《事故死したので異世界行ってきます》第34話 國王

かつて共に旅をし、笑いあった仲間を亡くした俺とリリカはひたすらに落ち込んでいた、特にリリカは酷く自分の部屋から一歩も出られずにいた。

「リリカ、大丈夫か?」

「ごめん……1人にさせて……」

ずっとこの調子だ。

だが、リリカの容態をずっと家で看病する事は今の俺には不可能だ。なぜなら……

「わかった、じゃあ行ってくるね【ゲート】」

「國王様ッ!こちらの書類を処理なさってください」

「國王様、兵士たちの給料を上げてください」

「國王様、明日の五國會議の場所が決定しました、此方を見ておいてください」

とても忙しい國王になってしまったのだ。

にしても仕事の量が多い……先代國王はこんな事をしていたのか……でもまぁ、仕事をしている方が嫌な事を忘れられるから今の俺にはありがたい事だけどな。

「わかった、全部そこにまとめて置いておいてくれ」

「「「意」」」

3人は、書類を國王室の機の上に重ねておいて部屋から出て行った。

「はぁ……それにしても疲れるなぁ…」

グワァン

俺の座っている椅子の後ろの空間に歪みが生じる音がした。

「ホッホッホ、仕事が山積みのようじゃな」

空間の歪みから出て來たのは先代國王ラギナだった。

「來るなら來るって言ってくれよ、いきなり來られるとびっくりするだろッ!」

「何をいうか、そなたこそ毎度毎度なんの前れもなく來ておったではないか」

うっ、確かに……

「今日はそなたの仕事を手伝ってやろうと思ってな」

「おぉっ!本當か?」

「うむ、まだ分からぬことも多いであろう?」

先代國王が仕事を手伝ってくれるのは実にありがたい事である。

「よろしく頼む!」

「ふぅ〜……」

「これで大方片付いたかのぅ?」

「あぁ……助かったよ!」

「うむ。何より、立ち直れたようで安心したぞ」

まさか、ラギナは心配してくれてわざわざ來てくれたのか?

「心配をかけてすまない、もう大丈夫だから安心して隠居生活をしてくれ」

「ホッホッホッ、儂も急に仕事が無くなって暇を持て余しておるのだよ、また何か有ればいつでも相談してくれ」

ラギナのその言葉は、1人で抱え込むなと言ってくれているように聞こえた。

「ありがとう…」

「よいのじゃよ、それより五國會議はどのようにしていくのだ?」

「んー、まだ考えてない」

「はぁ……」

ラギナは溜息を吐きながら、1枚の紙をスッとこちらへ渡した。

「……どこ此処」

その紙に記されていたのは會議が行われる場所と時間だった。

五國會議

日時 明日の午後3時

場所 ドドルベルン帝國  帝宮

參加國

ドドルベルン帝國

ラゴウド國

ジャクール國

フォルジュ國

カルダド王國

代表者

バルダリオン

ジェネスト

バルカスト

コルネリオ

ユウスケ

通行手段は特に書かれておらず各々自分で來いというかじだ。

「ドドルベルン……どこにあるんだろう…」

「ラゴウド國を更に北へ行ったところにあるぞ」

【心眼】を使い確認しようとする前に國王がそう応えてくれた。

「どのくらいの時間がかかるんだ?」

「そうだな……馬車を使っても1週間は見ておいたほうがいい」

圧倒的に時間が足りない、これが決まったのが今日という話だったはずだ。

「それって、間に合わないんじゃないのか?」

「あぁ、五國會議と謳いつつも実質カルダド王國を除いた四國で話を進めようという算段だ。それに、ラゴウド、ジャクール、フォルジュは全てドドルベルン帝國の傘下だ」

つまり……ドドルベルン帝國の意見が全て通るということになるのか。

「しかし、そなたであれば今から行けば間に合うのではないかな?」

「あぁ、そうだな。因みにこの會議はなんのために開かれたんだ?」

「地権と権力の調整かのぉ……恐らくはここカルダド王國の保有するヨルダン法國の土地の押収が狙いではないだろうか」

ヨルダン法國って言えば俺が一回死んだアノ國か……

あの國くらい、くれてやっても何ら支障はないとは思うけどこのまま好き勝手にやられるのはあまり好ましくない。

「わかった、今から向かう事にするよ」

「うむ、その間の仕事は全て儂が引きけよう」

「ありがとう、助かるよ 【ゲート】」

「なんのなんの、王としてしっかりと役目を果たしてきてくれ」

おれは心の中で『はいよ』と呟きゲートで自宅に転移した。

「リリカは……まだ自分の部屋か…」

家に戻ってきたのだから一聲かけようかと思ったが、今のリリカを見ているとそれさえ煩わしく思うのでは無いかとじたので聲をかけるのはやめておきエリフィスとガンドラを取りに自分の部屋へ移した。

「久しぶりだな……」

國王になってから數日間の間はコイツらをにつけたことはなかった。

即ちそれは、爭いが無かったことを意味する。

今回の會議も爭いでは無いが、もしも何しらの厄介ごとに巻き込まれた際に戦えるよう念のために裝備していく。

「なんか、前より重くなってないか……?」

(久しぶりじゃの)

(久方ぶりでは無いか主人よ)

「あぁ、お久しぶり。それより、ガンドラお前なんか重くなってる気がするのだがこれは気のせいか?」

(ふむふむ、それは気のせいでは無いと思われる)

「じゃあ何か原因があるってことか?」

(左様だ、恐らく魔力が溜まっているのだと思う。適當な所で魔力を放ってくれれば軽くなるかと)

「なるほどな、エリフィスはそういうのは無いのか?」

(妾の刀を見てみよ、常に魔力が流れ出ているであろう?)

「たしかに、エリフィスは自分で調節しているのか?」

(うむ)

(すまないな主人、我はまだ己の力を制しきれないのだ)

「そのうちできるようになるのか?」

(ガンドラは無理じゃろうな。魔力の量が膨大すぎる)

(なっ!そんなことはないっ!いつかできるようになって見せるとも)

「いや、無理しなくても良い…… でも俺がにつける前まではどうして居たんだ?」

(主人が居ない間は一定の魔力量に保たれるようになっているんだ、だからその時は問題はなかった)

(妾もそなたが主人になってから、刀が変わったり常にオーラを発するようになったであろう?)

なるほどな、確かにゆわれてみればそうだ。

俺はまた一つ魔裝、魔剣、の仕組みを理解したのであった。

「よく分かった、教えてくれてありがとう、今からし長旅になるが付いてきてくれるか?」

(うむ)

(意)

【ゲート】でラゴウド國まで転移し、そこからドドルベルン帝國まで【飛翔フライ】で移した。

全速力で飛ばしたためか日をぐ前に著いてしまった。

「ちょっと早すぎたかな…」

(早すぎじゃの)

(だな)

「一旦國王室に戻って時間になったらまた【ゲート】を使って転移してくるか」

(うむ)

(それが良いかと)

「【ゲート】」

國王室──

「早かったではないか」

「あぁ、思ったよりも早く著いてしまったよ」

「ホッホッ流石じゃな。一応今日と明日の仕事は済ませておいた」

手際良過ぎるだろっ!流石先代國王……

「あ、ありがとう」

「うむ。それより、リリカ殿の様子はどうだ?」

「うーん…… 今は1人にしてあげたほうが良いかもしれないかな」

「まだ立ち直ることは出來ないか……まぁ、仕方のないことであるな」

「心配かけてすまないな」

「なんのなんの。それよりギルドからクエストの依頼が山程屆いておったのじゃがそなたいつからギルドへ行って居ないのだ?」

「……」

自分が冒険者ってこと完全に忘れてたっ!!!

どうしよう……とりあえず片付けられるものは片付けておいたほうがいいよな……

「クエストはそこにまとめて置いた。では儂はここで失禮するよ【ゲート】」

「ありがとな」

ラギナは背中を向けながら右手を上げ純白のゲートをくぐって行った。

「さて……何がきてんだろうな……」

ギルドから送られたクエスト用紙は分けがされており1番上に置かれていたのは黒だった。

目測だが全てで大凡200〜300枚程度ありそのうちの10枚ほどは黒でその次に多いのは赤、紫と続いていて1番多いのは白だった。

俺はおもむろに1番上に置かれてある黒のクエスト用紙を手に取り目を通した。

暗黒騎士・ベアル討伐

適正ランク SSS以上

対象冒険者: ユウスケとリリカ

※危険度が極めて高いため、ユウスケ単でも可、但しリリカ単は不可とする。

クエスト達條件

暗黒騎士・ベアルの討伐

クエスト報酬

30億リン

暗黒騎士って誰だよ……説明がざっくりしすぎてわからんっ!!

「でもまぁ……【心眼】」

そう、どんな些細な報であっても【心眼】を使えばそれを手掛かりに確実な報が手にる。

「ここは……」

【心眼】が映し出した、場所はドドルベルン帝國の帝宮だった。

「とりあえず、コレは後々考えよう。他のクエストはどんなのがあるんだろうか?」

俺はクエストを次々に手に取り討伐系のクエストをまとめて1枚ずつ確認した。

すると、恐ろしい事にドドルベルン帝國が絡んでいるであろう、暗黒騎士の件は氷山の一角でしか無かったことを気付かされる事となった。

読んでいただきありがとうございました!

次回の更新は2/12日を予定しております!

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