはあるかもしれない、魔導書は持っているか?」
「いや、自分の部屋に置いたままだ」
「目につかない場所に保管しているのであろうな?」
「いや、機の上に置いてあるが? 何か問題でもあるのか?」
ラギナは深くため息をつきながら頭を抱えた。
「問題しかない…… 魔裝と魔剣に関しては盜まれることは無いだろうが魔導書は誰でも盜むこともさらに、適があればある程度の魔法の使い手であれば誰でも使うことが出來るだぞ……」
「す、すまない……」
「いや……先に説明してなかったこちらにも責任はある……」
俺とラギナの間に靜かな空気が訪れ、次第にその場を支配して行った。
お互いに気を使いどちらも口を開かない。
耐えきれず先に口を開いたのは俺の方だった。
「あの魔法はなんなんだ?」
あの魔法とは千面嬢の放った魔法を打ち消した魔法のことである。
「あぁ…あの魔法か、アレは王族にしか使えぬ代々け継がれてきた王族魔法の1つだ」
「王族魔法?」
ラギナは王族魔法のり立ちやらなんやらを長々と説明し始めた。
そんなラギナの話を掻い摘んで王族魔法について説明するとこうなる。
・と対になる魔法で一般への公開は止されている。
・MP消費の他にHPを消費する魔法が存在する。
・使用する際に消費したMP、HPは回復することなく消費した分のMP又はHPは最大値から引かれていく。
・基本的にリキャストタイムは24時間以上必要な魔法が多く、【消去イレーズ】も24時間に1度しか使えないらしい。
「HPを消費する魔法…本當に実在するのか?」
「あぁ、実在するとも【消去イレーズ】がその1つだ」
驚くべきことに、王が使ったあの魔法は自らの命を削る魔法だった。
「すまない……」
「気にするな、僅かな命を代償にして大いなる命を救ったのだ それよりも、ヤツら魔王軍をどうするか考えようではないか」
気を使ってくれたのか話題を変えてくれた。
「まずは敵の位置を確認する所から始めるしか……」
「それには及ばん、もう既に敵の位置は把握済みだ、敵の本拠地は世界の最北端に位置するヨルムヘイムにある」
ヨルムヘイム……
聞いたことのない場所だ、【心眼】を使いヨルムヘイムの場所を確認するとラゴウド國よりも遙か遠く馬を使って行ったとしても恐らく3ヶ月はかかりそうなほど途轍もなく遠い距離だ。
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