《Lv.1なのにLv.MAXよりステ値が高いのはなんでですか? 〜転移特典のスキルがどれも神引き過ぎた件〜》リベンジマッチと行きませんか? 2
『人間風が、お母様に生み出された実子である私に葉うと思っているの?』
大きくこちらに突っ込んできたの化けを、軽く左方向にわして背後に回り込む。
『へぇ、人間の癖に面白いきをするわね』
「そりゃどうも」
イースベルの驚いたような軽口に答えながら腰に指した2本の剣を抜き、飛ぶ斬撃を放ってイースベルのを二つに割る。
「半は2人に任せた。俺はこっちの大きめのをやる」
「分かったわ」
「引きけた」
分かれた半は、多分どちらもく。それは前回の時にあのが自由に自のの至る所から手をばし、腹部を口のように大きく開いて俺たちのことを捕食していたことから予想した結果だ。
スライムは分裂してき続ける、みたいな話をシルティスとコウジから聞いたことがある。
シルティスとヤン兄の2人の聲に頷く程度に軽く首を振り、イースベルの分かれた半の大きい方に対峙する。
『あらら、人間の癖に見ただけで私の特を把握したのね?』
フフフと嬉しそうに鳴くイースベルを無視し、風魔法で兵士たちが殘していった焚き火の殘り火を巻き上げ、両手の剣にまとわりつかせる。
『……人間の癖に、よくもまぁ……』
急に口數がなくなり不機嫌になったイースベルを見て、こいつの弱點は火なのだと確信する。
風魔法で上手いこと火を増させていると、俺は新たな魔法を覚えたようだ。
『付與魔法:火屬を習得しました。
付與魔法:火屬の経験値がMAXのため、付與魔法:火炎屬に進化しました。
付與魔法:熱屬を習得しました』
脳で流れたその聲を頼りに、両手の紅と黃金の剣に火炎屬と熱屬を付與してみる。
風魔法の時と同じように、脳で使うと考えただけで使用してくれるのだからありがたい。今更だから、なぜ? などとも言ったりはしない。そういうもんだ。多分スキルのなかにあった無詠唱とかいうやつが関係してるんだろう。
『……邪魔な人間ね……さっさと消しましょうか』
「それはこっちのセリフだ」
赤々と熱気を放つ雙剣に溫めれた空気が、剣の纏う焔によってさらに溫められて、先程からしずつ降り始めた雪を溶かし始める。
軽く降ると、火の軌道を殘す刃に雪が落ちるたびにシュウシュウと音を立てる。
「さぁイースベル。実はお前に対した恨みとかないんだけど、1度だけ殺されたことは腹立ってるんだよね。だから」
そう言って間合いを一気に詰め、人型を保っているそれの手にあたる部分をジュウジュウと溶かして気化させていく。
『!?』
実際今は生きているので腹立つと言うほどのことも特にないといえばないのかもしれないが、口実がしいので腹が立っていることにしておこう。
基本俺みたいな緒不安定な野郎が作る口実なんて適當なものだということををもってしてもらういい機會だ。
「消えてなくなってもらう」
痛がっているのか、悶絶してブルブルと痙攣し出すイースベルを、俺は徐々に剣の刃で溶かしていく。
『アアア、ヤダ、わタシが、ニンげンごトキニィィィィ!!』
「おっと、逃げようとするなよ?」
逃げようとするイースベルを、を溶かしていた紅羽ではなく、手持ち無沙汰にしていた黃羽で逃げようとした方向の先頭となっていたを溶かしていく。
しかし、なんでこんな簡単に倒せる敵に今まで苦戦をしていたのだろうか?
正直いって、時間以外の何かがあるとは思えないけれどもあとでシルティスに聞いてみよう。
 
今は目の前の2代目ナメクジさんを溶かすことが最優先。2代目というのもどうかと思うかもしれないが、俺から見ればどちらもナメクジなので相違はない。
……あれ? よく考えたらこの世界、強キャラナメクジさんちょっと多くないですか?
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シルティスの予想通り、今までの展開をすべて忘れていたエイジはすぐに火の付與魔法を覚えられたようだ。
「良かったわ、なんとか倒せそうで」
「……そんなこと言ってるけどお前庇って俺は満創痍じャァあねェか。俺ァまだ死にたくねェぞ?」
イースベルの半の放った強大な氷魔法を、カスカが『魔力喰らい』のスキルを使ってシルティスを庇ったことにより、シルティスは無傷、カスカは重傷という、バディスタイルの戦いにおいては致命的な狀況になっている。
「大丈夫よ、奴もじきにコアの中に殘った魔力を使い切る。あとはご主人が焼き切るだけ」
『どいつもこいつも、こんな風に雑魚は口ばっかりが達者で大して強くはないのよね。だから私の攻撃に耐えられたそこの羊さんは特別に褒めてあげる』
「死にかけのスライムに褒められても嬉しい気はしねぇなぁ」
煽るようにイースベルに褒められたことを自で批判すると、カスカはそのまま大きく飛び上がり、角と角の間に青の炎を貯め始めた。
「殘念ながら、今の俺は後にいる兵士さんたちのおかげで理が保ててるんでね」
イースベルの半と同じ大きさほどに膨らんだ青い炎を、自の手の上に運んでボールのようにぽんぽんと叩く。
スキル魔力喰らいの本來の能力、他者の信頼度が高ければ高いほど、魔力の吸収率を上げるという力。
その力と、魔力喰らいのデフォルト、おそらくゾロアスター教のアンリマユがモデルになっているであろう悪魔のような力。それでいて、その炎は正しき者の魂を焼切ることなく、煌々と彼の中で燃え続けている。
半端な信頼と不安を一に背負った今のカスカは、その両方の力を使えるということらしい。
蒼炎がにまとわりついて傷を癒していき、次なる攻撃の一手のための炎が新たに手のひらの上に湧く。
「じゃ、久々にまともな戦いになって面白かったぜ?」
そう呟くと、カスカは手に持った青い炎をイースベルの半に投げつける。
『そんな遅い攻撃が當たるわけないじゃないの、學習しない生きねぇ!』
氷のたまを何度も何度も打ち込み、火の勢いを抑えつつ後退しようとするイースベルの半。しかし、火の勢いは弱まるどころか強くなっていき、攻撃を當てる事に近づく速度が早くなっていく。
大きく膨れ上がった蒼炎は、もはやベースキャンプを包み込むほどの大きさだった。
「『至高神と大魔王の戦火ゾロアスター』」
カスカが放った蒼炎はイースベルの半だけを包み込むと、そのまま半とともに消滅をしてしまった。
「やっぱり罪にまみれてんじゃねえか」
罪を焼く斷罪の炎は、何事も無かったかのように彼の右手の上で煌々と燃え続けていた。
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