《Lv.1なのにLv.MAXよりステ値が高いのはなんでですか? 〜転移特典のスキルがどれも神引き過ぎた件〜》まさかのあなたが付き人ですか?
「おやおや、ハヤミくんおはようございます」
「これはこれは、エイジ殿。ただいま、こちらの校長殿と勇者の皆様の戦闘訓練を行おうという話をしていたところなのです。エイジ殿も戦闘訓練、どうですか?」
騎士団長と校長(ハゲ)が同時にこちらに振り向き、にこやかに話をかけてくる。それこそ一杯付き合わんかねというじのノリで。やらねぇよ、んなのめんどくさいもん。
騎士団長が言ってくれたこの提案はおそらく俺に対しての気遣いであるためにとてもありがたいと思ったが、今の自分だと軽く人にれただけでもぶっ飛ばしそうな気がするので斷っておく。
「……すみません、今は加減が効かなさそうで……」
「ハッハッハッ! エイジ殿、Lv1同士のあいだは大して力の差はありませんよ!」
本當にそうだといいんだけどなぁ……1回彼にステータスを見せてみるか。
「ちょっとステータス見てもらってもいいですか?」
「いや、Lv1では大して見る所もないかと……」
「そこをなんとか。では、ステータスオープン」
騎士団長のそんな所見は今関係ないんです。今の俺がどれだけおかしいかだけ確認できればいいんです。
「ちょ、ちょっと、今確認すべきではないですし今後の方針を固めたいので作戦會議を……え!?」
「ん、どうしたんですか? 団長殿」
俺のステータスを見て急にんだ騎士団長を心配したのか、校長(ハゲ)がゆっくりと俺のステータスを見に近づいてきた。
「……ほほう、ハヤミくん。あなた頭良かったんですねぇ…」
目を細めて嬉しそうに笑う校長(ハゲ)。酷くないですか? 良かったんですね、って。まぁ、クラスでは中の上程度であって決してよかったとはいえないが。
「こ、このステータス、もう私より高いではないですか……」
「あ、そうなんですか」
すごく悲しそうに俺のステータスと自分のステータスを見比べる騎士団長さん。こっちの世界の人は元からステータスを使えるのか。しかしし悪いことをしたかもしれないな、騎士団長の威厳を奪……
「……もしかして……これなら……」
え? 騎士団長がなんかブツブツと呟き始めたんだけど、やっぱり俺、ステータスを見せない方が良かったかもしれない。どちらにしても悪い方向に進みそうだ……極運は悪運はっきりわかんだね。
そう思った矢先、俺のその考えを決定づけるかのように、騎士団長が機の上にある地図にペンを走らせ始めた。
時折こっちを見ては、ニヤッと笑って再び地図に向かってペンを走らせていく。もう何考えてるんですか、マジで怖いんですけど。
數の暴力戦略で魔王を倒す為に、俺を盾にする危ない作戦とか考えてそうだよね。とってもめんどくさい。
そんな景の中でずっと黙ってたっているのもいたたまれないので、その場で口の警備をしていた騎士に八人の魔王たちの居場所や詳しい能力などを聞いてみた。
……聞くだけ無駄だった。1人も倒せていないのでしっかりと報を持っているのは1人目の魔王までなのだという。
そして、その1人目の魔王はなんと元勇者らしい……
『大魔剣士バルトラ・アッシャー』と名乗る彼は、バルトラ・アッシャーという魔王にを乗っ取られてしまった、前回の転移でこの世界にやってきた勇者の一人だったらしい。
勇者と魔王の両人の力を持つその力は絶大で、その勇者の能力『超速剣撃』『魔力超回復』のふたつの能力と魔王の圧倒的な魔法の腕でこの王國の西側を実効支配しているという。
王國は四方を魔王に囲まれて支配されているため、実質國として機能しているのは王都だけなのだそうだ。
バルトラ・アッシャーは、西のダンジョン『慣れ果ての魔城』の最上層に居座っていて、そこには最弱でもLv50以上のモンスターたちが蔓延っていとのこと。
ほかの魔王のダンジョンではLvMAXの勇者達が帰還しないところもあったらしい。ていうか1個ずつ確実に倒してけよ、方々に戦力割いてるから負けるんじゃないの?
うんまぁ、帰ってきてないから報が無い、程理にかなってる。そこだけな。
本當に魔王は八・人・なのか? 魔王並みに強大な敵がほかにもいる可能は?
LvMAXの人たちを簡単にひねれるような奴らがダンジョンに住み込んでいると仮定した時、その中でも確実に強い個が他にも現れるはずだ。
現狀、報の公開量がなすぎる。
なにか方法はなかったのか、神が調べあげられなかったのか。
……あれは無能だから頼らない方が吉か。
他に方法があったならそれでいくらでも敵陣の報は得られるだろうし除外。
神が調べあげたのならなんで神が全ての報を公開していないのか、という疑問が生まれるからあいつは何も調べてないし知らない。それでいい。
よって神は萬能では無いのだろう。無能だから仕方ないね。幸い、この世界には他にも神が2人もいるようだからそう考えればある程度の整理はつく。妨害でもされてるか、ほんとに無能かの二択だろう。
珍しく真面目に考え込んでみたけれど、やはりこの世界は々どこかがおかしい。地球基準に考えてるからかもしれないけど。
俺の最終目標と合わせてこの考えを組みれると、ほんの數週間數ヶ月でこの世界の悪神を復活させようとする勢力を滅ぼすのは不可能だ。
……なんてめんどくさい仕事を押し付けてくれたんだ、あの神。
今度會ったら文句のひとつでも言ってやろう。
……いや、やっぱりひとつじゃ足りないわ。
◇◇◇
騎士団長が何かを書き終わった頃には、俺がこの部屋に來てから三時間たっていた。
……おいおい、何を熱心にあんなに地図に書き込んでいたんですかねぇ?
「さぁ、エイジ殿! これが私の立てた今後の作戦です! えー、貴方に主に関係があるのは前半ですね。エイジ殿には、我々では行くことの出來ない魔王領の陣地偵察に行ってもらいます」
はい、きました。もはや作戦會議でもなんでもないやーつー。
最後に言い切ってるってことはこれは強制のやーつー。
今の俺たち勇者は、言ってしまえば『勝手に呼び出されて勝手に戦わされて、その上勝手に養われてる存在』だ。
戦うための戦力として考えられている俺たちは、王國の命に反すこと、指揮に反抗すること、などの王國にとって不利益になることを行えば、援助などすぐに打ち切られて殺される立場だろう。食料切られたらどんなに強いやつでも飢えて死ぬ。結局金のあるやつが勝つのだ。
いくら強いチートの力があろうと、數と金の暴力にはちょっとやそっとじゃ敵わない。
……なんてひどいシステムだよ、転移システム。
まぁ、王國サイドに『その能力で魔王を全員ぶち殺してこい!』だなんて言われないだけマシか。
この世界にいる間は、王國の援助をけ続ける必要がある。
それならば仕方ない。この依頼はけるしかないか……お仕事したくないお、働きたくないお……
「……わかりました」
「ありがとうございます! では早速、全域を回るのに過去は8ヶ月かかっていたと聞きますが、道路の破壊や魔族、魔の襲撃などがあるかも分かりません。最低一年の旅と考えて、マジックバックに3年間の食料品や生活品をれて馬車に積んでおきますので、是非明日から職務に勵んでいただきます」
うわぉ、し下手に出たらなんて強引な。しかも最低一年の旅て、舐めとるんですかあなた。
しかしこれも嫁たちの元に帰るための試練なのなら仕方ない……甘んじてけれようじゃないか。
喜べ王國。しばらくは俺がお前らのお犬さん役を買って出てやるよ。その代わり追加報酬は用意しておけよな!
「で、俺、馬車の運転とか出來ないんですが、誰かつけてくれませんかね?」
マジで荷馬車に置いといて、馬車運転出來なくて転覆して食料失って死とかになったら話にならない。
「それは先程、私の部下に呼ばせに行きました」
おいいつの間に呼ばせに行ったんだよ、手際良すぎかよ、俺気づかなかったよ。
「さぁ、おりなさい、コウジ殿、カスカ殿」
騎士団長の聲に応じて2人の人が部屋の中にってくる。
……え?
おいちょっと待て、こいつ見覚えが……
あ、今朝の。ヤンキーのにーちゃんじゃないですか。えーやだ。
「キャンセルで」
「おい! この俺様が一緒に行ってやると言っているんだ、喜べ愚民ゴミ!」
うるさいよ、LvMAX雑魚。キーキー騒ぐな。
「うるさいよ、三谷チン。言っとくけど僕達はあの子の部下扱いなんだからね?」
ヤンキーの隣に立つ長の男が、すかさず彼を諌める。
「皆さん仲はよろしい様子なので大丈夫そうですな」
「どこが!?」
思わず突っ込んでしまった。騎士団長さんよぉ、俺今朝こいつにいきなり攻撃仕掛けられたんだけど。しかも殺す気で攻撃されたんだけど。
「とにかく決定事項は決定事項なので、よろしくお願いします。明日の朝八刻には出立していただきます。では私はこれにて」
俺はしばらく、逃げるように去っていく騎士団長。
その後について行く兵隊たち、そして先程の2人の背を見つめていた。
しして、この部屋に人の影が見當たらなくなったので、俺は思い切りんだ。
「異世界召喚なんて、クソ喰らえだァァァァァ!
このクソハゲ野郎どもぉおぉお!」
持つ知能レベルが下がるんじゃないかというほどにしょうもない発言をしてしまったが、そんなことはどうでもいい。
しだけスッキリしたので、とりあえずこの部屋を出ようとすると、ふと肩を誰かに摑まれた。
「……そのクソハゲって言うのの中には僕は含まれていないよね?」
こちらの顔を見るその笑みにかなりの圧がこもっているのを見て、俺は思った。
あ、校長(ハゲ)まだいたんだ……りすぎてて逆に気づかなかった……
この後、めちゃくちゃ本気で謝罪をした。
結局2時間くらい無意味なお説教が続いた。
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