《Lv.1なのにLv.MAXよりステ値が高いのはなんでですか? 〜転移特典のスキルがどれも神引き過ぎた件〜》やっと著いたんですか?
黒い雲に上を覆われている崖の上にそびえ立つ城。その姿はさながら某魔法學園の映畫の舞臺のようで、異様な雰囲気と圧倒的な異世界を漂わせる。
うん、これぞ異世界。素晴らしきかな、いっつびゅーてぃふぉーわーるど。目に映るのが日本人ばかりだからそういう覚がね、あまりないんだよ。
あ、シルティスは例外ね。あれはまたなんか違う意味で異世界きたってじしないから。なんか深くは言えないけど、懐かしすぎるっていうか、なんか部屋の小? 部屋に置いてあったちみきゃらフィギュアみたいなじ。
え? ちみきゃらフィギュアは嫁じゃないのかって? おいおい、等が違うやつはもう別人なんだよ。ちみきゃらフィギュアは立ち位置でいわばペット。そう、玩なのさ。
おい誰だ、今迷言って言ったやつ。そこに座りな、叩き切ってやるから。二度とそんな口きけないように、を切り潰してやる。
……玩って意味よくわかってなくても使ってみたくなるよね。響きがエロい。
「……バルトラ」
ヤン兄が右手の拳を強く握り、忌々しげに魔王の名前を言う。突然気シリアスされてもなぁ。
それにしても、最初こそ頭がおかしい野郎だと思ったものの、今ではだいぶ彼のそのおかしさにも慣れてしまった。
「あ、やば、魔力切るの忘れてた」
「なんだ? 魔力切るって」
シルティスが慌てたように自分の周囲にまとっていた魔力を、可視狀態から不可視狀態に変えた。
「魔力ちゃんと切っとかないと、魔王同士だと気配が強烈だからバレちゃうの」
「元魔王でも魔王並みの魔力は健在ってか」
「というか魔王時代より多くなってるけど……どこぞの誰かのおかげで生死の境をさまよったからかしらね」
「へーぇ、そんなことがあったのかァ」
グチグチ言われるのは面倒なので軽く聞き流すことにする。もとよりこいつに生死の境を迷わせることが出來るやつは現狀俺しかいないので、このように遠まわしな嫌がらせをされると地味に傷つく。
あれ、ていうかそれ魔力の量でバレるってことは俺もうアウトじゃ……
「まぁいいわ。早くあのクズぶっ飛ばしに行きましょ」
「ああ」
考えさせてくれないそうなので進むことにします。
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ヤン兄とコウジに聞いていたとおり、城の中は見た目よりも広くなく、ところどころ修繕のあとが見えた。
多分この修繕のあとは前回の戦いの時の名殘なのだろう。その証拠にヤン兄たちが壊して通ったという壁が、周りとは違う紋様が刻まれている石で塞がれていた。
「うげぇ、相変わらず手の込んだことするわねぇ。こんな意地汚い魔法を組むなんて」
「シルティス、これはなんの魔法なんだ?」
壁をジト目で睨むシルティスに、壁になんの魔法がかかっているのかを聞いてみる。
「これはマナドレインの式ね。るとごっそり魔力が持っていかれるわ」
「……あぁ、たしかに嫌だな。要するにると好度が下がる選択肢か」
「ごめんご主人、その例えはよくわからない……」
流石に異世界人であるシルティスには通じなかったが、現代日本で生きていた彼らなら分かることだろう。そう思って後ろを振り返るのだが、ヤン兄は俺の話を全く理解しておらず、コウジに至っては城にいたコウモリと會話中だった。まじダメだろこのパーティ編、初手一撃に頼りきってる気が……
「それにしてもこんな魔法を仕掛けてるってことは、そういった魔法でどんどん勇者軍が衰弱させられていったからいつもなかなか勝てなかった、とかそんなじってことか」
引っかからなければ本來の実力を使って勝てていたかもしれない。
魔王のルートはなかなか攻略が難しいようだ。一回限りコンテニューなしの選択肢とルート分岐は全て不可視。鬼畜ゲーにも程がある。
「面倒だしなぁ、ちょっと呼び出してみるか」
そういうと、俺はスキルをひとつ発させる。
「『引力』対象、場の敵対生」
スキル『引力』は、指定したものだけを自分の元に集めることができるという優れものなスキルだ。
「これでバルトラも引っかかってくれるといいんだけど」
引力の引きつける力はステータスに比例する。ステータスが高ければ高いほど、高いステータスのものでも引き寄せることが出來る。
バルトラの力が俺よりも本當に弱いのならば、このスキルに引っかかって自分から俺のところによってくるはずだ。
うじゃうじゃと湧き続けるモンスター達を件でなぎ払いながらバルトラが來るのを待つ。
「はぁ、おいシルティス。なかなかあいつ出てこないな」
「そうね、思いっきり引っかかると思ったんだけど」
「まぁ、このままバルトラ以外の魔族共を片付けてから行くか」
「ねぇ、三谷ちん、これ僕達いなくても終わるやつじゃ……」
「……コウジ、それを言ったら負けだ。俺たちはバルトラに仇討ちをしなきゃいけないんだぞ? せめて最後までいなくてどうする」
仇討ちするのは俺なんですけどねぇ、と思いながらも、湧き続けるモンスター達を狩るほうに集中していたのであの二人に聲をかけることは無かった。
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「魔王様っ、魔王様っ!」
びながら必死にバルトラのをゆする者がいる。借りのであるが故に脆く、一度が死んでしまうと自分まで意識を失ってしまうのだから悲しいものだ。
『クシャナ、新しいを私に寄越せ。このはもう使えん』
先程から死をゆすり続ける自分の部下にを用意するように命令する。
「は、はっ! 魔王様の仰せの通りに!」
そういった手頃なを探しに行ったクシャナを見送り、バルトラは考える。
あの自分を引き付けて切り裂いたものは何者だ、と。
勇者にしては強すぎるし、魔族であるならあれだけの力のある魔族は一人しか知らない。その一人も今は自の力を高めるためと、仮死狀態で寢ているはずだ。さらにいえばから攻撃される理由がない。
がないせいでうまくまとまらない思考を必死にとどめながら、バルトラは現れた的に思いを馳せていた。
自分の足元に転がっているのが、実は死ではないなどとは知る由もなく。
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