《Lv.1なのにLv.MAXよりステ値が高いのはなんでですか? 〜転移特典のスキルがどれも神引き過ぎた件〜》つかの間の休息のようですが?

目が覚めると、何故かテントの口にはつららが出來ていた。

「どうやったらこんなもんできるんだよ、一晩で」

「ここはいつもこんなものですよ」

同じテントで寢ていた若い、恐らく10代くらいであろう整った顔立ちの兵士がそう答える。

「我々としてはあのバルトラの荒野に行った格好そのままでこちらにいらっしゃるという三方に、し異常じるところです」

「こっちに來てから初めてまともな人を見た気がするよ……殘念ながら服のことまで考えられてなかったみたいで、追加の荷になかったんだ……」

初めて話す同年代と同じような対応でさりげなく返すと、

「まぁ、ここにいらっしゃる老兵の皆様は々頭がぶっ飛んでいらっしゃるところがありますからね、自分たちのものと勘違いして著ているかもしれませんね」

と言って、寢所においてあった刀を引き抜いてつららを降り始めた。

「すみませんが、お暇なら手伝っていただけませんか? 朝のこの作業は々手間でして」

「ああ、分かった」

枕元に束ねておいてあった紅羽と黃羽を構え、軽く振り落とす。

「……よくそんな重たいもの振って、こんない氷全部折れますね……」

「……まぁ、一応勇者だからね」

「一応勇者とかいうレベルじゃないですよね、それ」

「ほかの勇者のレベルをよくわかってないからねぇ」

「……はぁ」

呆れたようにこちらを見て、ため息をつく彼。

「度を越した強さは人を間違いに導きます。ゆめゆめ自信がただの人間であることを忘れぬようにと僭越ながら言わせていただきます」

「結構辛辣だな……」

いやまあいいんだけど、初めて話すようなやつにそんな事言われてもね。

だってこのテントで寢てねって言われた時には既に君寢てたから昨晩話すとかできなかったし。

「そういう風になった人間を1度見ているので、あなたにそうなってしくないだけです」

「……とりあえず君からの素直な心配の言葉としてけ取っておくよ」

「君じゃなく、ミツアキとフランクに及びください」

「ミツアキ?」

「ええ、転生者です。あちらでの名前、と言っておきます」

そう言い殘すとその場を去っていったミツアキを目で追いつつ、この世界には転生者って奴らもいるんだな、とこの世界に來て久々に得る新しい豆知識のようなものに心していた。

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「いいのか? あんなふうに冷たく當たっても」

「雪花せっか、その狀態で話すなって……」

年が腰に下げた刀。西洋甲冑には明らかに似合わない和柄の刀がそこにはあった。

「じゃが、明がここでは人化しちゃいけんって言うから……」

「ここで変なふうに見られたら俺が職を失うんだよ……」

「むぅ、ちょっとくらい構ってくれてもいいじゃろ!」

「あぁ、はいはい。今度の休暇の時にな」

「そのセリフ40回目じゃ! 何回言質取らせれば気が済むのじゃ!?」

そこにあったのは、かつて異なる世界星で世界を救ったもののれの果てと、その刀であったの姿だった。

「もうっ、この世界には神様も爲も、ホノカもフィナもいないのじゃぞ!? 明とわしの2人で來ておるのに現地で仲間を作ることすらもする気は無いのか?」

「あの世界は爲さんが何とかしてくれた。俺が人柱になってすべて終わったんだよ。他のみんなまで巻き込むわけには行かない」

「じゃが、ネオンワールドは……」

「あぁ、ここから1番近い。だからこそあいつらの復活はここで食い止めなくちゃあ行けないだろ? そのためにもエスメラルダの暴走は止めなきゃいけない」

「……」

深刻そうに會話を続ける年と刀。しかし、そんな年の異様な景を誰も気に止めることはなく、ただただベースキャンプのいつもの1日がすぎていくのだった。

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『ねえー、みんなー』

『ん、なぁに?♡』

『あの人間だよねー、多分ー』

『ん? ああ、1號を殺したやつのことか』

『そうー』

『人間のくせに強そうねぇ♡』

『どうだ、『魔力知』にはなにか引っかかったか?』

『一人の人間の魔力がね、私たちのところよりも遠くまで屆いてるわ♡』

『……ほう?』

『これは久しぶりに食べがいがある子が來たかも♡』

『一人でやるのはさー、危険じゃないー?』

『……んなもん、みんなまとめてぶっ潰せばいいだけだ』

ベースキャンプが麓にある山の頂上で、イースベルたちがエイジについての會話をわす。

その會話は、北の魔王軍と遠征隊の戦いの火種となるものだった。魔族なのに人間の魔力が知できるのは、魔王に作り出された存在だからこそその能力を付與されたと言わざるを得ない。

人間を倒すためだけに作られた殺戮兵。魔王自らが赴かなくともいいようにと白の周囲に配置された五の守護獣。

『バルトラが王紋を失くしたからな、流石に同時期に2つの王紋の喪失はまずいだろう』

『いやあねぇ、いくらなんでもそんなことは無いわよ♡』

『そうそうー、いくら強くてもあの人は倒せないよー、かーいさ満點だもの』

『……』

自分を生み出した母のことを完全に信じきっているイースベルたち。

8人の魔王の中でも序列は7位ながら、その類まれなる知力と貌で多くの勇者を屠ってきた稀代の魔

そんな母が倒される可能を考慮することが出來たのは、5號のみ。

後に彼ら全員の考えが大きく外れることは、この時はまだ誰も知る由もない。

『うふふ、味しく食べてあげる♡』

嬉しそうにをプルプル震わすその姿は、まるで風前の燈火のように、自らの終わりをそので表しているかのようだった。

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